消えた将棋盤

2010-08-28 00:00:08 | しょうぎ
「消えた将棋盤」と題名に書いてしまったが、正確には、「消えてしまった将棋盤鑑定番組」というべきかもしれない。

たかが、娯楽番組での鑑定額とはいえ、ずいぶんこじれてしまったようだ。水掛け論もいいとこだと思うが、ごく一部の関係者の頭に血が上っているようなので、展開を客観的に考えてみた。

まず、問題の表面的な発端は、テレビ東京の人気番組「何でも鑑定団」6月22日放送分である。ここでKさんという一般の方が、最近手に入れたという江戸時代の盤と駒と駒箱を持ち込んだわけだ。そして、駒には2000万円の値が付けられたものの、盤には50万円と不釣り合わせの評価が付けられる。

盤に付けられた純金の家紋(徳川家を意味する葵の紋章である)が、後世に付け替えられたものであるから、歴史的価値はゼロということで、工芸品としての美術価値のみの50万円ということになったようだ。

そして、本来、そこで終わるべき問題に突如割り込んできたのが、当事者ではない将棋連盟というか連盟会長というか。50万円とはおかしい、と論争を挑む。紋の付け替えではないという主張であり、別の専門家の意見もあるようだ。

それで、将棋連盟のHPの一角にテレビ東京に対する批判も掲載したわけだ。法廷もいとわないというような感じだ。もちろん、鑑定されたのはKさんという個人で、将棋連盟との関係は明らかにされていない。何か、公益法人維持の目標と関係があるのかもしれないが、よくわからない。


さらに、今年11月の「将棋の日」の名古屋でのイベントでは、この将棋盤を使って公開対局を行うような予定もあるようだ。

ところで、私も長くテレビ東京の株主だったこともあり、株主総会での説明や質疑など聞いていると、このテレビ局は日経からの流れである「報道」と、視聴率の高い「娯楽」の二つの路線が入り混じっているわけだ。さらに糸山家が個人最大株主であることは、「株主収益」も重要な要素になっている。そして、数ある長寿番組の中でも、この「何でも鑑定団」は、テレビ東京の金看板番組なのである。

つまり、大きく言えば、マスメディアからの収益に頼っている団体がマスメディアと報道の虚偽」という超重大問題で一戦交えようというのだから、さっぱり理解できない。


そして、その盤が本物であるという主張からすれば、江戸時代には徳川将軍の面前での御城将棋を披露していた身分の将棋指しが、現代ではその葵の紋の将棋盤をわがもののように使って公開対局を指そうというのだから、礼儀も品性もあったものじゃない。さらに、歴史的価値があると主張するならば、実際に使用するとか考えずに、ガラスケースの中に鎮座させるのが本筋というものだろう。


そして、個人的には「水掛け論」と思っているのは、仮に、三つ葉葵の紋が本物だとしても、では江戸時代のいつの時代で、現在に至るまでの間の、この盤の変遷がある程度あきらかにならないと、歴史的な価値を認めることはできないからだ。同じ三つ葉葵といっても、御三家によって細かなデザインは異なるし、また時代によって葵の葉の葉脈の本数も異なっている。そのあたりの考察も聞いてみたいところではある。


ところで、この将棋盤は、嫁入り道具であるということらしく、嫁入りする実家の紋ということらしいのだが、実は、徳川家は江戸後期になり結構窮乏状態にはまっていく。家斉みたいにこどもの大量生産をすると、嫁入り先への調度品代も高額になる。その際、かつて他家より嫁いでた姫様Aが持ってきた嫁入り道具を、若干改造して、お姫様Bが他家に出るときに、持たせたという場合も多かったのだ。使い回しというわけだ。参考まで。(そういうのは張替というよりも、歴史と考えることもできるような気もする)


そして、結局、本来8月28日には、6月22日放送分を再放送するはずであったのだが、一週飛んで6月29日放送分を再放送するようである。騒動に辟易したのだろうか。


あるいは、鑑定にもセカンド・オピニオンが必要ということだろうか。



さて、8月14日出題作の解答。



▲3五と △4七玉 ▲4八飛 △3七玉 ▲2八馬 △2六玉 ▲4三飛成(途中図1)△5九香成 ▲4六竜 △1五玉 ▲3七馬 △1四玉 ▲1六竜まで13手詰

8手目△3五玉は、▲4六馬 △2五玉 ▲2三竜以下早詰み。

動く将棋盤は、こちら


今週の問題。



かなり思いがけない収束に向かう。

配置の位置からして、なかなか読みにくい筋かもしれない。

わかったと思われた方は、コメント欄に、最終手と手数を記していただければ、正誤判断。