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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

診療カルテ・手術記録

2009-07-30 | 人医療と馬医療

面白いブログを見つけて、愛読していた。

わけあって、人に教えたくなくて紹介したくなかったのだが・・・

あまりに興味深い記事があり、心惹かれる文章があり、感心させられるので・・・

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今、家畜共済のカルテがまた変更されようとしている。

家畜共済の診療カルテは10年ほど前に電算化され、技術点数や薬価を記入して計算するのではなく、コードで記入するようになった。

結果、計算の手間がなくなった。しかし、記入時に料金を気にしたり、算出された料金を確認する機会が減るか無くなってしまった。

その電算化されたカルテにもすっかり慣れたと思ったら、今度は電子ペンで入力し、紙のカルテそのものが無くなるらしい。しかし、紙に書く以上に面倒でミスが起こりがち(笑)。

そして、診療カルテのもっとも重要な役割は診療の記録ではないのか。

いかに診療内容をきちんと記録するという視点を中心に置かないものが「カルテ;診療記録」と呼べるのか?

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診療の記録とはこういうものではないか。

http://absinth.exblog.jp/4628972/

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病院から帰る暇もないほど忙しい心臓外科医の毎日。

しかし、ブログは正月以来更新されていない。

作者は御無事なのだろうか・・・・


端端吻合

2009-07-28 | 急性腹症

空腸から回腸にかけての纏絡。術前の全身状態も悪く、小腸のかなりの部分が壊死してしまっているので厳しいのだが、できるだけのことをすることにした。

空腸を13m20cm切除して、端端吻合した。

しかし、閉腹中、心停止し、死んでしまった。

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P7260800 かのDavid Freeman先生は最近の報告で、

端端吻合ではなく側側吻合を推奨しておられる。

しかし、私は端端吻合で問題ないと考えている。

左は端端吻合部。

その辺の教科書の写真の吻P7260811合部位より上出来

  粘膜面。わずかでも長く小腸を残したかったので、粘膜は健康ではない部分で吻合しているが、粘膜もきちんと合っている。

粘膜・粘膜下織・筋層を連続縫合している。

2層目は漿膜と筋層を浅く連続縫合している。

2層縫合だが、ほとんど狭窄はない。

P7260812もちろん漏れもない。

外から見ても糸目もほとんど見えない。

Gambee縫合すれば結紮と糸の端が外に出てしまう。

Gambeeで内側で結紮すれば癒合させたい層の中に結紮部が挟まってしまう。

血行も維持されていただろうことが色調からわかる。

しかし、全身状態が悪く、心臓が止まってしまってはどうしようもない・・・・・・

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P7130771 こちらは数m切除した症例。

術後も順調なようだ。


出張帰り

2009-07-27 | How to 馬医者修行
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以前は、急患が来るとなんでも呼ばれていた。

出張や休みのお出かけから帰ってきて診療室に灯りが点いていると泣きたくなったものだ。

今は、当番でない限り呼ばれることはなくなった。

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以前、出張からの帰り道、他の診療所の若い獣医さんが言った。

「今度、夜に急患があったら呼んでください。勉強になるから手伝います。」

診療所へ帰ってきたら、診療室に灯りが点いている。

「手伝っていくかい?」

「いいえ・・・・(とんでもない、という声で)」

逃れられない仕事の中で鍛えられること、キツイがそれが一番の方法かもしれない。

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中には仕事以上に頑張る人もいる。

そういう人が亡くなってしまった。

言葉もない・・・・・・

http://blog.goo.ne.jp/hihin_2007

役に立つ良いブログじゃないか・・・・・・


篩骨血腫による鼻道閉塞

2009-07-26 | その他外科

P7150770 左の前頭部、頬が腫れてしまった重種の3ヶ月齢の仔馬。

呼吸も苦しい。

左右の鼻道の通りが悪くなっている。

馬は口を開けて呼吸することができない動物なので、

鼻で息できなくなると、やがて痩せてくるし、生きていけない。

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P7220787 左の鼻道を内視鏡で診ると、腫瘤が鼻道を閉塞させている。

篩骨血腫 Ethmoid Hematoma だろう。

悪性腫瘍ではないが、馬の副鼻腔や篩骨迷路の中に腫瘤ができて、

鼻血を繰り返したり、鼻道を閉塞させたり、副鼻腔炎を起こす。

P7220789 最近は、ホルマリン注入療法をすることが多い。

内視鏡下でethmoid hematoma の中にホルマリンを注入する。

1-2週間間隔で繰り返すと徐々に小さくなり症状も消える。

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P7220788 この馬は右の鼻道も狭くなってしまっている。

左の副鼻腔が鼻中隔を圧排して、右の鼻道も狭窄させたのだ。

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x線撮影では副鼻腔内が拡張してしまっているように見える。Ethmoidhematoma11

その副鼻腔の中にethmoid hematoma と思われるマス(塊)が見える。

副鼻腔の吻側には水平線が見える。

左の鼻孔からは膿性の鼻汁も出ているので、おそらく鼻道との交通を失った副鼻腔の中に膿性鼻汁が溜まっているのだろう。

ホルマリン注入療法でEthmoidhematoma12ethmoid hematomaが小さくなっても、副鼻腔と鼻道をつなげてやり、 副鼻腔を鼻道へドレナージし、洗浄してやらないと、感染や変形が良くなってこないだろう。

遠方からの来院だったこともあり、畜主の希望も、ホルマリン治療を繰り返すより外科手術を選択したい。とのことだった。

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吸入麻酔下で右横臥にし、左前頭洞を骨開窓(Bone flap)した。

前頭洞と上顎洞の中には径5cmほどの塊があり、つかみ出した。

副鼻腔の壁もすっかり変形し、脆弱化しており、鉗子で容易につかみ出すことができた。

左鼻孔から膣鉗子を挿入し、鼻道内の塊をつかみ出した。

ストッキネットにガーゼを詰めたものを止血のためにパックし、端を鼻孔へ出しておいた。

額から前頭洞へ洗浄用のドレインを残し、開窓していた骨と傷を閉じた。

麻酔覚醒後には呼吸は術前より楽になっていた。

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P7260791 北海道はこの7月、平年の3倍の雨が降ったそうだ。

北海道に梅雨はないんじゃなかったのか?

約束が違うじゃないか!

7月の日照権を返せ!


going 強引 air way

2009-07-25 | 関節鏡手術

P1wingfx11_2 第一趾骨翼の剥離骨折。

OCDだという人もいるが、靭帯にひっぱられることが発症要因になっているので、私は骨折だと考えている。

剥離骨折というより、捻除骨折 avulsion fracture と呼ぶべきだろう。

剥がれてしまう要因としては、軟骨下化骨の障害があるのだろうから、骨軟骨症の要因があることも否定はしない。

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関節鏡手術で摘出する球節の掌・足底側の骨片としては最も遠位にあるので、視界にとらえにくく難しい。

おまけに、種子骨靭帯を切り分けて摘出しなければならない。

まず、空気で関節を膨らませた。絨毛はひらひらしないので見やすいが、それでも骨片そのものは見えない。

見えないまま針を刺して骨片を確認し、バナナナイフで靭帯を切り分ける。

灌流液に切り換えて充分関節包を膨らませるが、やはり骨片は見えない。

また空気に切り換えて、強引にロンジャーで骨片を掴み出す。残った骨片と靭帯もむしり取る。

この部位の骨片の関節鏡手術には気体で関節を膨らませる方がやりやすいと思う。

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なかなか smooth operator (円滑な術者、ホントは・・・)とは行かないようで・・・・・