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封書の宛名書きを見て差出人は大工棟梁のDさんと分かる分厚い封書が届いた。それには切手が何枚も貼ってあり、読み応えがありそうだと分かる。封書の中はある雑誌の対談で掲載された十数頁分のコピーが、Dさん自筆の手紙と一緒に同封されている。丁寧なコピーは小冊子にしてくださいと言わんばかりに思え、得意の製本技で表紙を付け読みやすくした。タイトルの写真姿に棟梁の風格を感じる。
棟梁が学卒新入社員として工場の同じ係へ配属されておよそ4年、息子の歳に近いこともあり同世代を学ぶところもあった。明るく世話好きな好青年だった。そんな彼が大工となるため脱サラをして修業し独立して17年になる。手がけた家や近場での新築現場を見学したことがある。建築現場でノコギリやカンナ、ノミなどで木材を加工する音が聞かれる。最近はあまり見かけない建築手法をとっている。
今、築110年の古い家の再生をしているとブログに載せている。再生では曳屋(家を揚げて移動させる)や家全体を持ち上げて古くなった柱の下部を補強するなど、素人にはワクワクするような工法を紹介してくれる。動く城として紹介された弘前城があります。あの移動方法が曳屋です。苦労もあろうが、地方の小さな街で、棟梁として納得できる仕事をしているということは幸せだと思う。
棟梁として「家は自然に還さなければ」と話す。古い家は土・竹・木からなっており、再生も土に還る素材を使っている。対談を読みながら、好きで進んだ道といえばそれまでだろうが、研鑽と実践から身についた仕事への取り組み方は真摯だと思う。現場見学を誘われているがまだ叶っていない。いつか案内を願うとしよう。
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