大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年06月16日 | 写詩・写歌・写俳

<3438> 野鳥百態 (24)  ツバメ

         

    生きものはみんな生きる能力において生きている

    動物だって植物だって肉眼で見えない小さなウイルスだって

    みんな生きる能力においてそれぞれに命を掲げ生きている

    地球という宇宙の一端のバランスされた環境の中において

    生きものはそれぞれに得手と不得手を秘めながら生きている

    お互いにその環境の中において共存しながら

            よしにつけ悪しきにつけ影響し影響されながら

          みんな生きる能力においてそれぞれに生きている

    互いに生の風景の一端にあって存在しながら―――

 朝、二階の窓を開けると、子ツバメが電線にいて、親ツバメが辺りを飛びまわり、賑やかな鳴き声が耳に入って来た。よく見ると電線には六羽の子ツバメがいた。子ツバメのほとんどが親鳥の大きさに成長し、短い距離なら飛ぶことが出来るらしく、ときおり飛んで、また電線に帰って来る。

 親ツバメは子ツバメのその能力を先刻承知のようで、エサを運んで来るが、電線の子ツバメにはほとんど与えず、周りを飛びながら子ツバメが飛んで来るのを誘っている。言わば、これは「見せびらかし作戦」である。子ツバメは勇気を出して電線から飛び立ち、エサを咥えた親ツバメを追い、エサをもらう。これはツバメの子育てのやり方で、子ツバメの特訓と察せられる。ほかの野鳥には見られない子育ての光景である。

 何故ツバメはこのような子育てをするのか。それは空中を飛びながら虫などのエサを捕るツバメの習性から来ているのだろう。親ツバメを追って飛びながらエサをもらう訓練の結果、自分でも空中でエサの虫などを捕ることが出来るようになる。この話は前回のツバメの項で触れたが、何故、ツバメは空中で捕食するのかということになる。思うに、それは他の野鳥に見られない空中で獲物を見つけ、それを素早く捕まえる能力に長けているからだろう。空中には結構虫が飛んでいて、エサに困らない点があげられる。

 巣は泥土と枯草によって作り、ツバメはその巣材を得るときのほかはほとんど地上に降りないらしく、水を飲むのも池や沼の上を飛びながら瞬時に飲む。つまり、休むとき以外は四六時中飛びまわっている。そして、飛びながら捕食している。という次第であるが、その敏捷な飛翔を可能にしているのはスリムな体形と体全体の仕組みによるところと見える。

 鳥の嘴は食べ物によって異なるところが見られる。例えば、水の中の魚などをエサにしているサギやカワセミ、泥土の中のカニなどをエサにしているシギなどは細長く鋭い嘴を持っている。また、ネズミなどをエサにする肉食のタカ類やモズのような鳥は鋭く内側に曲がった嘴を持っている。これは捕えた獲物を裂いて食べるのに都合のよい嘴と言える。木の実を食べる小鳥の中でも堅い殻を割って食べるイカルのようなアトリ科の鳥は太くて丈夫な嘴を持っている。このように見てみると、嘴の形で凡そその鳥の食性がわかる。

 そこで、飛びながら空中の虫などを捕食するツバメであるが、嘴は小さく、鋭さにも欠け、特徴が見受けられない。だが、口は案外大きく、親ツバメではなかなか見られないが、成長した子ツバメではときに観察出来る。写真にして見ると、頭の半分ほどの大きさに口が開く。その口で大小さまざまな空中の虫たちを飛びながら瞬時に捕まえる。目もよく利くのに違いない。それにいま一つ、細身の体に大きな翼と二股に分かれたツバメ特有の尾翼(燕尾翼)を有していることである。この燕尾翼はツバメ特有のものであるという。

 飛行機の尾翼は左右上下に翼を動かし進む方向を決める。ツバメの二股になっている燕尾翼は自在に動いて飛ぶ方向を瞬時に決めることが出来るようになっているのだろう。ツバメ返しという言葉が生まれたように瞬時に方向を変える技もこのニ股の燕尾翼の仕組みによって可能になっているのに違いない。とにかく、瞬時に獲物が捕れる敏捷な仕組みがツバメには備わっている。主翼の能力の高いことはもちろんのことである。

 ところで、幼鳥には二股の燕尾翼が十分に生え出していない。ということで、あまり自在には飛べず、エサを与えるのに親ツバメは加減しているようである。そのうち子ツバメは成長して燕尾翼を自在に扱えるようになると一人前になり、ツバメ返しも出来、自在に空中の獲物も捕らえられるようになる。

 ツバメは益鳥として大事にされて来たが、これは木造家屋に被害をもたらすシロアリやイネに害虫であるウンカなどを捕食するためで、これにしても、とにかくツバメは飛びながらこれらの虫を捕まえて食べる。その能力において。 写真は大きく口を開けて飛び立たんとする子ツバメ。すでに立派な翼を持っているが、尾羽に二股の燕尾翼がまだ形成されていないのがわかる。