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観光都市ウィーンを支えるエコロジー

『人と町を元気にする方法』より 「世界でもっとも暮らしやすい都市」の理由

オーストリアの首都ウィーンは、決してその美しい景観や文化だけが魅力なのではありません。

確かにウィーンは、モーツァルトやベートーヴェンなど数多くの音楽家を輩出した「音楽の都」として名高く、年間を通じてさまざまなコンサートが開催され、オペラからポップスまであらゆるジャンルの音楽を楽しむことができます。またウィーンは、オーストリアが誇る偉大な画家クリムトの出身地であり、現在、一〇〇以上もの美術館や博物館があり、ホーフブルク宮殿などハプスブルク家ゆかりの名所も多数存在する、歴史と文化の薫る美しい都市、というイメージを多くの方が持っておられることでしょう。

確かにそれは、ウィーンが誇る優れた一面ではあります。しかし、そうした美しい街並みや景観を縁の下で支えているのがエコロジーであることは、あまり知られてはいません。

二〇〇九年から一一年まで、ウィーンが三年連続で「世界生活環境調査」(調査/アメリカの国際コンサルティング会社マザー)の第一位となってきたことを、皆さんはご存知でしょうか。治安・政治・環境などのさまざまな面を総合して、ウィーンは世界でもっとも暮らしやすい都市と認定されたのです。

ウィーンはまた、「スマートシティ」でのヨーロッパ第一位(世界では第二位)にもなっています。スマートシティとは、エネルギーを有効利用し、生活するためのコストも低く、情報ネットワークの整備によって、もっとも効率的で安定的な生活環境を整えた最先端都市のことです。

なぜウィーンは、そのようなステキな都市になったのでしょうか。

その大きな理由の一つに、「エコロジーヘの取り組み」があります。かつて家々には煙突がありましたが、今では、ほとんど見当たりません。かりに煙突があったにせよ、そこからは黒い煙が排出されていません。それは、地域暖房システムが完備され、暖房のために木や石炭を燃やす必要がなくなったからです。また市内中心部への自動車の乗り入れは制限され、公共的な交通システムが整備され、自転車道も完備され、おまけに個人で自転車を持たなくても、行政と広告代理店が共同となって十分な数の「シティバイク(公共自転車)」を用意してくれています。

ウィーンを訪れる人々は、実は、地道にエコロジーに取り組んできた行政と人々によって、美しい空や緑、そして街の景観を心から享受することができているのです。

便利さを優先するあまり、現代社会は、次々と自然や景観を破壊し続けてきました。林立する近代的な高層ビル群や、人々があふれる雑踏も、おしゃれなブランドショップが立ち並ぶ街路も、確かに都市の持つ大きな魅力かもしれません。東京や大阪などの大都市では、かつてのスモッグや河川の汚染などは取り除かれてきました。その行政的な努力には、敬意を払う必要があるでしょう。

しかし、その陰には、貧困があり、犯罪があり、交通事故があり、孤独死があり、人々のつながりの希薄さなどによる精神的な病が蔓延していることも、また事実なのではないでしょうか。美しい近代的な街並みの裏で、人々はまるで人生を量り売りするような仕事に時間を奪われ、他者に対する関心を廃れさせ、精神を犯され、生きる力さえ奪い取られようとしてきているのです。

自然にあふれるアフリカのある場所から東京にやって来た若者の一人は、「歩道が動く」ことに驚き、夜景の輝きに見ほれ、山積みされたような電化製品の多さにびっくりしたといいます。しかし、その大都会東京を支える膨大な電力エネルギーは、結局は東北などの地方に建てられた原子力発電所や火力発電所によってまかなわれていました。今回の原子力発電所の事故によって、首都圏の計画停電が実施され、私たちは、否応なくその「事実」に気づかされたのです。

私たちは、こうした現代社会の歪みを、どこかで大きく修正する必要がありそうです。何よりもそこに住む市民が自分たちの地域を誇りに思い、幸せを実感できること。そうした市民がいてはじめて、観光客もまた、「居心地がいい」「もう一度訪れたい」と思うようになるのではないでしょうか。

ウィーンでは、行政が中心街へ入ってくる自動車の数を大幅に減らす法律を作り、その大枠の中で、市民たちは公共のものを大切に使う、エコロジーを日々当たり前のように心がける実践をしています。

そこには自分たちの街を自慢に思う、人々の笑顔があります。そうして観光などで訪れる人々にも、そんな街の良さを実感してほしい、と思う実践があります。

そうして市民自らの手で作り上げたエコロジー都市ウィーンは、二〇二一年には年間二一三〇万人もの観光客が宿泊するようになったのです。

日本が、そんなウィーンに学ぶことは、きっと数多くあるはずです。 では、どのような取り組みをしているのか。主要なものを取り上げていきましょう。
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北陸のヨーロッパ型まちづくり・富山市

『実践!田舎力』 より

富山市のシンボルは、路面電車の「富山ライトレール」。スリムで美しいデザインの車体が静かに市内を走っている。

これはドイツの環境都市の先進地フライブルクをほうふっとさせる。フライブルクはヨーロッパにおけるコンパクトシティのモデルでもあり、中心市街地と郊外の住宅地を結ぶライトレールがある。筆者は二〇一〇年にフライブルクに行ったが、まさか富山で、ドイツと同じようなライトレールがみられるとは思わなかった。それもそのはずで富山市は、市長が世界各地に視察に出かけて、フライブルクをはじめとしたヨーロッパの先進地事例を取り込んでいるのだという。

フライブルクは、商業地、商店、市場、文化施設、大学、居住地などを集中させて、暮らしに必要な施設をコンパクトにまとめることで、住みやすい生活空間を創造していくというまちづくりが実践されていた。住んでみたいまちとして評価も高いときいた。

第二次世界大戦で破壊されたまちだが、唯一爆撃を逃れた礼拝堂を中心に放射状に美しく調和する中世風の景観がっくられている。

公共交通を優先したまちづくりの象徴がライトレールだ。線路の一部には芝が植えてあって、走行の音を緩和させ、雨水を地下に呼び込むようにもなっていた。

フライブルクでは、通勤にライトレールが推奨され、パーク&ライド方式といって、まちの入り口に車を停めて、電車に乗り換える。そして中心市街地は歩行と自転車が優先という政策がとられていた。郊外と市街地と結ぶライトレールの駅には改札がなく自由に乗り降りができる。これに列車が連携をして、さらに遠いところとの行き来もしやすくなっている。

商店街の上は居住地になっていて周辺にも団地がある。またゴミの分別、バイオマス、太陽光、緑のカーテン、リサイクルなど、さまざまな環境に配慮した活動も実施されていた。石の採掘で空いた跡地は人工湖と緑化で自然公園としてよみがえっていた。リサイクルを徹底させれば、それにともなう環境の事業が新たに地域に生まれる。

ヨーロッパの都市では、景観と環境を調和させたまちづくりを行っている。そしてそれが観光誘致にも大いに貢献しているのだった。

富山市のライトレールもフライブルクと同じように電車の幅が狭くスリムで、床面が低く、子どもでも高齢者でも乗車がしやすいユニバーサルデザインになっている。レールにも特殊な樹脂が埋め込まれ振動を緩和させ、また線路内に芝生も敷いてあり騒音を吸収する工夫までされている。

ライトレールはもともとあった既成の路線でJR西日本が運営をしていたものをベースに、それを新たに生まれ変わらせたものだ。富山県、富山市、民間企業が出資した「富山ライトレール」が運営。「富山地方鉄道」からの出向者と新規採用者の職員で管理・運営がされている。事業には国、県、市の補助が用いられた。

これがまちの中心、富山駅北口から海沿いの富山港まで連携するようになっていて、各地区の住宅地を結び、郊外からでも中心市街地まで気軽に買い物に行ける仕組みがっくられていた。

郊外の地域は、居住地や医療機関、商店などが集中しているところや、住宅地で人口密度が高く生活関連の商業施設などがある地域を拠点地区とし、それらを串で剌すようにライトレールや旧来の路面電車、列車、バスなどの公共機関がつなぐ。そのために市内には新たに路面電車の環状線が敷設された。

ポイントを絞って、住居や公共施設をまとめて生活圏をつくるというコンパクトシティの構想でまちづくりが進められている。
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