馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

この1年の最後に

2006-12-31 | 日常

 1年を振り返れば、いろんなことがあった。

臨床家の1年は1症例1症例の積み重ねでできていて、それは毎年のことだ。

  診療技術もいくつか新しい方法を取り入れた。

格段の進歩。とはいかないが、来年も着実に進んで行きたい。

 家族は・・・・「子供は産んでおきさえすれば時間が育ててくれる」と言ってくれた人がいたが(学校の先生ご夫妻でした)、そうもいかないようだ。

一番逃れられない責任を負うべきことだ。

 個人的には、このブログを始めたことが大きかった。

楽しみでやっているとは言え、相当な時間を割いた。

他の方のブログを読むのも興味深い。

インターネットが普及して、e-mailは画期的だったが、手紙や電話の延長だった。HPはほとんどが広告のようだ。

ブログは・・・・これほどの数の日記やエッセイを出版物で読むことは難しいだろう。

とりあえず、まあやってみましょ。と始めたが、来年は目的、手法、成果を整理し・・・・・

まあ、それなりに続けましょ。

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私が愛読しているブログの一つ「うしおばさんの雑記帳」http://usioba.exblog.jp/

その中で紹介されていて知った。

「メッセージ」という広告が、

「新聞広告クリエーティブコンテスト」http://www.readme-press.com/koukoku/index.html でコピー賞を受賞している。

その広告に取り上げられた少女の演説に、私も「殴られた」。

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Pc250110 それでは、みなさん、良いお年を。

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海図をもたずに航海はできない

2006-12-30 | 図書室

今日も大掃除。

厩舎掃除の仕上げをして、図書室の整理をした。

もう価値がなくなったり、重なっている出版物をかなりの量捨てることにした。

毎年、数十万書籍や学術誌を買っているので、捨てられる物は捨てていかないと、狭い図書室が破綻するのは目に見えている。

Photo_186  開所以来30年(そういうと去年は開所30周年だったんだ!)Photo_187馬の臨床関係の学術雑誌や教科書を買ってきているので、量もさることながら、質的にもかなりのものだと思う。

獣医科大学でもこれだけ馬臨床関係の本がそろっているところはそうないだろう(必要とする人がいないからだろうけど)。

「本で学ばずに臨床をやるのは、海図を持たずに航海に出るようなものだ。」

という言葉からすれば、図書室なしでは私のところのような診療はなりたたない。

「事件は現場で起こってるんだ!」と叫ぶ青島刑事に、「青島君、事件は会議室で起きてるの」と突き放す、警視庁女性キャリアのセリフは良くできていた。

        「臨床は図書室でやってるのヨ、○×君」

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今日で仕事納。

仕事の区切りはつかなくても、年の区切りはやってくる。

まあ、来年も頑張りましょう!

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牛の初乳の商品開発を

2006-12-29 | 牛、ウシ、丑

 昔、「牛の初乳を子馬にあたえることで、子馬に牛のIgGを吸収させて役立たせることができるか?」という文献を、某馬の科学誌に紹介したことがある。

結論としては、牛の初乳中の牛のIgGは子馬に吸収される。

ただ、異種動物の蛋白なので馬のIgGよりは早く体内から消えてしまう。

また、牛は、馬に特有の病原体に対する抗体を持っていないので、その点では馬にとっては馬のIgGより価値が劣る。

しかし、馬IgG(馬の初乳)が充分な量は手に入らないのだったら、牛の初乳で良いから飲ませたらよいのではないか。

ということであった。

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 ホルスタインは乳を出すために改良されてきた品種で、常乳より濃い成分と言う意味での初乳はすごい量がでる。

最近は、初乳を醗酵させるなどして、有効に利用する方法が考えられている。

牛乳豆腐にして食べようというのも利用方法の一つだ。

牛の初乳が子馬にも役立つように、人にとっても免疫成分や、ヴィタミン、ミネラルなど、すぐれた栄養源になるはずだ。(あまり過剰な期待はしない方が良いと思うが)

貴重な物なのだから、いっそ商品として開発してはどうなんだろう。

品質を一定にするのは難しいのかもしれないから、産地直送とか、契約販売などの方法を考えれば、欲しい人はいると思う。

昔、道東では魚網にかかった花咲ガニは踏み潰していたそうだ。網からはずすのは面倒だし、まとまった数とれないと流通に乗らないし、名前が知られていないので「ヘンなカニ」として売り物にならなかったそうだ。

今は、貴重品、高級品なのはご存知の通り。

牛の初乳も貴重品だと思う。

出荷できない乳として扱っているのはもったいないと思う。

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Photo_185 大掃除で、手術台を洗ってワックスを塗ろうと思ったら、結構さびていて、さびを落とすために車輪をはずして・・・・・おおごとだった。

関節鏡手術では塩水をかけるし、腸管手術ではウンコだらけになる。

カヴァーをかけて使うなら毎回カヴァーを使い捨てにするか、洗わなければいけない。

それに、床を掃除すれば濡らさないわけにはいかない。

去年は1年間に350回以上使った。錆びるはずだ・・・・・・・

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ヤギ飼いませんか?

2006-12-28 | 新生児学・小児科

 分娩の事故などで母馬が死んでしまうと、残った子馬を育てるのはなかなかたいへんだ。

第一の方法は乳母馬を雇うことだが、これはかなりの費用がかかる。相場は50万から100万。

しかも、なかなか手配できないことも多い。

 乳母馬を用意しないなら、代用乳で育てるしかない。

しかし、これも相当な費用がかかる。馬用の粉ミルクは高いのだ。結局、数十万円かかってしまう。

おまけに、昼夜問わず子馬に哺乳するのは重労働だ。

 日本では全く行われていないが、ヤギの乳を子馬に吸わせるという方法がある。

ちゃんと教科書に載っている方法だ。

以下、最新の馬新生児学の教科書 Equine Neonatal Medicine からの引用。  

  -------Photo_182---

 哺乳ヤギも、親を亡くした子馬を育てる方法として用いられてきた。

大型の乳用ヤギ(Nubiban種など)はこの目的に最も適している。子馬が乳房から飲み易いように牧草の塊の上に立つようにヤギに教え込んだりもする。しかし、大きな子馬でも哺乳し易い姿勢をとることを覚える。

 親を亡くしてヤギに付けられた子馬は、生後2週間かあるいはもっと早くからクリープフィード(ミルクペレット、穀類など)も与えるべきだ。そして、水と乾草も自由に採れるようにする。代わりに、1頭以上のヤギを使えば子馬の栄養要求を満たすようになるかもしれない。

 ヤギの乳は母馬の乳と完全には一致しない。ヤギの乳は、ほとんどの栄養分、脂肪、蛋白、乳糖の濃度が高く、水分量は少ない。

 ヤギのミルクを135kcal/kg/日与えられた新生子馬で、体重増加が少なかったこと代謝性アシドーシスが報告されている。

 ヤギの体重と子馬の成長(体重と体高)をこまめにモニターし、ヤギも子馬も体調不良にならないようにするべきだ。

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 馬が売れなくなって以来、母馬が助からないなら、「子馬も要らない」と言われることが出てきた。

乳母馬代もミルク代もかけられないのなら、もっと安い方法としてヤギを使ってみてはどうだろうか。

ヤギ飼っときませんか?

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Equine Neonatal Medicine

2006-12-27 | 図書室

MaryroseparadisEquine Neonatal Medicine  A Case-Based Approach 。

馬新生児学の新しい教科書である。

著者はUSA東部の大学の方が多い。

USAでも多少なりとも大学によって、考え方や実践の仕方が異なるようだ。

ペンシルバニア大とオハイオ州立大の獣医教育病院を訪れたある先生が、「ペンシルバニア大は1例1例動物を非常に大切にする。オハイオはデータを取ることを重視する。」と言っておられた。

ペンシルバニア大 New Bolton Center で馬新生児学のインターンシップを修了したある人Equinenaonatologyknottenbeltは、Knottenbeltの Equine Neonatology  Medicine and Surgery を

「良い本だと思うが、納得がいかない部分がある」

と言っていた。

 どちらが良い本かって?

両方買うしかないでしょう。

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Mary Rose Paradis のEquine Neonatal Medicine は各章に数例の具体的な症例の経過が載っている。

それは、無味乾燥な教科書を読み物にし、本で学ぶ動機付けを作るためだ。

緒言に書かれているのだが、「教科書が調べ物の対象としてしか使われない。教科書を最初から最後まで読むのは専門医の試験前のレジデントだけだ」

しかし、仮名とは言え、名前まで記載された各症例の経過、何を考え、どのような看護、治療をしたかの記載は、臨床家にとっては興味を呼び起こされる。

1例1例を大切にする東部の獣医教育病院の姿勢が現れているのかもしれない。

そして、獣医臨床が命にかかわる物語やドラマにあふれていることを知らされる。

それは、私がこのブログでやりたいことでもあるのだけど・・・・・

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 ほとんどの著者は女性だ。Ucdnicu_1

馬新生児集中治療での女性の活躍を見る思いがする。

重症の子馬を看病するのはたいへんな作業だ。

寝ずの看病が2晩3晩続くと、男は音をあげてあきらめる。

牧場のかあさんだけがあきらめずに子馬を助けるのを何度も見てきた。

NICUには、無味乾燥な知識や技術より大切なものがある。

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