真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「親友の母 生肌の色香」(2006/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和//助監督:小山悟/撮影助手:柴田潤/照明助手:小松麻美/監督助手:廣川雅規、他一名/音楽:與語一平/タイトル:夢工房FILM/挿入歌『ナツノカゲ』作詞・作曲・唄:ニナザワールド/出演:ミュウ・青山えりな・冬月恋・富窪大介・松浦祐也・ちゃぼーず・サーモン鮭山)。
 帰省の出掛けにも関らず、遠藤健治(松浦)は赤松愛子(冬月)と朝から熱い一発をキメる。健治は愛子に卑猥な文句を口にすることを強ひると、「淫語淫語淫語、淫語サイコーッ!」。のつけから、現有勢力の中では日本映画界最も輝ける青春を身に纏ふ男、松浦祐也はギア・レバーもへし折らんばかりの勢ひで飛ばしまくる。
 大学の夏休みを利用して、健治は友人の竹山行英(富窪)を伴ひ郷里の海町に帰省、海の家でアルバイトをしながらの、一夏のアバンチュール―何処の生きる化石だ、俺は―を目論む。実は童貞の行英は、十六で健治を産んだ為、未だ若い健治の母・美和子(ミュウ)の色香に惑はされる。
 一応メイン・プロットは青春の本質をテーマとした、純情童貞青年と親友の母との一夏の淡い恋物語であるのだが、ほどほどの演技力と、弾けさうに健康的な肢体が設定に比して若過ぎて見えもすらするミュウは兎も角。例によつてといふべきか、本来俳優部主人公たるべき富窪大介がどうにも弱い。兎にも角にも個性に乏しく影は薄くおまけに体つきから締りが無く、“弱い”とくらゐしかどうにもかうにもいひやうがない。とてもではないが、一本の映画を支へられるだけの器ではない。ここいら辺りの若手のミスキャスト、あるいはより直截には駒不足は、実は結構深刻に考へなくてはならない問題であるのかも知れない。
 代つてといふか何といふか、メイン・ウェポンとして最前線に飛び出し、獅子奮迅一騎当千の大活躍を繰り広げるのは松浦祐也。フラワーな長髪に口ヒゲ、亡父譲りのティアドロップの金縁グラサンを決めると俄かに、何もかもが最後に最もカッコよかつた時代、70年代の香りが銀幕中に濃厚に立ち込める。発声が少々粗いのが気になりもするが、全活動をキンタマに制御された青年の好色ぶりを縦横無尽に炸裂させる。
 青山えりなは健治の郷里担当彼女の高野藍子。狂ひ咲く健治の性欲に翻弄されつつ、東京での健治の姿に疑問を抱く姿が、徐々にそして確実に積み上げられて行く過程は流石に、実に充実してゐる。竹洞哲也―と小松公典―と青山えりなの好調の持続ぶりは鉄板。サーモン鮭山は、美和子の亡き夫・繁之。捻りタオルに金縁ティアドロップのサングラスで、海の男を好演。登場が屋内シーンしか無い点に関しては、もうひと踏ん張り欲しかつたような気もしないではないが。
 終に一線を越えてしまふところは、それまでの積み上げに些か欠くだけに唐突さも感じさせるが、男女の仲になつてしまつた美和子と行英とが、愛欲に溺れて行く描写には峠越えの力学が上手く作用し、勢ひがある。感情の移入も易く、桃色の破壊力も大きい。塩辛いおにぎり、ヨーヨーと小道具の使ひ方も丁寧。主演男優の配役をクリアし二箇所の肝心要をあと一練り二練りしてあれば、完全に状況を制する傑作たり得てもゐたであらう、もう一歩のところの佳作である。

 誰なんだか判らないちゃぼーずは、ラストのオチ担当。ワン・カットのみながら、冬月恋相手に濡れ場の恩恵に与る。


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 「乱姦調教 牝犬たちの肉宴」(2006/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和/助監督:山口大輔/監督助手:小山悟・絹張寛征/撮影助手:宮永昭典/証明助手:沼田知久/音楽:與語一平・菅原陽子/協力:加藤映像工房/出演:青山えりな・倖田李梨・朝日かりん・吉岡睦雄・松浦祐也・サーモン鮭山・小林節彦)。
 初めに言ひ訳させて頂く。今作の感想に際して、登場人物の劇中での名前に関しては正直メタメタである。全く固有名詞で呼称されない者が居るのも兎も角、何とか聞き取つたつもりの名前に関しても、些かならず覚束ない。
 第二作「美少女図鑑 汚された制服」(2004)、で愚直ながら突破力のあるエモーションをモノにしたにも関らず、続く三作は世評は兎も角、私見としては完全に失速してしまつてゐた2005年竹洞哲也。2006年第一作「ホテトル嬢 癒しの手ほどき」で幾分持ち直す兆しも見せ、続く最新作の今作は、決定力が唸りを上げて轟く力作である。全く限られた本数しか観られてはゐないが、本年のピンクぶつちぎりのナンバーワン。
 冬の山中、逃げるミサト(青山)が右に左にと懸命に森の中を走るも、終に男(吉岡)に先回りされてしまふ。ミサトを追ひ詰めると、男は奇声を上げる、「キョー !!!!」。雪に白く染まつた富士の樹海を舞台とした、いはゆる監禁陵辱ものである。
 ミサトが意識を取り戻すと、下着姿で、立つたまま縛られてゐた。傍らには、男に犯される別の女。男が去つた後、女・エミ(倖田)はミサトに尋ねる、貴女もここに死にに来たのか、と。エミは吉野(サーモン)と心中する為に、森に入つた。最期の情交を狂ほしく交し、エミは二人で一緒に死ぬ為の薬剤を吉野に渡す。が、土壇場で無様に吉野は死ぬことに怖気づく。着衣も肌蹴たままのエミを残し、吉野は逃げる。慌てて追つたエミは、転んで足を怪我してしまふ。さうして動けなくなつたところを、男に捕まつてしまつたものだつた。以降、エミは男に昼夜なく幾度と犯され続ける。一方ミサトは、自死を志望してゐた訳ではなかつた。ミサトの恋人でプロボクサーのケンジ(松浦)は、目を負傷しボクサー生命を絶たれる。絶望したケンジは、自ら死を選ぶべく樹海に入る。ミサトは、ケンジを探しに森に入つたのだ。途中ボランティアで自殺志願者を保護してゐる男(小林)と出会ふが、小林節彦―以後小林―はケンジのことなど知らぬといつた。エミに話を戻すとそもそもは心中する、即ち死ぬつもりではあつたが、それでも男に殺されてしまふのは御免だ。男から与へられた苺を、エミは貪る。エミの中には、一転した生への執着が芽生えつつあつた。ミサトは、磨りガラスのパーティション越しに、男以外の女の人影を一瞬見る。男はエミを森の中に連れ出す。不意に男は、エミを解放する。戸惑ひながらもエミが喜び駆け出すと、そこには小林が。エミは小林に保護される。が実は、小林は男とグルであつた。男が新しい女を手に入れ古い女が用済みとなると、小林に流し、それを小林は海外に売り飛ばす。地獄から解放されたエミは、又新たな地獄に堕ちる。男の、今度はミサトに対する際限の無い陵辱がスタートする。
 ラストはチと安いが、脚本・演出・キャスト・撮影・音楽。全てが凄まじく素晴らしい。取り分け、文字通り目を見張つたのは撮影。創優和は一体何かどうかでもしたのか、屋内でのシーンに関しては兎も角、冬の森を正直ピンク離れしたもうとんでもないスケールと美しさとで撮り上げる。冬の森の中を、男が首輪に付けた赤い縄を引きミサトを連れ回すシーンなどは、下手な言ひ草にもなつてしまふが、完全にピンクの画ではない。スクリーン一杯に広がる木々の緑と冬の白さ、その中を小さく、白いワイシャツに黒ズボンの男が、下着姿に首輪を巻かれただけの、靴も履かされてゐないミサトを赤い縄で引く。決定的に美しい。美しいといふか、思はず息を呑んでしまふ程の画としての強度が漲る。ここに恐らく、菅原陽子のものではないかと思はれる挿入歌が被さる。♪私だけを見てて♪曲は他愛もないといつてしまへば他愛もない、今時のプチ・エモ系のガールズポップ―申し訳ない、正直音楽に関する正確なタームの持ち合はせが無い―でしかないといへばないのだが、か細くも狂ほしいメロディが、映画のエモーションを確かに加速する。といつて、決して単館系映画じみた監禁陵辱ものではない。男のエミとミサトに対する陵辱は、手を替へ品を替へ、執拗に描かれる。後に述べる男の妻とケンジとの濡れ場も含めて、エロ度も満点。即ち、ピンクとして要請される煽情性も全く申し分ない。冬の―撮影期間:2/24~2/26>青山えりなのブログより―山中を、下着のみで引き回され陵辱の限りを尽くされる青山えりなと倖田李梨。過酷を通り過ぎた撮影であつたであらうことは想像に難くない。決死の覚悟は、映画の中に成果として完全に現れてゐる。
 朝日かりんは、男の妻。正確にいふと、男の妻、だつた女。ミサトが監禁されてゐる階下で、拘束されたケンジに跨り、情熱的に腰を振る。が、後に隙を見て男を階段から突き落とし、ケンジと共に逃げ出したミサトが尋ねたところ、そのやうな女は居なかつたといふ。それは一体果たして・・・?この朝日かりんが又、ルックスは少々落ちるが、オッパイがいやらしく大きくてもう堪らない。騎乗位で自ら乱暴に揉みしだくオッパイは、今作の桃色方面最大の飛び道具である。
 居るのか居ないのか謎の女、男はどうして繰り返し繰り返し女を監禁しては陵辱するのか、謎解きも完璧。うつかり本来ならば公開前の映画に関してネタバレしてしまふ訳には行かないが、悪いことはいはない。目下最強の必見作である。どうかしたのか俄かにトップスピードの快進撃を見せる竹洞哲也は、青山えりな(ex.涼樹れん)といふ女優との出会ひが大きかつたのかも知れない。本職はグラビアアイドルとかいふことであるが、見た目が麗しいことに加へ、設定された状況の中で与へられた役を、使用するメソッドは類型的なものばかりとはいへ、要求される通りに何とかして演じ抜かうとする強い意志が感じられる。


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 「ホテトル嬢 癒しの手ほどき」(2006/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和/助監督:山口大輔/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/監督助手:絹張寛征/撮影助手:柴田潤/照明助手:宮永昭典/音楽:菅原ようこ・與語一平/スチール:佐藤初太郎/現像:東映ラボテック/協力:加藤映像工房・K.H.Y/出演:青山えりな・今野由愛・倖田李梨・萌みゅう・佐倉萌・柳之内たくま・サーモン鮭山・吉岡睦雄・松浦祐也・吉田祐健)。製作が、これまでの小川企画プロダクションではない、竹洞哲也は自前の製作プロダクションを立ち上げたのか。因みに東京での封切りは一月三十一日、正月映画といふ訳でもないのであらうが、その割には俳優部が頭数から妙に豪華だ。
 くどいやうだが、2005年の三作は全て惨敗の三連敗の竹洞哲也。掲示板にても軽く触れたが、PG誌主催によるピンク映画ベスト10の監督賞受賞は何の冗談か。ともあれ、続く今作に関しては、幾分以上に持ち直した。
 コスプレとストーリープレイが売りの、熱海のデリヘル「竜宮城」。ラブホでは、常連客の赤木修司(吉田)とナンバーワンの亜希、こと源氏名ヒラメ(今野)が理科教室の先生プレイの真最中。インポの赤木は、傲慢な亜希の接客態度に腹を立て、苦情の電話を入れる。店長の山内旭(サーモン)は仕方ないなとばかりに、ちやうど面接を受けに来てゐた、東京から流れて来た訳アリ風情の田野中美空(青山)に急遽トビウオといふ源氏名をつけ、赤木の下に向かはせる。明るく人当たりの好い美空は赤木に暖かく接し、赤木はインポを克服する。
 最初にハッキリいつてのけるが、脚本は全く纏まらない。美空は、みるみるナンバーワンの座に上り詰める。一方東京では終にナンバーワンになれずに熱海に都落ちした亜希は、美空に激しいジェラシーを燃やす。
 吉岡睦雄は「竜宮城」の―但し事務所の表には「竜ノ巣」とある―従業員・三島順平、三次の女には性欲を抱けないオタク青年。倖田李梨は、源氏名・アワビの小百合。占ひ狂で、竜宮城の待機部屋にも訳の判らない神棚を拵へてゐる。占ひで男を選んでは裏切られ、運気回復にはこれがイチバン♪とか山内の男根を貪る。ここに中盤、唐突に更に新人の玲奈(源氏名・ハニー/演:萌みゅう>凄い芸名だ)が絡んで来る。実施面接とばかりに、山内が玲奈を抱いてゐるところに出勤して来た小百合は山内の男根は私のモノだと、玲奈と争ふ。
 美空の訳アリとは一体何なのか?脱がない佐倉萌は、熱海で小料理屋だかスナックを営む、美空の母親・桃子。美空は不意に桃子を訪問し、久方振りの再会を果たす。ある日美空が客の下に出向くと、客は東京で美空がヘルス嬢をしてゐた頃の、店の呼び込み・詫助(松浦)であつた。
 斯様にプロットは乱立し登場人物は徒に豪華なのだが、その何れもが消化不良のまゝ流れ過ぎ去つてしまふ。例へば脇役とはいへ亜希も美空に対する劣等感を克服しつつ、亜希なりに成長を遂げて行く、といつた娯楽映画的な常道が、一瞥だにされるでない。要は一幕限りの単なる濡れ場要員に過ぎない、といふかですら殆どない詫助が、一々美空の過去を知る人物である理由も薄い。
 中盤までの登場人物を全て投げ出しておいて、不意に客として登場して来た詐欺師の遠藤勝(柳之内)と、美空は出し抜けに懇ろになる。二人で天気のポカポカと好い日に、熱海をプラプラとデート。例によつて騙すだの騙されないだのと、埒の明かぬ遣り取りをグダグダ交してゐる内に美空は腹を決める。次の日、美空が“訳アリ”に蹴りをつけに行くのがフィニッシュである。
 繰り返しになるが亜希と美空の相克―亜希からの一方通行ではあるが―は、亜希がヤケクソ気味に順平を強チンするところまで。殆どギャグ担当の小百合はまあこんなものでもいいとして、玲奈も玲奈で一幕限りのヒット・アンド・アウェイで殆ど無駄に登場して来る。松浦祐也のぞんざいな起用法は矢張り勿体なく、結婚詐欺師だとかいふ遠藤にしても、キャラクター造型としては本人の口から台詞でそれと語られるだけ。物語の鍵を握らされる筈のキャラクターの割には、要はやつてゐることはといへば、ブラブラしてグダグダするばかり。
 等々言ひ募つてみると、また今回も始末に終へぬ失敗作であつたかのやうにも思へても来るが、今回映画を救つたのは、青山えりなの輝く魅力はダメ男の鼻の下を伸ばした目線といふ次第でさて措くとして、本来ならば個人的には嫌ひな役者でもあつたのだが、「竜宮城」店長・山内役のサーモン鮭山。相手を突き放しながらも最終的には温かく見守る、といふキャラクターが形になつてゐる。雨の降りさうなラスト、(ネタバレにつき伏字)<預けてあつた息子を迎へに行く>腹を固めた美空に、<子供用の傘>をほらよ訳アリと無造作に手渡すシーンは綺麗に決まる。
 美空と遠藤との店外デート―デリヘルで“店外”とはいはないのか?―の件、要は自然光そのまんま撮つてゐるだけでもあれ、天候に恵まれキラキラと輝く熱海の風情が、美しくフィルムに刻み込まれてある。これは私の感傷的な気の所為か、ここ(福岡オークラ)で観る映画が、最も美しく見えるやうな気がする。二人の遣り取りに中身はてんでなくどうでもいいのだが、美しい画面をつらつらと眺めてゐるだけで、ウットリと幸せな気分になれる。それもまた、今作を救つてゐようか。


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 「欲情ヒッチハイク 求めた人妻」(2005/製作:小川企画プロダクション/提供:オーピー映画/プロデューサー:小川欽也/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和/助監督:山口大輔/監督助手:絹張寛征/撮影助手:宮永昭典/効果:梅沢身知子/タイトル:ガルタイトル/音楽:與語一平/協力:加藤映像工房・ACE/出演:夏目今日子・華沢レモン・葉月螢・松浦祐也・石川雄也・那波隆史)。
 夫(竹洞哲也?)と喧嘩し衝動的に家を飛び出した西田幸美(夏目)は、捨て鉢にヒッチハイクで車を拾ふ。止まつて呉れた車を運転してゐた角谷(石川)は、妻が身重ですつかり御無沙汰であつた為、早速ヒッチハイクの対価に幸美を求める。一度は拒んだ幸美ではあつたが、送られて来た夫からのメールの素つ気無さにキレると、自暴自棄気味に角谷に抱かれる。事が済み、幸美が携帯を触りながらフと車を降りると、光二は幸美の荷物も降ろして走り去つてしまふ。続いて幸美を拾つて呉れた山里涼子(華沢)は、恋人の中西哲也(松浦)が住む長野を目指してゐた。長野は幸美の故郷でもあつた。長野まで乗せて行つて貰ひ、幸美は昔の恋人、山崎静男(那波)の営む民宿「静真」に転がり込む。次の日、静真を涼子と哲也とが客として訪れる。二人の関係は、哲也の両親からは反対されてゐた。
 竹洞哲也2005年三本目、通算では五作目である。因みに最新作は、東京でも先月封切られたばかりで、勿論未だ関門海峡の遠く東の彼方にある。竹洞哲也、相変らず不発。たとへどんなに薄つぺらくて安つぽくとも、愚直で瑞々しかつた「美少女図鑑 汚された制服」(2004/脚本:小松公典/主演:吉沢明歩)は、所詮ビギナーズ・ラックに過ぎなかつたのか。「美少女図鑑~」は二作目であるが。処女作の「人妻の秘密 覗き覗かれ」(2004/脚本は小松公典と共同/主演:吉沢明歩)は、オーソドックスでありながらも若々しいピンクで好感が持てたが、2005年の三作はどれも半端な映画ばかりで全滅である。若い恋人同士の二人を前にしながら、かつて恋人同士であつたもう若くはない男と女が、“もしも”の未来が有るだの無いだの、ラスト・ダンスがどうだのかうだのと、中身が無いやうで全く無いどうでもいい台詞をちんたらちんたらと捏ね繰り回す。何がラスト・ダンスだ、タコ。仕方の無いかつたるさが垂れ流されるばかりで、勿論エロスが炸裂して、どんなにろくでもない映画であつたとしても元だけは取らせて呉れる訳でもない。雑な物言ひにもなるが、本当にこんな映画、もうどうでもいいんだよ。大蔵に那波隆史なんぞ出すな、映画が閉塞する。さつさと撮影を切り上げて、家に帰つて一杯やる。ことだけを考へた、ルーチンワークの方がまだマシである。半端に志があるだけ、却つて罪が重いとはいへまいか。作家性に凝り固まりながらも最終的には全うな娯楽作品として仕上げるだけの、たとへば山邦紀の冷静なテクニックは、竹洞哲也にも国沢実にも、序に森山茂雄にも、後勿論荒木太郎にも、少なくとも未だ無からう。
 師匠の小川欽也はとりあへず、次は一回竹洞哲也に小松公典と縁を切らせてみてはどうか。

 葉月螢は、チェック・アウトの時間になつても起きて来ない、矢鱈と寝相の悪い客・米沢亜希。大胆不敵にも、亜希の濡れ場は妄想オチのみで片付ける。


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 「援交性態ルポ 乱れた性欲」(2005/製作:小川企画プロダクション/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/プロデューサー:小川欽也/撮影:創優和/照明:松岡洋治/助監督:山口大輔/監督助手:絹張寛征・山川環/撮影助手:原伸也/照明助手:吉田雄三/音楽:與語一平・大野慎矢/タイトル:たまこタイトル/協力:加藤映像工房・湯川タケシ/出演:冬月恋・倖田李梨・華沢レモン・朝比奈ひよこ・横須賀正一・松浦祐也・内山太郎・松田正信・ヒョウドウミキヒロ・サーモン鮭山・柳東史・なかみつせいじ)。出演者中、柳東史となかみつせいじは本篇クレジットのみ。
 渋谷の街に生きる少女の生態を取材するルポライターの長田亜由美(倖田李梨>田舎から出て来たばかりの村上ゆうのお母さん、のやうな女>>判んねえよ)は、高校中退後家を出、援交で日銭を稼ぎながらあちらこちらとしてゐる二宮明子(冬月)と出会ふ。少女達の口からしばしば語られる言葉、「何となく」。彼女達は、殆ど何も考へてゐないやうに見えた。働きもしない彼氏から暴力を受けても、薬で眠らされた挙句に輪姦されたとしても、少女達は深く受け止めようとはしない。亜由美はその、「何となく」の正体を探らうとする、ざつとさういふ物語である。
 居酒屋で食事を摂る亜由美―少女達からは『アユ』と呼ばれる―と明子に、後方の席からリーマン二人連れがモーションを送る。“何となく”の正体が知りたいんでせう、と明子に引き摺られるままに、亜由美は二対二の援交をする羽目になつてしまふ。明子は沢野仁志(サーモン)と、亜由美は芦川太郎(ヒョウドウ)と寝る。翌朝、明子は亜由美に尋ねる。何となくの正体は見付かつたのか、と。正体が無いのが正体、そんなところかな、と亜由美は答へる。明子がセックスの対価に、現金の他に沢野から買つて貰つた携帯に、その時実家から連絡が入る。一旦実家に戻ることにした明子は、亜由美と別れる。その時以来、二度と亜由美は明子と出会ふことはなかつた・・・さういふ一篇である。
 一言で片付けてみると、何ともない映画である。現実を消化する体力も真実に詰め寄る覚悟にも欠ける、中途半端なこと極まりないストレートな凡作と首を横に振らざるを得ない。家出少女役―少女?―役の冬月恋はまだしもさて措き、一撮みの論理も感じさせない倖田李梨の心許なさが壊滅的。大人の傍観者が子供と一緒にプラプラするだけでは、物語が初めから成立しない。ヌルい国映映画ならまだしも、大蔵でかういふ生半可な映画を撮るのは大いに頂けない。「ああ、暑いわあ」、だとか軽く悶えながら年増女がブラウスのボタンをひとつづつ外しては若い色男―まあ大抵は竹本泰志―を誘惑する、十年なんて軽く通り越した二十年一日、三十年一日の化石王道ピンクの方がまだしもマシであらう。中身が無い上にエロくもない、断罪する、一欠片の値打ちもあるまい。そもそも小川欽也も、どうしてかういふ半端な映画を黙つて作らせておくのか、ちやんとプロデューサーとして機能して欲しい。因みに小川欽也とは、未だにこの期に「ああ、暑いわあ」、だとか軽く悶えながら年増女がブラウスのボタンをひとつづつ外しては概ね竹本泰志演ずる若い色男を誘惑する映画を、堂々と新作として撮り続ける現役映画監督である。因みに小川和久も同一人物、名義の使ひ分けの由は不明。

 「ニャー♪」、とギャルを好演する華沢レモンは例によつてナイス・アクト。この人、かう見えて本当に芸達者な女優さんだ。最近俄に華沢株急上昇中、特にルックスとして、好きなタイプであるといふ訳では別にないのだが。汁男(断じて汁男優には非ず)として登場のなかみつせいじは、現場直行直帰で手際良く撮れば拘束時間なんぞ時間といふ程にも満たないであらうが、これで果たしてギャランティーは―どれだけ―発生してゐるのであらうか。
 画面手前のカウンター席に座る亜由美と明子に、奥の座敷から沢野と芦川が頻りに目線を投げかけてはモーションを送る件。サーモン鮭山は兎も角ヒョウドウミキヒロ(未来洋とはさう読むのか)は本域でオーラの微塵も無い男につき、初めは本当にタダの素人客が見切れてゐるだけなのかと思つた。
 竹洞哲也&小松公典のコンビは、「美少女図鑑 汚された制服」(2004)の頃は愚直でも全力で美しい映画を撮つてゐたのに、猛省して心を入れ替へて頂きたい。

 以下は地元駅前にて再見を果たした上での付記< リアルタイム時の感想を改める要は特には認めなかつたが、クレジットに加へ妙に潤沢な配役を補足する。ガングロの華沢レモンは、明子のギャル友達・伊東温子。明子が亜由美に語るエピソード中に登場する朝比奈ひよこは、家出中に薬を盛られ大学生に輪姦された丸山愛奈。内山太郎と松田正信が、愛奈を陵辱する不良大学生の藤堂孝司と森田勇三。横須賀正一は、クラブで出会つた明子に中出しする宮本健吾。後にデリヘル嬢となつた温子の客として再登場した際には、ブルータルなマゾヒストぶりも披露する。松浦祐也は、温子の暴力彼氏・金村一。華沢レモンと松浦祐也の濡れ場に止まらぬ豊潤な絡みは、今作中僅かに豊かに見させる。柳東史は、瞬間的な一度だけなら家出体験を持つ亜由美を、その際に抱いた淫行男。オーラス、変らない渋谷の日々に於いて、性懲りもなくホテル街に戯れる愛奈の相方は湯川タケシ。


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 「痴情スチュワーデス 黒タイツの太股」(1998『人妻スチュワーデス 制服昇天』の2005年旧作改題版/製作:ネクストワン/提供:Xces Film/監督・脚本:瀧島弘義/企画:稲山悌二/プロデューサー:秋山兼定/撮影:林誠/照明:多摩三郎/編集:冨田伸子/音楽:斉藤慎一/助監督:日高典明/現場応援:久万真路、他一名/協力:日活撮影所/出演:川村千里・吉行由実・篠原さゆり・根本義久・森羅万象・野上正義、他)。
 エクセスに作品を提供する製作プロダクションの中にあつて、他とは一線を画すカッコいい映画と、多少画作りがソリッドなくらゐで御多分に洩れぬエロ映画とを大体交互に送り出して来るネクストワンの、過去旧題時に一度観た記憶も鮮烈に残る一作、それはそれとして。因みに忘れられた奇跡の傑作、「一度はしたい兄貴の嫁さん」(1997/監督:久万真路/脚本:金田敦/助監督:瀧島弘義/音楽:村山竜二/主演:彩乃まこと)も、ネクストワン作品である。
 この映画、カッコいい映画であることは確かにカッコいいのだが、非常に扱ふに難い映画でもある。あれこれ工夫する実力以前に今は全く気力が伴はないゆゑ、爽やかに開き直つて今回は完伏字で処理する。もしも諸賢の最寄の小屋に今作がやつて来てゐたならば、まづは小屋に足をお運び頂きたい。
 (ここから伏字)<空港を後にする、一人のパイロットと二人のスチュワーデス。俊二(森羅)と結婚する、涼子(川村)にとつては最後のフライトとなる。里美(篠原)から花束を受け取つた、涼子はフと立ち止まる。空への余韻を感じてゐるのかと、二人は先に行く。照り付ける太陽の下、涼子は眩暈を覚え、淫靡に股間に指を這はす。
 涼子と俊二との結婚生活は、決して幸せなものではなかつた。空を飛べぬ非充足感が涼子を蝕み、俊二とは擦れ違つた。加へて、俊二が起こした交通事故をネタに脅迫も受けてゐた。金の催促に、遂に流れ者の晃(根本)と怜(吉行)が家にまでやつて来る。流れて行く晃と怜との後を追ひ、涼子は不意に家を出る。
 晃と怜は、実は当たり屋であつた。偶々当たつた車に乗つてゐた刑事(他数名の一人、残りは被害者役)を涼子がブロックで殴り倒し難を逃れたことから、>三人の地獄の逃避行がスタートする。
 この、中盤を支配する地獄の逃避行がカッコ良く撮られてある。マトモに金をかけられない分決定力のある画こそ押さへられてはゐないものの、それでも精一杯あちらこちらにロケも張り、十二分に健闘してゐる。決して逃れ得ない閉塞の中を、三人はそれでも懸命に、そして粋に逃げる。たとへそれが束の間の、ひとふざけに過ぎなかつたとしても。
 (再び伏字)<やさぐれた山の駐在・シンさん(野上)に、拳銃で脅され涼子と怜は犯される。解放されると怜はさて措き、晃は涼子に駆け寄る。涼子と晃とが近付きつつあることを悟つた怜は、悪ぶるのにも疲れた、と二人と別れる。涼子と晃の、ふたりぼつちの逃避行は続く。
 涼子が当たつた高級車に乗つてゐたのは、何と俊二と里美であつた、二人は浮気してゐた。涼子と晃は二人をこつ酷く陵辱し、更に逃げる。
 行く当てもなく、涼子と晃はひたすら逃げる。不意に二人は、空も飛べさうな気分になる。二人は飛ぶ。も、何処だかの海岸に打ち上げられる。仕方なく、ホテホテと二人は又歩き始め・・・・・たところでカットが変ると、冒頭の、股間を弄るスチュワーデスの制服の涼子。
 ここまでの一切は、全て一瞬の白昼夢であつたのだ。先を行く二人を、気を取り直して涼子は追ふ。うわあ、何と強力な夢オチなのだ。ここまで鮮やかだと、最早夢オチ>かよと文句をつける方が野暮だといふやうな気すらして来る。
 といふのが、“扱ふに難い映画”であるといふことと、記憶に残る一作ではあるが“それはそれとして”、といふ次第である。

 川村千里、吉行由実、篠原さゆり。これだけ美人が揃ふと映画は強い。男優陣も、根本義久(=森士林)の芝居には多少軽さと甘さが目立ちもするが、男前ぶりには何ら問題ない。森羅万象と野上正義の残る二人には、初めから何もいふことはなからう、強力な布陣である。


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 「ロリ色の誘惑 させたがり」(2005/製作・配給:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vパラダイス/監督:高原秀和/脚本:永元絵里子/原題:『せつなのせつな』/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・臼井一郎/音楽:野島健太郎/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:伊藤一平/録音:cinema sound works株式会社/現像:東映ラボ・テック/撮影助手:橋本彩子・松川聡/撮影応援:田中康文/監督助手:泉知良・佐藤正晃/制作応援:永井卓爾・江利川深夜・三木明子/美術協力:毛原大樹/タイミング:安斎公一/タイトル:道川昭/協力:渡邊元嗣・加藤義一・竹洞哲也・石川二郎・大西裕。佐々木靖之・吉岡睦雄・小川隆史・アルゴピクチャーズ株式会社・有限会社アシスト・有限会社ライトブレーン/出演:綾瀬つむぎ・合沢萌・奈津子・村松恭子・荒川仁彦・那波隆史・小林でび・太田美乃理・森囿麻衣子・福原彰・今岡信治・女池充・榎本敏郎・森元修一・清水雅美・西河文恵・伊藤了子・高橋亜矢・下玉利昌子・原田明日香・高橋里佳・林かんな)。
 開巻、夜道をストーカー男・加藤勇次(小林)に追はれる月島せつな(綾瀬)のモノローグ。

>人は なんで 歩き続けるのだらう? 誰に向かつて? 何処に向かつて
>人は なんで 走り続けるのだらう? 何から逃れて? 何を求めて
>私は なんで 走つてゐるのだらう?

 高原秀和、相も変らず。“生まれ変るまで決して抜けることはないであらう青臭さ”といふのは、手前味噌だが確かだつた。脚本を他に求めたとはいへ、蛙のやうに這ひ蹲らせたり、スーパーマンのやうに腰に手を当てさせてみたりと、観てゐて苦笑に顔を歪めるほかない奇妙なポーズを女優に取らせるのを淫らに好む悪癖も、「制服美少女 先生あたしを抱いて」(2004)と全く変らない。これが本篇でなく、Vシネともなると肩の力が抜けた風に瑞々しいものを撮るやうにも見えたのは(『隣のお姉さん 感じる肉体』/同年)、単なる気の迷ひに過ぎなかつたのであらうか。
 せつなは、友人の五十嵐ゆりえ(奈津子)とともに長倉毅(那波)の健康食品会社で働いてゐた。その、路上販売の件がまた酷い、劣るとも勝らず酷い。パンダさんの着ぐるみのせつな、ゆりえはクマさん。長倉は大根・・・・大根?確かに大根だけど。何が、あるいは誰が。
 パンダさん:「パンダのウンチはいい匂ひ♪」
 クマさん :「色は笹の葉、香りはサトウキビ☆」
 この合間合間に長倉が、「ボク大根くん!」・・・・・あんぐりと開いた口が裂けさうだ。衣川仲人と森田一人に、臼井一郎。三人も名前を連ねたプロデューサーは、全員只のお飾りか?ちやんと機能せんか。このやうな、牧歌以前の茶番を放置してゐては詰まらん。しばしば垂れ流されるかういふ惰弱こそが、ピンク映画最大の弱点のひとつにさうゐない。
 案の定といふか何といふか、健康食品は全く売れず、せつなとゆりえの給料も滞る。台本が悪い、とゆりえが着ぐるみ寸劇への不満を口にすると、長倉は「台本は俺が書いてんだ、俺の台本に文句あんのか!?」。

 あるよ   >永元絵里子、と高原秀和

 配役残り荒川仁彦はせつなの彼氏・竹内純一、合沢萌は純一の元カノ・原田あい子。二人は同じ雀荘で働いてをり、関係も持つ。ゆりえには濡れ場がないゆゑ、要はこの映画、女優部は二人しか脱がない。村松恭子はせつなの母親・戸村妙子、貴女は脱がなくて結構。
 雀荘要員で監督、女優その他ピンク関係者のカメオが不自然なほど多数。その内、画面手前で半分だけ顔が見切れながらタバコを吸つてゐる今岡信治には、台詞もそこそこ与へられる、せつな幼少時を演じる子役は不明。
 映画の主題は、一応はせつなの心の変化、もしくは成長。妙子から、せつなが未だ幼い頃に離婚してゐた父親が、別の女と三度目の結婚をする旨を聞き、せつなの心境に変化が生じる。自分を圧し殺し、おとなしくていい娘を演じ続けて来た自分は果たしてこのまゝでいいのか。最終的に、せつなは男達をグーで威勢よく殴り飛ばし蹴り倒すと、「変らなくちやいけないことに気付けよ!!」と叫ぶ。一言で、この映画に関する結論を述べる。変らにやならんのはアンタだ   >高原秀和
 とまあ、要は始末に終へない映画ではあれ、そんなこんなもこの際さて措き、主演の綾瀬つむぎは良かつた。後藤真希と麻生久美子を足して二で割つたやうな―何と底の浅い男なのだ>小生―キリッとしながら同時に女性的な柔らかさも併せ持つ顔立ちに、手足はスラリと長く、ゴムマリのやうに大きなオッパイ。だから、ポスターはもう少しキチンと撮つてあげればいいのに。ピンク映画のポスターというのは、女優を何故か全速後進して、不細工に撮る例が散見される、とかいふ稀有なカテゴリーである。新東宝のポスターは、一般的には大蔵・エクセスと比べてマシな方ではあるが、それにしても今作のポスターは、映画を観た後となつてはまるで別人かと見紛ふ出来栄えの代物である。綾瀬つむぎ、今度はマトモなピンクで観たいのと同時に、こんな彼女が欲しいなあ・・・・シャリバンが赤射するよりも早くデスれ   >俺


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 「隣のお姉さん 感じる肉体」(2004/製作:レジェンド・ピクチャーズ/監督:高原秀和/脚本:吉田由衣子/プロデューサー:江尻健司/撮影:小山田勝治/出演:佐々木日記・涼・本橋由香・柳之内たくま・佐藤幹雄・荒川仁彦・広世克則)。少し目を離してゐた隙に、佐々木日記はすつかりお姉さん(ユメカ)に似て来た。
 由貴(佐々木)が、部屋に彼氏(荒川)を招く。テーブルの上には、食べ切れない程の沢山の料理、やがて二人はセックスを始める。薄い壁を通して、隣室に住む光二(柳之内)はその模様に耳を傾ける。由貴は、部屋に上司(広世)や元カレ(佐藤)も招いてはセックスする、光二はそれも聞いてゐる。ある夜、由貴が元カレと歩いてゐると、そこに元カレの今カノ(本橋)が現れ、俄かに修羅場に。光二が、偶々そこに通りがかつて巻き込まれる。朝に夕に由貴と顔を合はせる光二はお隣に、すつかり声は洩れてしまつてゐることを伝へる。光二の部屋に、女(涼)がやつて来る、女は光二に惚れてゐた。が、光二はどうしても由貴のことが気になつた。セックスするものの、結局光二は女には付き合へないと告げる。今度は由貴が、隣室からその始終を聞いてゐた。由貴は彼氏からプロポーズされる。未だその気はない、といふかよく判らない由貴は戸惑ふ。光二は由貴に尋ねてみる、彼氏が居るのにどうして他の男とも寝るのかと。由貴は、彼氏のことは好きだ、元カレのことも好きだ、上司のことも好きだ。でも、彼氏のことも、元カレも上司も好きではない。結婚もしたいし子供も欲しくない訳ではないが、由貴には、好きだといふことがよく判らない。
 上司が、由貴に使はうとジョイトイを買つて来た。由貴は、途中で気分が乗らなくなり、上司を帰す。相変らず、由貴の部屋には元カレが転がり込んでゐる。特にすることもなく、腹も減つてゐないからとセックスする。由貴は、元カレとはもうセックスすることをやめようと思ふ。元カレを帰さうと玄関まで送り出しかけたところ、彼氏がケーキを買つて訪ねて来る。三人で話し合ふことを提案し、彼氏は由貴に別れを告げる。結局、何とはないままに由貴と光二とは付き合ふことになる。付き合ひ始める前に、由貴は殴らせて呉れ、と光二をグーで殴る。
 かういふ、何となくダラダラした物語がダラダラしたまま展開してダラダラしたまま終つて行く、その割には妙に高い緊張度を保つたまま最後まで見させてしまふ、不思議な一篇であつた。今岡信治の作品のやうな、とでもいへば少しは私がこのVシネに感じた肌触りも伝はるであらうか。一体誰が撮つたのだらうと思つてゐたら、驚くなかれ―驚いてゐるのは俺だけか―高原秀和であつた。
 高原秀和といへば、十八年ぶりのピンク復帰作「制服美少女 先生あたしを抱いて」(2004)では気負ひ余つたのかすつかり仕出かしてしまつたことも、個人的には記憶に新しい。少々調べてみたところ、「制服美少女~」の封切りと今作のリリースとは、殆ど同時期にある。ほぼ同時期に前後して撮つてゐた、と思つて概ね間違ひあるまい。脚本を他に迎へ、本篇ではなくしてVシネだといふことで肩の力を抜いて撮らせてみたならば、斯様に瑞々しいものが依然撮れる、とでもいつたところなのであらうか。さうであるならば、興味深い一作ともいへる。

 ただひとつだけ個人的に残念なのは、元カレの今カノ役の本橋由香。メガネで背が高く、個人的にはホームランコースのド真ん中であるのだが、残念ながら出番は夜の公園で痴話喧嘩を繰り広げる場面のみで、濡れ場は見られなかつた、見たかつたのに   >ストレートにも程がある


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制服美少女 先生あたしを抱いて」(2004/製作:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vシアター/配給:新東宝映画/脚本・監督:高原秀和/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・増子恭一/撮影・照明:小山田勝治/音楽:野島健太郎/録音:福島音響/編集:酒井正次/助監督・坂本礼・永井卓爾・小林智・山鹿孝起/撮影助手:佐藤治・赤池登志貴・花村也寸志・藤田朋則/脚本協力:住友路代・大竹朝子/タイトル:道川昭/現像:東映ラボ・テック/劇中歌:ドレッドノート 『どうすんだ?』・『国破れて賛歌あり』 作詞:仲野茂 作曲:ドレッドノート/協力:日笠宣子・阿部勉・望月六郎・金田敬・松岡邦彦・上野俊哉・今岡信治・田尻裕司・榎本敏郎・女池充・堀禎一・工藤雅典・鎌田義孝・城定秀夫・古澤健・川瀬陽太・大西裕・松本唯史・伊藤一平・岩越留美・佐々木瑞之・田山雅也・竹原健志・亜無亜危異親衛隊・東京想舎・ナリオ・ゴロー《ロリータ18号》・石坂マサヨ《ロリータ18号》・上村結子・遠藤健一・直井俊哉・中島崇・氏原大・大原貞治・佐藤清隆・田中深雪・伊藤千鶴・佐藤良洋・森田隆文・堀部道将・飯野千佳代・吉見麻美・舟渡友海・出掘良一・渋谷直樹・小松健祐・石堂哲也・高谷光太郎・石毛裕一・小林茂志・岩佐義孝・柳沢康太・岡部哲也・花川ひとみ・木村栄理子・神尾知哉・島塚通子・宮崎涼子・濱野貴之・川田雅子・谷岡貴雄・山本貴士・山本龍・久保田綾子・竹本直美・篠原恵梨・高橋梨沙・橋本直子・鈴木友佳・熊谷睦子/出演:蒼井そら・那波隆史・坂町千代子・小林智・涼樹れん/ドレッドノート:仲野茂・マサ・サモン・ハロー)。出演者中涼樹れんが、現:青山えりな。青山えりなは『PG』誌主催のピンク映画ベストテンに於いて、2006年に新人女優賞を受賞してゐる。ところで涼樹れんのピンク初陣はといふと今作を更に一年遡る、堀禎一の「SEX配達人 をんな届けます」(脚本:奥津正人)であつたりもする。
 国映ではあれ若手ではない高原秀和の、十八年ぶりのピンク復帰作。加へて、人気AV女優・蒼井そらの映画初主演作であるが、初出演作ではない。因みに初出演作は、又野誠治にとつてはラスト・バトルとなる「GUN CRAZY Episode 4:用心棒の鎮魂歌レクイエム」(2003/監督・共同脚本:室賀厚)。
 高校の国語教師・片桐真一(那波)は、出産を間近に控へた妻(実家設定で全く登場せず)がありながら、同僚教師の島崎洋子(メガネが堪らない坂町千代子>知らねえよ)と不倫の仲にある。加へて、教へ子の宮前つむぎ(蒼井)とも関係を持つやうになつた。

>アルモノシカナイ、ないものはない。さうなのかも知れないとは思つてゐても、俺は自分にはちやんと生きたいんだよ。俺は自分に正直に生きたい、俺はお前のことが好きだ
>何が正しいとか何が間違つてるとか、どうしてそんなことを決めなくちやいけないの?それがルールだから、それが決まりだから!?判んないよ。判んない判んない判んない!
>判らなくていい、だから俺が側にゐるんだ。

 恐ろしいことに全篇がそんな調子の生硬な遣り取りで満ち満ちた、生まれ変るまで決して抜けることはなからう青臭さが充満する一作である。それが好きだとか共感出来る、といふ向きには―存在するのか、そんな奇特か奇矯な御仁?―お薦め出来ぬでもないが、個人的にはかういふ勘違ひも甚だしい時代錯誤、あるいは無駄に捏ね繰り回されるばかりの空疎には、どうにもかうにも付き合ひきれない。結果論にもなるが、何処にあるのかよく判らない蒼井そらの魅力をフィルムに焼き付けることにも、決して成功してはゐない。ニャーニャー♪鳴かせて不思議少女にでも演出したつもりなのかも知れないが、さういふ高原秀和のとうに有効期限切れの苔むしたセンスを問ふ以前に、蒼井そらのレス・ザン演技力を全く考慮に入れてゐないのは更に一層致命的。下手に珍奇な所作なりましてや長台詞なんぞ与へてしまつては、そこで映画が詰まれるきらひは如何ともし難い。
 小林智はつむぎの同級生・柳耕介、つむぎから何もないことを指摘され、思ひつきでトライアスロンのアイアンマンレースを目指すやうになる。仲野茂は、アナーキー活動休止中に自身が率ゐてゐたドレッドノート(ドロップアウト注:2004年2月に解散)のヴォーカル・アスとして登場し、同級生もしくは旧知の片桐が観に行く、実際のライブハウスに於けるライブも披露する。ここでの会場のオーディエンス勢が、亜無亜危異親衛隊の皆さんか。俺にはこんなことしか出来ねんだと、「どうすんだ?」と「国敗れて賛歌あり」の、計二曲の二、三十年一日の化石パンクを聴かせる。本当にこの人にはかういふことしか出来ないんだな、といふのはよく判る。そして同じ生暖かい手詰まり感は、顧みれば高原秀和にも感じ取れようか。涼樹れんはドレッドノートのグルーピー・真美子。ライブ終了後、酔つ払つたアスに楽屋で犯されさうになるも、すつかり酒が回り勃たなくなつてゐたゆゑ、未遂に終る。而してその正体は実は・・・・<アスとは生まれ別れの実の娘>(ネタバレにつき伏字)

 以下は再見時の付記(H21/05/22)< 以上の感想は、四年前旧題で今作を観た際のものに、若干の加筆修正を施したものであり、今回は、「蒼井そら 肉欲授業」と三月末に改題された新版を再見したものである。坂町千代子のメガネと、歌は下手だが那波隆史―那波隆史は、本作がピンク映画筆卸―よりは余程達者な仲野茂の演技以外にはまるで拾ひ処にも欠く。といふのが、既に得てゐた感触ではあつたが、四年の歳月を経て観返してみたならば、何事か新たに発見する点、又は全く感想も変るやも知れない。などと思ひもしたものの、矢張りといふか何といふか、清々しいほどに一切評価を改める要を認めなかつた。それはそれで仕方がないとしても、今回新題タイトル・インのあまりにものぞんざいさには、あれはもう少し何とかしてやれよとも思ふ。開巻から、止めを刺してどうする。尤も蒼井そらの名前を、新題に際し前面に打ち出した点はマーケティングとして買へようが。


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 「高校教師と継母 ‐濡れ場の急所‐」(1997『義母と高校教師 息子の眼の前で』の2005か2006年旧作改題版/製作:フィルムハウス/提供:Xces Film/監督:大門通/脚本:有馬仟世/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:佐藤文男/照明:清水康利/編集:金子尚樹/助監督:羽生研司/出演:藤崎加奈子・青木こずえ・麻生みゅう・下川オサム・吉田祐健・白都翔一)。のつけから混乱してゐるのは、新日本映像(エクセス母体)の公式サイトによると、今旧作改題の公開日は昨年の12/7となつてゐる。一方、PG誌のデータからは今年の1/6。どちらが正しいのか、最早あちこち手を尽くして調べてみようといふ気にもなれない。
 高校三年生の吉岡賢(下川)、いきなり話を反らすが下川オサムといふ人は、近年全く見ないが男前で、個人的には佐藤幹雄などよりは余程重きも置きたい役者ではあるのだが、とりあへず、その前線の大きく後退した前髪は、とても高校生には見えない。話を戻すと、母親は、早くに病死してゐた。父・幸司(吉田)は若い後妻・弥生(藤崎)を貰ひ、賢は夜な夜なの父と義母の情事に気を取られ、勉強どころではなかつた。今夜も両親の寝室に忍び寄り、くすねた弥生の下着で自慰に耽りながら夫婦生活を覗いてゐた。義母は兎も角、実の親爺のセックス見たいか?
 一方弥生は、賢の部屋からカピカピに汚された自分の下着を発見し、義理の息子が自らに向ける邪な視線に気付く。幸司の出張中、入浴中に賢の視線を察した弥生は、何故か浴室に持ち込んでゐたバイブでオナニーを披露、賢を誘惑する。そんな折、賢の成績に関して相談する為、賢の担任・梅沢正(白都)が家庭訪問に訪れる。
 一刀両断に断じてしまふと、最早まともな一本の物語としての体すら為してゐない一作。家庭訪問に訪れた梅沢を、息子の為だとか何だとか誘惑し、弥生は適当に身を任せる。今度はその情事をダシに、その夜弥生は賢にも抱かれる。弥生は賢に、次の日もう一度梅沢に家に来て呉れるやう頼むことを求める。再び梅沢が家庭訪問に訪れ、賢はクロスカウンターで、梅沢の婚約者で同僚教師の森田美子(青木)も家に招く。梅沢と弥生の一戦を見せつけ、驚愕する美子を賢は強引に犯す。単なる義母ものが、いはゆる“魔少年”ものにシフトして行くのか。と、見せかけて、さあて、本格的に映画が壊れて行くのはここからだ。
 当初嫌よ嫌よといつてゐた筈が、美子はなし崩し的に年上の女然として快楽に溺れて行く。制止するも果ててしまつた賢に対し、「未だつていつたのにい・・・」。かういつた台詞が、確かに青木こずえ一流ではあるが。早漏も棚に上げ、賢は再度魔少年ぶる。美子を、梅沢と弥生が事の余韻に浸る居間へと引き摺り出す。当然度肝を抜かれる梅沢、一方美子は、つい先刻まで「未だつていつたのにい・・・」とか何とか、「淫らなお姉さんは好きですか?」してゐた癖に、急に手の平を返したかのやうによよと梅沢に泣き崩れる。呆れ果てかけたのも本当に束の間、賢も賢で、「ママあん」とでも泣き付かんばかりに弥生にむしやぶり付き、乳繰り合ひ始める。
 一体何を描きたいのか、観客に何を見せたいのか。何を考へたら、といふかどんなに何も考へてゐなくとも、斯様に木端微塵な物語は紡げまい。後段、賢の同級生・宮古明美(麻生)の援交相手のパパが、幸司であつたりする辺りで強引に映画を締めてゐるつもりなのかも知れないが、既に覆水が盆には返らない。
 とか何とかいひながらも、今作中火に油を注いで最弱のウイーク・ポイントは、出鱈目な脚本でもヤル気の全く感じられない演出でもなく、主演の藤崎加奈子。首から下はキレイなしつかりとした体をしてゐるのだが、まあ見事に顔の曲がつた女だ。元々淡白な濡れ場を、なほのこと楽しませて呉れない。さうなると、最早文字通り万事休す。ピンクとはいへ最後の希望の翼も捥がれてしまつては、映画は完全に箸にも棒にもかからない。


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 「四十路のをばさん 狂ひ咲き」(1995『をばさんと熟女 -たらし込め!-』の2003年旧作改題版/製作・企画:フィルムハウス/提供:Xces Film/監督:大門通/脚本:有馬仟世/プロデューサー:伍代俊介/撮影:原田清一/照明:斉藤久晃/編集:酒井正次/音楽:伊東義行/助監督:上田良津/撮影助手:橋本彩子/監督助手:加藤義一/出演:青木ゆきの・大橋和美・栞野ありな・大場政則・久須美欽一・平賀勘一)。助監督が上田良津で、更にその下に加藤義一がついてゐるといふのが興味深い。上田良津は、なかなかにソリッドなピンクを撮つてゐたやうな記憶がおぼろげにはあるのだが、一体何処に行つてしまはれたのであらうか。
 開巻、偽らざる看板に打ちのめされる。かずみ(青木)は光次(大場)との事が済むと、美味しいものでも食べて精をつけろと小遣ひを渡す。光次は、かずみがシャワーに消えたのを見図らつて金庫の中から更に金を抜く。カットの変り際に細かく配られた堅実な配慮は買へるが、どうにもガチ四十路の青木ゆきのには何処に、あるいはどうやつて喰ひついたものか皆目見当もつかない。小生はまだまだ、修行が足りぬといふことか。その修行は積むべきなのか積まなくとも構はないのかは、よく判らないが。
 かずみはパブを経営してゐた、従業員はバーテンの光次に、若いアルバイトのあけみ(栞野)。首から上は十人並ながら若々しく美しい栞野ありなの肢体に、辛うじて映画が救はれもした感が強い。店にもう一人、新しい女が現れる。若い頃にかずみと働いてゐたが、寿引退。したものの、離婚を期に夜の街に出戻つて来たあけみ(大橋)である。店に入るなりなかなかいい店ぢやない、とタメ口を叩くあけみに対し、かずみは「店では“ママ”と呼びなさい」と釘を刺す。劇映画としての基本フレームは実はしつかりとしてゐるのだが、全てを忘れさせるのを通り越し木端微塵にしてしまふのは、青木ゆきのを更に上回るのだか下回るのだか、大橋和美の邪悪な破壊力。何でまたこのオバハンはこのオバハンで、選りにも選つて若い頃のいかりや長介にソックリなんだ・・・・、しかも致死量に達さんばかりの勢ひの厚化粧。出て来るだけで銀幕には戦慄が走り、濡れ場ともなると正視に耐へぬ阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される。決して太つてゐるといふ訳ではないのだが、下腹に見たこともない、正確には見たくもない訳の判らない肉の付き方をしてゐる。立花満子にも匹敵する、商品化された性の最終兵器である。もしも仮に万が一、人間が、造物主に自らの姿に似せて創り出されたものだとするならば、我々はきつと、その意思からは逸脱してゐるに違ひない。
 最も禍々しいシークエンスは、ひろみは、あけみのお喋りから光次がかずみの男であることを知る。ならばと化け猫、もとい泥棒猫の血が騒いだひろみは、閉店後、光次と二人きりの店内。掃除する光次の前にいきなり裸で現れると、わざとらしく恥らつてみせながら「抱いて・・・」。お願ひしますお願ひします、もう許して下さい。何故に、もしくは何を映画に乞はねばならぬのだ。稀に見る、ショッキングであつた。光次も光次だ、喜んで抱くな。そこは普通の人間であるならば、卒倒でもするしかないところである。
 久須美欽一は大手ゼネコン(推定)の高村。平賀勘一は、高村の会社が神戸で提携する地元工務店の石山。何気に実は起承転結を手堅く纏め上げつつのラストの一戦、かずみの店の店内では、かずみ×高村、ひろみ×石山のピンサロも裸足で逃げ出す過剰な本番サービスが展開される。欠片も羨ましくないところは不思議である、といふか、いふまでもない。

 そこで踏み止まると一切話が終つてしまふのであへて四十路ツートップ、正確には四十路最凶タッグにはひとまづ目を瞑ると、といふか目が潰れてさへしてしまひさうなのだが。今作に於いてどうにも弱いのは、光次役の大場政則。若干若いといふだけで、何の変哲もない男である。ここはもう少し色男を連れて来て貰はぬことには、四十路のをばさん二人が若い男を巡つて文字通り醜い争ひを繰り広げる、といふプロットにいまひとつの説得力が欠ける。1995年当時、たとへば既に真央はじめ―当時は真央元か―や、あるいは樹かずは実働してゐた筈だ。
 「四十路のをばさん 狂ひ咲き」、確かに、四十路のオバハンが狂ひ咲いてゐる。それ以前に、旧題の「をばさんと熟女」とは何事か、目糞と鼻糞といふことか。とはいへ、これまでは完全に等閑視してゐた大門通が、ベテランの名は伊達ではなく、なかなかに堅実を誇りもすることの発見はあつた。少なくとも、それは確かなひとつの収穫ではある。今後は、もう少し注目してちやんと観て行かう。


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 「色情団地妻 ダブル失神」(2006/製作・配給:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vパラダイス/監督:堀禎一/脚本:尾上史高・堀禎一/企画:朝倉大介/プロデューサー:臼井一郎・衣川仲人・森田一人/音楽:網元順也/撮影:橋本彩子/照明:山本浩資/編集:金子尚樹/録音:中村幸雄/助監督:伊藤一平/監督助手:田辺悠樹/撮影助手:下垣戸純/照明助手:森俊彦/録音助手:梅沢身知子/ネガ編集:小田島悦子・川上ゆき/脚本協力:テリー・天野/スチール:山本千里/タイトル:道川昭/タイミング:安斎公一/編集所:㈲フィルム・クラフト/録音スタジオ:シネ・キャビン/現像所:東映ラボ・テック/協力:サトウトシキ・永井卓爾・大西裕・中川大資・松原龍弥・貝原クリス亮・広瀬寛巳・今岡信治・女池充・坂本礼・石川二郎・田中康文・松葉晃平・福浦竜磨・吉田信一郎・影山祐子・中島裕太・渋谷英毅・村井一帆・柳澤伸代・菅谷英一・江尻健司・飯岡聖英・有限会社アシスト・株式会社石谷ライティングサービス・有限会社不二技術研究所・コダック株式会社・桂スタジオ・I・W・A・JAPANプロレス株式会社/出演:葉月蛍・牛嶋みさを・しゅうま・冴島奈緒・チョコボール向井・安奈とも・しのざきさとみ・桂健太朗・加藤靖久・マメ山田・元井ゆうじ・三浦漣徳・岸勝也・西山秀絋・小澤司・小部卓真・押江健日・飯島大介《友情出演》・マッチョ☆パンプ)。
 清水弓子(葉月)の夫・圭吾(牛嶋)は東洋タイトルにまで挑戦した元プロボクサーで、現在はボクシングジム会長(しのざき)の口利きの下、借金の取立てのやうな仕事をしてゐる。もののなかなか上手くは行かず、家に金を入れない圭吾と、弓子は争ひが絶えなかつた。弓子は、息子・浩太(しゅうま)が幼稚園で遭つてゐるらしきいぢめにも悩んでゐた。ある日圭吾と喧嘩して家を飛び出し、夜の公園で独りタバコを吸ひながら不貞腐れてゐた弓子は、団地の友人・高木涼子(冴島)の不倫相手・向井高志(加藤)から声をかけられる。弓子は、日々の涼子の自慢話から向井が涼子と関係を持つてゐるのを知りつつ、偶さか向井と寝る。
 何処から手を着ければよいものやら判らぬゆゑ、とりあへず現象論レベルでの最たる大罪から、

 冴島奈緒が脱ぎやしねえ。

 ピンク映画で二枚看板に謳はれてゐる女優のうち一人が、脱ぎもしないのはそれは最早詐欺だらう。ナメんなよ、国映。冴島奈緒に関しては寧ろ触れたくすらないのだが、リアルタイム、未だ少年の時分からの私達をときめかせて呉れた冴島奈緒は、もうそこにはゐなかつた、色んな意味で。プロレスラーの夫・誠二(チョコボール)との、着衣のまゝのなんちやつて夫婦生活ならばあり。真似事でありながらの絡みをわざわざ設ける辺りに、後ろめたさが如実に現れてもゐよう。
 とりあへず配役残り安奈ともは、圭吾がフとしたきつかけで仲良くなるAV嬢・あかね。安奈ともの濡れ場だけは、決して悪くない。ちやんとしたピンクで、今後も観たい女優さんではある。とはいへ、圭吾とあかねが出会ふシークエンスといふのがこれまた酷い。ケーキの箱包みを手に建物を出て来た圭吾とあかねが衝突、圭吾は箱包みを落とす。申し訳なささうなあかねに対し、跪いてケーキを確認した圭吾は「まだ、食へるよ」。するといきなりあかねもしやがみ込むとケーキを鷲掴みにし一口食べ、「新しいの、買ひます」。何ぢやそりや。誰もおかしいと思はなかつたのか、単なる奇行である。リアリティーもなければ、ファンタジーたり得てもゐない、専学の卒業制作かよ。ついでに、桃色方面数少ない見せ場となるあかねのAV撮影風景は、開き直つたかのやうな豪快さで、口とアフレコとが合つてゐない。桂健太郎は、あかねの彼氏・貢。長野の地元から、あかねの仕事ぶりを見に上京して来る。あかねと結婚し、実家で花屋を開く予定。ボクシングを過去に齧つてをり、負けたとはいへ東洋に挑戦した圭吾に、真正直なリスペクトを捧げる。
 幼稚園に行くのを渋る浩太を連れ、弓子は幼稚園はサボらせるとして浩太が欲しがるプラレールを買ひに行く。マメ山田は、幼稚園に電話をかけてゐた弓子が目を離した隙に、持つてゐた一升瓶で浩太に怪我をさせてしまふをぢさん。その夜そのことを圭吾に叱責されたところから、弓子は家を飛び出し、公園での向井との出会ひに繋がる。三浦漣徳と元井ゆうじは、あかね撮影現場のAV男優と監督。
 強ひていふならば起承転結の転、辺りで弓子は一家で誠二の試合を観に行くのだが、そこに至るちぐはぐな流れも全く意味不明。涼子の家でお茶しながら、弓子は向井と関係を持つた旨涼子に告白する。さうしたところ、怒りもせずに涼子は弓子にチケットをプレゼントするのである。何が何だか、サッパリ判らない。誠二の試合を見せたいのならばそれはそれで構はないが、話の繋げ方といふのも何かもう少しあるだらう、脚本を一時間で書いたのか?
 プロレスの試合―誠二の対戦相手がマッチョ☆パンプ―自体は、双方プロレスラーにつきそれなりの出来。但し撮影に、二点疑問が残る。ボディ・スラムからのエルボー・ドロップを落とすショットに於いて、カットを割る必要性が全く感じられないのと、リングの上が暗過ぎる。あれでは、後ろの方の客席からは全く見えまい。尤もこの点は、普通に明るくしては、照らし出された客席後方まで埋めないといけなくなるからなのかも。微妙にサマになるレフェリーが、カメオの飯島大介。
 何の躊躇もなく書いてのけるが、ラストが酷い。これはもう、近年稀に見る逆の意味で画期的な酷さである。自爆するつもりでないのだとしたら、気がふれたとでもしか最早思へない。行き詰つた圭吾は、会長から殺しの仕事を請け負ふのを終に決意する。殺す相手といふのは、あかねであつた。圭吾は、祝福する素振りを見せあかねと貢にレストランにて食事を振舞ふ。その後に貢も纏めて始末し、二人の死体を乗せた車を燃やす。帰宅した圭吾は、風呂に入り、湯船の中でカレーを食ふ。その流れで、弓子に尺八も吹かれる。さうかうしてゐると浩太も帰宅、お父さんとお風呂に入ることにした浩太の服を弓子が脱がせ、浩太も風呂場に。ベランダから暖かい陽光が差す、室内のラスト・ショットにエンド・マーク・・・・

 何だこれは。

 人を殺めて来た父親が、さしたる呵責も描かれるでなく、遅れて家に戻つた息子と風呂を浴びて終り。インモラルにもほどがある、商業映画未然云々以前の話だ。唖然としたついでに、マメ山田の件から後にもう一度繰り返される浩太の頭の怪我も、物語の中でどう機能してゐるのだかまるで意味不明。さうかうしてゐると、穴だらけで全く際限もなくなつて来る。
 そんな噴飯を書いた尾上史高―堀禎一とテリー・天野に関してはひとまづ通り過ぎる―は、国映主催の第二回ピンクシナリオ大賞でデビューした素人。デビュー作の「不倫団地 かなしいイロやねん」(2005/監督は矢張り堀禎一)は憚りながら未見であるが、坂本礼の「悶絶ふたまた 流れ出る愛液」(2005)は、全く詰まらなかつた記憶だけはある。守屋文雄といひ、国映はもう少し真面目に映画作りに取り組んで欲しい。それとも、商業、あるいは量産型娯楽映画だと思ふから腹が立つのであつて、自主映画なのだとしたら、自主的に公民館ででも公開してて呉れ。さうすれば、うつかり観ずに済む。
 最後に。冒頭“小林悟監督と高野光投手へ。”と、2001年に死去した小林悟と、2000年に飛び降り自殺した元ヤクルト→ダイエー(現ソフトバンク)の高野光とに、今作を捧げる字幕が登場する。一応押さへておくが、堀禎一は小林組の助監督出身ではある。清水大敬病感染確認、辛気臭くもない。聞いた風な口は、全うな娯楽映画の一本も撮つてから叩きやがれ。今作如きと、最早同じ土俵に上げるのすら憚られるが、今作のやうな商業映画未然と比ぶるならば。御大の司る破壊、小川欽也の繰り出す魔法、新田栄の解き放つ安逸、関根和美の織り成す化石、の方がまだしも一兆倍マシである。縦方向にも横方向にも、何某かの拡がりも有してゐる。箸にも棒にもかゝらない堀禎一には、ツッコミの悦びさへない。改めてふざけんなよ、ファック国映。

 物凄くひよつとするとさういふキャラクター造型のつもりなのかも知れないが、葉月螢は、タバコの吸ひ方知らんぢやろ?冴島奈緒が脱がない埋め合はせのつもりか、しのざきさとみが乳だけなら見せる。撮り方は悪意をも感じさせかねない、一歩転べば露悪的なまでの散々な撮り様ではあつたけれど。


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