大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年06月20日 | 植物

<3442> 奈良県のレッドデータブックの花たち(67) カニコウモリ(蟹蝙蝠)                       キク科

               

[別名] カニコウモリソウ

[学名] Parasenecio adenostyloides

[奈良県のカテゴリー]  絶滅危惧種(旧絶滅寸前種)

[特徴] 亜高山帯(寒温帯域)の針葉樹林の林床や林縁などに生える多年草で、群落をつくることが多い。高さは50センチ~1メートル。葉は長さが6~10センチ、幅10~20センチの腎円形で、普通3個が長い柄を有し互生する。縁には不揃いの切れ込みと鋸歯が見られ、この葉がカニの甲羅に似ることによりこの名がある。 花期は8~9月で、茎頂に円錐花序を出し、白色の頭花を多数つける。頭花は3~5個の小花からなり、小花は両性の筒状花で花冠の先が5裂し、花柱が花冠の外に伸び出し、2つに分かれて先が反り返る。総苞は筒状で、総苞片は3個。実は白い冠毛のある蒴果。

[分布] 日本の固有種。本州の近畿地方以北と四国。

[県内分布] 大峰山系の高所。

[記事] 大峯奥駈道より上部の山岳高所で見かけるが、シカの食害が激しく、一時は絶滅寸前にまで減少した。その後、地元の天川村によるシカの捕獲が続けられ、弥山(1895メートル)の山頂周辺では、その効果か、シカ避け防護ネット外においてもカニコウモリの群落が甦り、花が見られるまでになった。結果、絶滅寸前種から絶滅危惧にその危険度が1ランク下げられた。 写真は甦ったカニコウモリの花の大群落(左・弥山山頂付近の登山道傍)と花序のアップ(右)。

   過去は振り返れるが

   変えることは出来ない