通り過ぎようとした道の向こう、収穫の終わった田んぼのひと隅に陽にてらされて小高い黄金色の富士山が立っている。車を止めて近寄ってみた。
それはどなたが脱穀されたの知らないが懐かしい「もみ殻」だった。高さ1.5㍍ほどの小さな山だが、その役目を終えた姿は霊峰富士にも似て気高い姿に見える。
薩摩芋はもみ殻に潜って冬を越した。大型たの渋柿、富士山柿は箱に入れられたもみ殻の中で熟され年明けにあめ色の姿を表した。子どもの手には大きすぎる熟柿は最高のおやつだったことを思い出す。
寒さに弱い作物を守るもみ殻、人の喉を通らない渋を抜き柿を塾す素晴らしいもみ殻、科学万能で世を処す今、こうした伝えられてきた自然の力を改めて見直すことが本当のエコ社会に通じるのではなかろうか。
最近、もみ殻をまきストーブのまき代わりに利用する方法が報道された。オガライトのように油脂分を全く含まない、環境に易しい燃料になるという。期待する。
ひとすくいする。半分に割れた数㍉ほどの小さなもみ殻も山と積もれば1つの大きな力を持った姿に変わる。何かを教わったようで粗末にできなくなり手に持ったもみ殻を元に戻した。
(写真:綺麗な姿をしたもみ殻の山)