ホルスタイン13ヶ月齢の初妊娠牛が右前肢負重困難となり、X線撮影したら尺骨の骨折が見つかった。
しかし、初回のX線画像ではまさに亀裂骨折で、温存して経過観察し、2回目のX線撮影を予定した。
1週間後、牛は蹄尖で負重するようになった。
しかし、2回目のX線撮影で骨折線は5mm~1cmほど開いていた。
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手術することにして連れて来てもらう。
他の牛と一緒にいるそうで、追われたりはあるらしい。転んだのだろう、と飼い主さん。
牛の尺骨頭部の骨折はとても珍しい。
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Bovine Orthopedics, An Issue of Veterinary Clinics of North America: Food Animal Practice, 1e (The Clinics: Veterinary Medicine) |
David E. Anderson DVM MS DACVS | |
Elsevier |
Bovine Orthopedics, The Clinics of North America にも、牛の尺骨頭骨折についての詳しい情報はなかった。
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Farm Animal Surgery, 2e |
Susan L. Fubini DVM,Norm Ducharme DVM | |
Saunders |
Farm Animal Surgery には、牛の尺骨頭骨折についての記載があった。
とても薄い骨だと強調してある。
そして、500kgの尺骨頭横骨折をナローDCPで固定したらプレートが折れた症例が紹介されている・・・・
手術をやりなおし、なんと今度はナローDCPを2枚重ねで固定している。
牛は、馬とちがって尺骨は腕節まで続いていて体重を支えている。
ひょっとすると馬より厚いんじゃないか?ブロードDCPも使えるかも?などと考えながら準備したのだった。
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成牛を3時間近く仰臥にしておけるか?
妊娠牛にキシラジンを投与して大丈夫か?
麻酔管理上も課題はあった。
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もう発症から8日経っていて、骨折部の血腫は結合織に変わっていた。
骨折部を触っても骨折の形状を把握できない。
ナローDCP9孔を使いたかったのだが、あいにく在庫がない。
ブロードを尺骨に乗せるのは無理そうだった。
ナローDCPもうまく乗せられず、途中でやり直したくらいだ。
それでも、コンプレッションホールを利用して整復し、骨折線をまたぐスクリューも2本入れた。
プレートが折れないようにするために働いてくれるだろう。
遠位部のスクリューは橈骨に固定しなかった。
馬なら、もう橈骨へ固定しても問題がない月齢だと思うが、牛はどうかわからない。
プレートとスクリューはできれば抜きたくないので、成長に伴って橈骨と尺骨の成長がずれて肘関節にギャップができるのを懸念したのだ。
牛の尺骨も馬より厚かったりしない。
牛の尺骨はけっこう硬い。
が印象かな。
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麻酔は、妊娠末期でなければキシラジンも問題ない、ということでキシラジンも使った。
手術台に乗せても体動があったので、結局イソフルレンを吸入した。
第一胃が膨満してくるのを抑えるためにストマックチューブを入れておいた。
手術後、イソフルレンが抜けてからα2作動薬拮抗剤を投与し、しばらくしたら立って帰っていった。
歩き様は骨折後一番良いそうだ。
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1月末の日曜日。
午前中、3歳競走馬の種子骨底の骨折の関節鏡手術。
午後、1歳馬の後膝の細菌性関節炎の関節洗浄。
それから、牛の尺骨骨折で・・・
さらに、そのあと、1歳馬の回盲部重積の開腹手術だった。
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当歳9月から1歳馬秋までは、葉状条虫の駆虫をしっかりしましょう!
3ヶ月ほど駆虫間隔が空くなら、毎回プラジクワンテルが入っている駆虫薬を使うのが良いです。
当歳秋から数回は葉状条虫を駆虫してやらないと、回盲部重積、盲腸結腸重積などを起こします。
今シーズン、葉状条虫によると思われる重積症が多発しています。
雨が多かった去年の天候と関係しているのだろうと思います。
繁殖雌馬も同じです。
繁殖雌馬は分娩前後に葉状条虫が影響していると思われる盲腸破裂を起こします。
葉状条虫の駆虫が必要です。