真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「肉体保健婦 フェロモン全開!!」(1997『白衣のをばさん -前も後ろもドスケベに-』の2005年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山邦紀/撮影:田中譲二/照明:秋山和夫/音楽:中空龍/助監督:加藤義一/制作:鈴木静夫/スチール:岡崎一隆/出演:鮫島レオ・青木こずえ・悠木あずみ・ジョージ川崎・竹本泰史・田中あつし)。因みに出演者中ジョージ川崎は、栗原良・リョウと同一人物。
 出版社で企画会議中の、先輩社員の栗橋幸雄(竹本)と新入社員の香取広見(田中)、菅原由宇(悠木)。香取はどうにも体調が優れず、栗橋の指示で由宇に伴はれ保健室に向かふ。そこに居たのは、何時もの喜多川真紀(青木)ではなく、アメリカで保険理論を勉強して帰つて来た、とかいふ南田華子(鮫島)であつた。由宇を返した後、華子は大胆なセックスで香取を癒し、会社に無理に適応しようとして心身に異常を来たしてしまふくらゐなら、いつそのこと会社の役になんて立たなくてもいい、と組織よりも個人を優先する保険理論を説く。一方真紀は真紀で、決して辞めてしまつた訳ではなかつた。華子と日替りで勤務する真紀は、仕事のストレスはプラス思考で克服することを常々説く。華子と対立した真紀は、華子は会社の為にならない存在である、と課長の唐木順三(ジョージ)に上申書を提出することを画策する。だが唐木には、華子と付き合ひ、プロポーズすら申し込まうとしてゐた矢先に華子が渡米してしまひ果たせなかつた、といふ過去があつた。
 華子を中心に、香取と由宇、真紀は栗橋と、そして唐木と華子。と、絶妙にクロスオーバーする三者三様の恋模様に、華子と真紀のイデオロギー対立を絡めた脚本は手堅過ぎるくらゐに纏まつてをり申し分ないのだが、致命的に問題なのが、主演の鮫島レオの容姿。首から下は筋肉質でキレイな体をしてゐるのだが、鼻は大胆に胡坐をかき、よくいつても癖のある、直截に片付けてしまへば品のないこと甚だしいルックスである。主演女優が容貌魁偉であつてしまつては、一般映画であつても余程特異なラインを狙ふか、初めから特異な映画を目指すかでもしなければ苦しいところであるのに、これがピンク映画とあつては最早木端微塵である。浜野佐知の力量を以てしても、終に映画を立て直すことは叶はなかつた。再びアメリカへと発つ華子を―何しに帰つてきたんだ?―桜の花咲く季節、香取と由宇、真紀と栗橋、唐木は独りでそれぞれ見送るラストシーンはそれなりに叙情感豊かに描かれてはゐたが。何でかといふと、鮫島レオが画面から外れてるから
 女優が三人出て来る中で、主演の女が一番ブサイクである。といふことはリアルタイムの新作でも時に、これが旧作とあつては結構ままにあることでもあるのだが、一体その時、世界に如何なる力が作用してしまつてゐるのであらうか。いはゆる合理、の枠内では到底捉へきれぬ正しく不条理である。

 結局、ピンクではこの一本切りしか仕事をしてゐない―して呉れなくて勿論構はないが―鮫島レオ。唐木の前でエアロビクスを踊つて見せる―魅せられはしないけど―カットもあるのだが、この人、絞り込まれた体といひ、何かそつち方面からの出なのであらうか。いはゆるピンク版、鮫島事件である。上手く纏まつた?   >知らねえよ


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 「若妻発情 だらしない舌」(1996『老人の性 若妻生贄』の2002年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・田中譲二・藤原千史・根津信哉/照明:上妻敏厚・荻野真也/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:藪中博章/助監督:松岡誠/制作:鈴木静夫/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:沢田杏奈・桃井桜子・青木こずえ・荒木太郎・久須美欽一・甲斐太郎・リョウ)。
 1989年から1997年にかけて、浜野佐知は毎年十本以上発表するとんでもないペースで撮りまくつてゐるのだが、流石に、実に充実してゐる。
 公園でゲートボールに興じる老人達、輪から一人離れ、見田宗介(リョウ)が本を読む。吉見俊哉(甲斐)と井上孝三(久須美)は宗介にも加はるやう促すが、体を動かすのが苦手な宗介は煮え切らない。宗介は息子の鶴男(荒木)、嫁の裕恵(沢田)と同居する旧旦々舎に帰宅。但し鶴男と結婚する際の条件が親とは同居しないであつた裕恵は、老人ホームに預けてしまへと宗介を何かと邪険にする。一方、井上家の嫁(桃井)とその友人(青木)が、ゲートボールを楽しむ老人達を、冷やゝかな目で見下す。年寄りをバカにする若い女に激しい憎悪を燃やす井上と吉見は、目出し帽とゴーグルで武装、シルバー・レイプ団“ゲートボール・ゲーターズ”として青木こずえをライトバンで拉致、手篭めにする。
 凶暴にアグレッシブな老人達が、先達に敬意を払はない若い女供に正義ならぬ性義の鉄槌を下す問題作。戦闘的フェミニストたる浜野佐知がどうしてこのやうな映画を撮つてゐるのかはよく判らないが、兎も角面白さの上では比類ない痛快作。今作の白眉は、豊か過ぎる久須美欽一と甲斐太郎の怪演合戦。教則本を読み込み、宗介も漸くゲートボールの輪に加はる。いざやつてみると矢張り中々に楽しく、公園をあとに居酒屋にて井上・吉見と楽しく酒を酌み交はす。そこで吉見は、宗介もゲーターズに勧誘する「見田さん、実は私ら、ゲートボールだけしてる訳ぢやないんですよ・・・・」。それまでのにこやかな好々爺の貌をかなぐり捨て、途端に凶悪な強姦犯の悪相に変貌する久須美欽一×甲斐太郎!あまりにも鮮やかな振り幅に、思はず大笑させられてしまつた。三人ゲーターズはお約束の、横一文字に並んで出撃すべく歩き出すデス・マーチ風のショットを手堅く押さへると、桃井桜子を襲ふ。初めは桃井桜子を蹂躙する井上と吉見を遠巻きにしながらも、やがては堰が切れたかのやうに宗介も激しく犯し始める。目出し帽とゴーグルで顔はすつかり隠してゐながら、表情と感情を巧みに表現してみせる三人のベテラン俳優部の確かな地力が光る。
 続けてゲーターズは裕恵を襲ふ、こゝで、のちに改心した宗介に裕恵が情を移し、二人がデキてのけるといふラストは安直に過ぎると流石に思はざるを得ないが、警察に通報する代りに、家族に悪事をバラされる井上と吉見の姿は爽やかに映画を締め括る。桃井桜子に肩を揉まされながら家事をすつかり押しつけられた井上の情けない姿を挿んで、宗介が裕恵と公園を散歩してゐると、ゲートボールのスティックを振り回した青木こずえに吉見が追ひ駆けられてゐる。マンガのやうに泣き出しさうな表情の、甲斐太郎が激しく笑かせる。どうでもいゝが青木こずえは、そんなもので下手に殴つた日には、年寄りでなくとも普通にデスるぢやろ(笑

 沢田杏奈×桃井桜子×青木こずえ、ルックスもスタイルも抜群の三本柱を揃へた女優陣の布陣もガッチガチに磐石。中でも青木こずえは、気の所為かも知れないが、体調でも良かつたのか常にも増して一際美しく映る。ゲートボールの輪の中に、本物のお爺ちやんとお婆ちやんが二人づつ登場。何の根拠もないが、ロケ先で現地調達した方々のやうな気がする。


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 「痴漢電車 締めつける女」(1996『痴漢電車 貝いぢり』の2002年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志・小山田勝治/照明:上妻敏厚・荻久保則男/音楽:藪中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:森満康巳/制作:鈴木静夫/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:永尾和生・吉行由実・青木こずえ・リョウ・樹かず・荒木太郎・真央はじめ)。
 ある日銀行員の安東(真央)は、電車の中で痴漢(痴漢師は荒木太郎)される美貴(永尾)の姿を目撃する。その時から、安藤は美貴にピリオドの向かう側で一目惚れする、一言で片付けてしまへばストーカーもの。恥づかしながら、私は疲れ切つてゐたので、観てゐた際途中で寝てしまつた。もうこの映画は捨てて帰つてしまはうかとも真剣に迷つたが、旦々舎の映画でもあるゆゑ、もう一周して観た。私は一度目、起承転結に於ける承部の、美貴と恋人(樹)の濡れ場のところで寝落ちたのだが、二周目、転部から安東が豪快に暴れ出し、実は頗る面白い映画であつた。オチまではあへて自重するが、安藤は、まづ美貴を苦しめる痴漢師を排除する。その上で、自分が美貴を痴漢する(笑)。怒つた痴漢師から仁義を見せろ、と金品を要求されると、安藤はグーパン一発でノック・アウト。亀頭のやうな髪型で、偏執的なルックスの真央はじめがストーカー役にピッタリ―だから、古い話を蒸し返すが真央はじめが女にモテモテの色男といふ設定はナシだらう。さういふ辺りが、中野貴雄と浜野佐知との見識と、地力の差である―であるし、旦々舎の映画に変態役で出て来る荒木太郎は実に活き活きとしてゐる。昨今の体たらくでは、国沢実共々最早役者に専念してゐた方がマシかも知れない、といふのは意図的に滑らせた筆である。
 配役残り、青木こずえは安東の恋人。リョウは、美貴が勤めるコンサルティング会社のセクハラ社長、美貴をレイプする。吉行由実は、報復に安東に犯されるセクハラ社長婦人。夫が犯したレイプの報復に自分が陵辱されたと知るや、夫を捨て家を出る、といふシークエンスは実に浜野佐知らしい。

 主演の永尾和生は他に山﨑邦紀の映画に一本と、ピンクの出演作は二本しかない―多分とつくに引退されてゐるのであらう―が目と目の間の離れた、絶妙に表情のセクシーなそゝられる女である。
 DMM備忘録< 安東逮捕の一年後、新生活に羽ばたかうとする美貴を、何故か娑婆にゐる安東が電車の車中ロック・オン


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 「男好きする人妻 四つん這ひ」(1996『人妻不倫 のけぞる』の2006年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:田中一成/照明:秋山和夫/音楽:藪中博章/助監督:国沢実/製作:鈴木静夫/スチール:岡崎一隆/出演:浜田ルミ・桃井良子・小川真実・樹かず・真央元・リョウ・甲斐太郎?)。 
 いきなりであるが。本当にどうでもよかないくらゐに、新日本映像(エクセス母体)公式サイト内、作品リストの粗筋がハチャメチャである。ストーリーは何を基にして書いてゐるのだか知らないが、実際の映画の中身とはまるで異なる、最早木端微塵のその先、殆どオリジナルである。加へて、配役まで御丁寧に違へてある。ところで更に大体、甲斐太郎なんてそもそも出とらんぢやろ。あれ、おかしいな?確かクレジットにも名前があつたやうな・・・・   >あり得ないことでもありつつ、エクセスは稀にやらかすが
 互ひに子供の出来にくい体質といふことで、佐々木恭子(浜田)と夫の康夫(樹)は不妊に悩む。兎にも角にも子供が欲しいと暴走する恭子が、街に出て男を漁り、健康的な=精子の濃ささうな男を選んでは自ら声をかけ、中出しをせがむ。プロット一発!で最後まで怒涛の勢ひで突つ走る豪腕桃色映画である。加へて今作の特色は、恭子が自らの快楽の為に男漁りをするのではなく、あくまで妊娠したい、といふよりも寧ろ妊娠しなくてはならない、とやらいふ遺伝子からの大いなる要請に従つて些かの罪の意識を抱くでもなく、半ば何かに憑り付かれたかのやうに男に中出しを強ひる、さういふ強迫的なサイコ要素にある。山崎邦紀一流の見事な偏向であると同時に、首から下はムチムチと肉感的なのに、首から上は眼の下の隈、ややこけた頬と微妙に不健康に見えなくもない浜田ルミのルックスも、絶妙に物語にジャスト・フィットする。
 真央元は、ジョギングしてゐるところを恭子の第一の被害者といふか被食者となる真彦ならぬ近藤真一。桃井良子は、真一の彼女で雑誌記者の君塚みずき。浮気の発覚した彼氏から奇怪な恭子の存在を知り、俄かに好奇心を掻き立てられ記事にする。浮気の発覚する契機といふのが、恭子を抱いた後にみずきと寝た真一が、ついうつかり中出ししさうになる、といふのは少々粗雑ではあるが、桃井良子と真央元による手慣れた好演が微笑ましく見させる。リョウは、ビル清掃に額に汗を流すところをこれは精子が濃ささうだ、と恭子に頗る光栄な見初められ方をして第二の被害者となる砂川浩二。後に恭子の自宅を突き止め、恭子を中出し陵辱する。小川真実は、恭子の姉、康夫からは義姉に当たる島田昌美。恭子の異常な行動を知り、康夫のことを慮り心を痛める。
 例によつて恭子が精子漁りに家を空ける中、康夫を思ひ胸を痛める昌美がちやつかり康夫とセックスしてゐたりなんかする中、強姦され流石にすつかり幻滅した筈なのに、恭子が再び、今度は何故か交通整理員をしてゐる砂川を誘惑して三度中出しセックスに励むのがラスト・シーン。徒にエモーショナルな藪中博章のメイン・テーマが、無理矢理豪快に響く。
 もしかすると、甲斐太郎―菊島吾郎といふ役名である、といふことになつてゐる―はここでの交通整理員として、当初予定されてゐたのであらうか。何れにせよ、影も形も出て来ないことに変りはないが。

 当サイト認定“日本一本篇中に見切れる助監督”国沢実は今作でも健在、恭子と康夫が診察を受ける産婦人科医と、そこに居る必要は別にないのに、康夫が電車に乗るカットで他の乗客として何故か顔を覘かせる。


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