真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「欲情セレブ妻 いやらしい匂ひ」(2023/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/特殊メイクアップ&造形:土肥良成/劇中画:只埜なつみ/撮影監督:中尾正人/録音:西岡正巳/編集:山内大輔/音楽project T&K・魔王魂/ラインプロデューサー&助監督:江尻大/助監督:菊嶌稔章・小関裕次郎/DIT:石川真吾/撮影助手:榮穣・林遥南/監督助手:神森仁斗/ドライバー:モリマサ・赤羽一真/効果・整音:AKASAKA音効/ポスター:加藤彰/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:山岸逢花・只埜なつみ・美園和花・豊岡んみ・安藤ヒロキオ・小林節彦・モリマサ・加藤絵莉・杉浦檸檬・八ッ橋さい子・福山理子・須藤未悠)。面倒臭いゆゑ日本語で打つたが、実際の本篇クレジットはアルファベット、サトウトシキか。
 大書のタイトル開巻明け、轟然と飛び込んで来るのは三番手の爆乳。これぞピンク映画、カット跨ぎのオッパイに勝る、カタルシスが宇宙に果たして存在する哉。ギターウルフ的に底を抜いた真理はさて措き、旧姓江口の入婿・雅之(安藤)が家政婦の尚代(美園)を憚りもせず抱く一方、会長職に退いた父親に強ひられ、現社長の雅之と強制結婚、したといふかさせられたけれど。夫婦関係を持つつもりなど端からなく、もしかすると明示こそされてゐないだけで真性ビアンかも知れない、妻の神宮寺綾乃(山岸)は観音様にしか見えないアクリル画を前に軽く昂る。前職が女性限定会員制クラブ「PIERCING」の百合デリ嬢であつた尚代から、足の指舐めはおろかハモニカまで吹いて貰ふ性感マッサージを受けがてら、綾乃はアクリル画の作者で、芸大の同窓生・白井朱美(只埜)との逢瀬を想起する。こゝで三本柱が、順に恐らく最初で最後の賑やかし作「若妻ナマ配信 見せたがり」(2020/監督・脚本・編集:佐藤周)と、吉行由実監督生活二十五周年記念作「ママと私 とろけモードで感じちやふ」(2022/主演:花音うらら/モブ)に、古澤健ピンク映画第二作「怪談 回春荘 こんな私に入居して」(2020/主演:石川雄也/三番手)ぶりの全員二戦目。現時点で山岸逢花のみ、三本目となる髙原秀和大蔵第七作に継戦してゐる。
 配役残り森羅万象、でなく小林節彦が、件の綾乃父。多分一人娘である綾乃の、母親は二十年前に死去、遺影も見切れず。モリマサは、実家が太い訳でも別にない模様の朱美が、学生時代から元倉庫をアトリエ用に月二万五千円で借りる、判で捺したかの如く「ハッピー不動産」の高田。ところでその破格家賃、大島てる物件かね。新入生の時既に目をつけてゐた綾乃―綾乃は放送学科で、朱美は美術学科―が四年生になつて、朱美のバイト先である男子禁制のビアンバー(屋号不詳)の敷居を跨ぐ本格的な二人の出会ひ。まづ山内大輔2020年第二作「つれこむ女 したがりぼつち」(主演:桜木優希音)以来の杉浦檸檬が、朱美に煙草の吸ひすぎを窘めるパイセン店員。たゞその件、もしくは藪蛇な造形。嗜まない俳優部に下手な煙草を吸はせる悪弊は、いゝ加減国際条約で禁止すべきではなからうかとも思ふ。加藤絵莉と福山理子は、本格的に催したのか手洗でオッ始めてのける、カウンターのカップル客。気づいた杉浦檸檬の、声は発さず口の動きで「ヤッてる、ヤッてる」が激しく可笑しい。須藤未悠は、杉浦檸檬と会話を交すカウンターもう一人客。綾乃と雅之の、結婚式招待状を手に朱美が黄昏る、元職場のビアンバー。豊岡んみが、変つてるつてよくいはれてさうな、エッジの効きすぎた闇もとい病み店員・エミリ、どつちでも変らんか。あと特殊メイクは、箍の外れたマゾヒストであるエミリの文字通り痛々しい腕の噛み傷で、八ッ橋さい子は須藤未悠と同じポジのカウンター客。その他、流れ的には豊岡んみ登場の直前。大学卒業後、アート系グラビアアイドルとして一時的に本名で活動してゐた朱美を、とちぎいちごテレビ局女子アナの綾乃が取材する一幕、現場にカメラマンと照明を当てる二人見切れる。
 ピンク初でDIT“デジタル・イメージ・テクニシャン”がクレジットされる、四ヶ月強フェス先した山内大輔2023年第一作。尤もDITが、実際どういふ作業をしてゐるのかは知らんがな。
 ジャッロ感を明快に嗜好もしくは明確に志向したと思しき、毒々しい極彩色で彩られる鮮烈通り越し苛烈な百合万華。何はともあれ女の裸的には、山内大輔が腹を括つた堅調を堅持。隙あらば放り込む往時の回想込みで、季節を忘れたかのやうに百合が狂ひ咲き続け、僅かなヘテロを介錯する男優部も主に安藤ヒロキオと、気持ち小林節彦、何れにしても穴は開かない。印象的なアクリルの下駄も履き、ドギツい色調は作品世界の狙つたトーンと、力任せの煽情性を共々加速。申し分なく勃つ、どちらかといはずとも平素は逆の感興を覚えがちだが、寧ろ画に対する劇伴の非力をも感じさせるほど勃つ。片や劇映画的には、神宮寺が―下心限定の―テレパスで“創造的な妄想”を朱美に見抜かれた際、小林節彦の地力が爆裂する圧巻の目芝居。そして何より、只埜なつみが空前のソリッドとエモーションを敢然と撃ち抜く、「愛してないなら、綾乃あたしに返して」の極大名台詞には度肝を抜かれた。山内大輔はまだしも、只埜なつみがいゝ意味でとんでもねえ。ヤバいシークエンスを観た、凄い映画を観た。未だ半分も小屋に辿り着いてゐないうちに、2023年ベストを決定してしまはうかと思つた、一旦。
 さうは、いふてもだな。この物語、最初から朱美は神宮寺会長をその御仁と知つた上で、狙ひ撃つてゐないと展開が成立しないやうに思へつつ、その辺り、絶妙に堀が埋めきられてあるとはいひ難い。恵まれ倒した境遇に要は胡坐をかいてゐた綾乃と、苦しみながらも、戦ひ抜いて来た朱美。人物造形の対照がよくいへばそのまゝ反映されてゐなくもないにせよ、ビリング頭が名前の大きさ以外、超新星伏兵の二番手に何もかも負けてゐる。破綻したビリングが映画全体の均衡に、影響を及ぼさぬ筈もあるまい。最終的には手放しの傑作には些か遠い、攻めきれてゐない余地も否み難い一作ながら、昔日のピンク大賞が健在であつたならば、只埜なつみの助演女優賞は鉄板中の鉄板、まづ間違ひなからう。そのくらゐ吃驚した、引つ繰り返るかと思つた。

 あと何気に特筆すべきは、劇中に限つても三人着床。尚代と朱美に至つては二発二中の雅之が自慢していゝ、一撃必殺もとい必生の種馬属性。


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