<3437>奈良県のレッドデータブックの花たち(64) カシワ(柏) ブナ科
[別名] カシワギ、モチガシワ
[学名] Quercus dentata
[奈良県のカテゴリー] 情報不足種(旧希少種)
[特徴] 山地に生える落葉高木で、高さ15メートル前後。樹皮は灰褐色から黒褐色で、縦に深い割れ目が出来る。葉は長さが10~30センチの倒卵状長楕円形で、先は尖らず、基部はやや耳状に張り出す。縁には波状の大きな鈍鋸歯が見られる。この葉の特徴により同属の他種と判別出来る。葉にはごく短い柄があり、互生する。カシワの葉はブナ科の中では最も大きく、その名はこの葉に飯を炊ぎ盛ったカシキハ(炊葉)がカシワに転訛したと一説にある。また、端午の節句の餅はこの葉で包んで作るので、モチガシワ(餅柏)の別名もある。
雌雄同株で、花期は5~6月。葉の展開と同時に開花し、雄花は新枝の下部の葉腋に長さが10~15センチの細い花序を数条垂れ下げ、黄褐色の小さな花を多数つける。雌花は新枝の上部の葉腋に5~6個つく。堅果の実は長さが2センチほどの卵球形で、線形の鱗片多数に被われた殻斗に包まれ、開花年の秋に熟す。 写真は住塚山のカシワ(左)とカシワの若葉と雄花序(右)。
[分布] 北海道、本州、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国、台湾、南千島、ウスリー地方。
[県内分布] 曽爾村の一カ所。
[記事] 大和地方で野生のカシワが見られるのは稀で、曽爾村の住塚山(1016メートル)の山頂付近の個体しか確認されていない。この個体にしても登山道に沿った限られた場所であるため植栽起源の可能性が捨てきれないとして、奈良県のレッドデータブックでは情報不足種として注視している。
なお、カシワ(柏)は古来より『古事記』、『播磨風土記』、『伊勢物語』などに現われ、これらを見るに、カシワ(柏)の葉は飲食を盛ったり、覆ったりするのに用いられたことがわかる。宮中で饗宴に携わる役人を膳司(かしわでのつかさ)と称するのも、上代にこの葉が神事の食物を盛るために用いられ、その任あったからであると言われる。神を拝むとき両方の掌を合わせ打ち鳴らす柏手はこの掌を合わせた形がカシワ(柏)の葉に似るからとも神前で膳司が用いたことによるからとも言われる。また、拍の誤用という説もある。カシワは『万葉集』の4首にも見える万葉植物である。
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すなわち
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