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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

経口電解質

2007-12-29 | 馬内科学

Pc260064経口電解質を つくっているところ。

脱水があっても、消化管が使える状態なら水を飲ませれば済むことなのだが、脱水がひどいときは電解質も補給してやる必要がある。

また、浸透圧が体液に近い方が吸収が良いことがわかっている。

今は、子牛用のものなども売られていて使いやすいし、カルシウムやアミノ酸なども入って工夫されているようだ。

しかし、大量に使うときには調合した方がずっと安く済む。

組成もカリを増やすとか、重炭酸を増やすとか、アレンジすることができる。

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左は、長年使っている基本の調合割合。

正確に量る必要はない。

これで等張(体液の浸透圧と同じ)なようだが、低張の方が吸収が良いことが知られているので薄めにつくるようにしている。

たいていの馬は水バケツに入れてやると嫌わずに飲む。まれに、嫌がって飲まない馬もいるので、少量で試してからやるようにしている。

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 お産が終わった母馬には味噌汁を飲ませる牧場もあるようだ。

普段は飲まなくても、お産の後は飲むそうだ。

味噌汁も経口電解質のようなものだろう。アミノ酸も入っているので良いかもしれない。

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 年末まで忙しい。

きのうやっと最低限の大掃除をしたと思ったら、今日はまた開腹手術。

Call it a year. (これで1年もお終いにしようじゃないか)

                                


地上の楽園

2007-12-25 | How to 馬医者修行

ブログを紹介します。

http://umanose.blog85.fc2.com/

ブログ。というより小説でしょうか?あるいはノンフィクションでしょうか?

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 あとがきは「馬ってヘン」ということになっている。

しかし、馬に関わる人の方がもっとヘンなのかもしれない。

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 主人公「私」と作者さとうきなこさんは別人ということになっている。

しかし、私はきっと作者も田んぼに落ちた経験をお持ちなのだと信じている。

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 「乗馬に癒しを求める人は読まない方がいいかもしれません。どうもすみません。」

というおことわりで始まっているが、私は充分癒される。

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 乗馬クラブに勤めた獣医さんの獣医修行として読んで見ても面白い。

喉嚢炎やナルコレプシーnarcolepsyなど、興味深い病気に獣医師がどう遭遇するかというのも面白い。

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 今日は忙しかった。こなしきれずよそへ回ってもらったり、予定をかえてもらったり・・・・・

大掃除もしなければいけないし、年内にできない予定は来年回しデス。

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Rogue basters やんちゃ坊主しつけ人

2007-12-24 | 日常

 馴致、調教というと、まっとうな馬に、まっとうなことを教えるという感じがするが・・・・・・

Rogue Baster!  悪癖?馬鹿馬?しつけ人? これぴったり来る感じ。

http://www.youtube.com/watch?v=M6NUnAoRNLc

http://www.youtube.com/watch?v=VKkl8jbe0Ks&feature=related

Hybrid horsemanship のシリーズ?も面白いかも。例えばこれは全6編の第2編。

http://www.youtube.com/watch?v=Ti7CL9f1UFQ

 セリにむけてX線検査をしたり、枠場に入れて内視鏡検査をしなければいけなくなっている。

Rogue (ロウグ;やんちゃ坊主の意味もある)に負けず、

しっかりしつけてくれ!!

                 

ネタ元はQHライダーさんのブログ。

http://wind.ap.teacup.com/applet/ranchblog/archive?b=15

私はあまりなじみがなかったのだが、面白いのを見つけられれば You tube って楽しめるかも。

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この週末は御町内の牧場がGⅠ制覇!

おめでとう~ございます~!

Pc240056


中山大障害

2007-12-23 | 日常

 中山大障害をTVで見た。あらためてみるとスゴイ!

馬の持つ潜在能力、それを引き出す調教、そして人と馬の勇気。

落馬はあったものの、見事に跳んでいくので、緊張感や危険を感じないのかもしれないが・・・・・・・

 馬に乗る。全力で走らせる。跳躍させる。それは、簡単なことではないし、危険をともなうたいへんなことだ。

そして、それは馬にとっても同じ。Horse_falls

 http://www.youtube.com/watch?v=uK2SB8xjxb8

 落馬シーンばかりを集めている。悪趣味なのかもしれないけど、障害飛越のたいへんさ、危険さが伝わってくる。

今、馬に乗っている人は見ないほうが良いかもしれません。

考えてみれば、オリンピックに採用されているような競技で、人が死ね危険が一番高いのは馬術の障害飛越かもしれない。

あとは命に危険があるのはカヌーの激流かトライアスロンのスイムで溺れるくらいのものか?

あれっ? どういうわけか私のやってきたものばかり・・・・・・・

Horsefalls


蟻洞?

2007-12-21 | 蹄病学

蟻洞とは蹄壁の中層と内層が剥がれて空隙ができているのをいう。らしい。

蟻洞は英語ではseedy toe 。

このへんでは砂のぼり。と呼ばれることが多いが、蟻洞の方が正式病名。のようだ。

感染を伴うことが多い。

が、抗生物質をうったりしないで、化膿させて自潰させた方が早く治る。と言う人が多い。

白線裂とは、蹄底と蹄壁が剥がれた状態をいう。らしい。

白線裂から蟻洞になることもある。ようだ。

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12左写真の馬は繁殖雌馬なのだが、跛行して前肢の外よりの蹄冠から自潰した。

その後、楽になったが、また悪化してまた蹄冠から自潰した。

また楽になったが、やはりこのままでは完治しそうにない。となった。

X線撮影で蹄に空隙、たぶん膿と壊死組織が入っている、があるのが見えるし、背-掌方向の撮影では蹄骨に欠損した部分、たぶん感染で融けてしまった、部分もあった。

よくある蟻洞や白線裂をどう治療・管理するのが良いか、私にはわからない。11

ただ、蹄骨に感染が及んでいる状態を放置するのは危険だと思っている。

今まで、感染が蹄関節に波及したり、蹄底に感染が広がって、駄目になった馬や、治療に長期間を要した馬を見てきた。

この馬も蹄底にも空隙が広がり始めている(右)。

蹄骨と蹄壁の距離も正常範囲より開いてしまっている。

蹄の中の感染は、蹄に覆われているために発赤も腫脹も外から見えないが、その分蹄骨や蹄関節や舟刀嚢へと炎症が波及すると始末に悪いと思っている。

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Pc070075 Pc070077 妊娠馬だし、できれば全身麻酔したくない。

鎮静剤・鎮痛剤を投与して、蹄への神経をブロックして、蹄底から感染創へドリルで穴を開けて、洗浄した。

幸い、担当医は蹄を得意とするA先生。

鎮静剤・鎮痛剤・抗生物質など投薬が必要だったり、

X線撮影が必要だったり、

血が出るところや痛くなるところまで削ることが必要な症例では、

装蹄師さんまかせにしないで獣医師が手をださないといけないと思っている。

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Photo 23日有馬day 中山5Rに、タイガーマスクが出走する。

岩手で2連勝して、中央復帰!

がんばれタイガーマスク!

子供達にクリスマスプレゼントを!