真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴女昇天」(昭和52/製作:ワタナベプロダクション/配給:日活株式会社/監督:中村幻児/脚本:中村幻児/製作:渡辺輝男/企画:渡辺忠/撮影:久我剛/照明:近藤兼太郎/編集:竹村編集室/音楽:山崎良平/記録:前田侑子/助監督:高橋松広/効果:中野忍/美術:軽沢美術/スチール:津田一郎/製作進行:大西良平/製作担当:一条英夫/衣裳:富士衣裳/小道具:高津映画/タイトル:ハセガワプロダクション/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所/出演:杉加代子・中野リエ・高鳥亜美・青山涼子・鶴岡八郎・国分二郎・楠正道)。出演者もう一人、吉田一郎がポスターにのみ載る。製作の渡辺輝男は、渡辺忠(a.k.a.代々木忠)の本名。渡辺輝男はといふか、渡辺輝男もといふか、も?
 WP印のナベプロロゴに続き、ヒャッハヒャッハ単車を駆る三人組のバイカーにサクッとタイトル開巻。尻(ケツ)に高鳥亜美を乗せた国分二郎の多分中型と、125ccですらない、楠正道のダックス50が一緒に走らうとするツーリングに土台無理がある。兎も角クレジット明け、てつきり高鳥亜美は国分二郎のスケかと思はせ、弟分の楠正道から乞はれると怒るでなく、案外平然とシェアする仲のいゝ穴兄弟ぶり。エンストした2ドアのボンネットを開け、途方に暮れる青山涼子(ex.青山涼子で愛染“塾長”恭子)の脇を、三人が通りがかる。エンジンを見るフリとか適当にしがてら、国二と楠正は塾長に食指を動かす。一方、後部座席に二代目社長の鶴岡八郎と、後妻のレイコ(杉)。運転手の谷山(吉田)がハンドルを握り、助手席にはお手伝ひのメグミ(中野)が座る高級セダン。山中の別荘に到着すると運転手が東京に何の仕事を残してゐるのか、谷山はとんぼ返りで帰京。名残を惜しむ、メグミと谷山はデキてゐる風情を窺はせる。さて措き、今回鶴八一行の三人が繰り出したのは、レイコの誕生日祝ひ。メグミの悲鳴に二人が風呂場に駆けつけると、風呂桶で全裸の塾長が意識を失つてゐた、そら吃驚する。ところ、で。俳優部は吉田一郎までで全員出揃ひ、配役は残らないが、軽く面長にした天川真澄(ex.綺羅一馬)、あるいは山西道広的な。見る前は字面で吉岡市郎と勘違ひしてゐた、吉田一郎の風貌に何処かで見た既視感を覚え、画像でググッてみると若き渡辺忠、の要は変名。この時代の買取系なりピンクに、なかなかこの期に手を出しやうもないけれど、チョイチョイ俳優部に紛れ込んでゐておかしくなささうな、ビジュアル込みの手堅さをヨヨチューが何気に披露する。
 改めて後述するが、プロトタイプ的な中村幻児昭和52年最終第七作。本隊ロマポには絶対つけないであらう、公開題のぞんざいさがある意味清々しい。
 そこの仔細は豪快にスッ飛ばし、拉致つた塾長を監禁凌辱するのに鶴岡別邸を拝借してゐた国二一行が、葱を背負つた鴨と富裕層の休日もジャックする。スッ飛ばす割愛自体に、実は蓋然性がなくもない。そのまゝ大人しく、さんざ女々を嬲る犯すに、徹して呉れればいゝものを。所謂“資本家の豚”的な、今となつてはノスタルジの対象とさへなりかねない、教条的な憎まれ口を国二が長々叩きだすと逆の意味で順調に、中盤から映画は躓き始める。荒淫の前妻にさんざ虐げられたかと思へば、上手いこと交通事故でオッ死んで呉れ迎へたレイコが、今度は不感症だつた。繋げなくていゝバトンを国二から貰ふ形で、鶴八も延々恨み節を垂れるに至つては、男優部の長広舌なんぞどうでもいゝ、もつと濡れ場を真面目に見せんか、と完全に匙を投げかけた。尤も、呆れる勿れ四分延々愚痴つた末、自力で鶴岡社長が拘束をパージした際には―空費したかに思はせた尺を―回収してのけた!と一旦感心させる。重ねて、もしくは火に油を注いで。破瓜を散らせたつもりのメグミが、処女でも谷山が二人目―恐らく鶴岡八郎で六人目―でさへなく。挙句レイコからは短小包茎早漏の役満罵倒すら浴びるに及んでは、まるでこの御仁が主役の、鶴八残酷物語の様相をも呈する。何れにせよ、ピンクか買取系なら全員ビリング頭を狙へさうな、攻撃的な女優部のみならず。革のバイクスーツがカッコよく似合ふ、国二と楠正も擁してゐながら。もう少し小気味よく、女の裸を畳み込めなかつたものかと消化不良感を最も強く、残すものかと思ひきや。そこかしこに否み難い無理は、好意的に評価―か等閑視―するならばこの手の作劇に於いてデフォルトの初期装備。知らぬはメグミばかりな、全てを引つ繰り返しはする無体な種明かしに落とし込む。全般的に個々のシークエンスのエッジと展開のキレに欠き、ラストも衝撃といふよりは、木に竹を接ぎ具合の方が上回る。それは果たして、上なのか下なのか。整理すると、外界から隔絶された山小屋を舞台に、過分にバイオレントな乱交の果て、アッと驚く大どんでん返しが爆裂する。要は、総合的な完成度が派手に劣る点まで踏まへるとなほさら、買取系を二本残しての中幻ピンク最終作「ザ・SM 緊縛遊戯」(昭和59/脚本:吉本昌弘)の、素案と看做してさうゐなささうな一作。といふのが、先に触れた試作のこゝろである。
 備忘録< 全部誕生日の余興


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