彼岸花の行くすえ

2008-10-09 | 【草花】ETC
 ヒガンバナ(彼岸花)のことを書いておこうと思っているうちに、そのさかりが過ぎ去りつつある。ヒガンバナの花は、赤く、雄蕊が花の外に長くのびて独特の姿をし、人里にあって、ともかく目立つ。
 ヒガンバナの一年とは、どういうものだろうか。
 夏、地上には何もない。しかし、土中に球根。その球根のなかに蕾ができる。彼岸の時期になると、突如として土から茎が直立して伸びる。茎の先端には膨らみ。そして、あっという間にその皮が裂け、花が咲く。この時、ヒガンバナに葉はない。花が終わると茎は消えてなくなり、それから葉が出てくる。葉は地上に伏せるようにして冬を越す。そして、晩春に枯れる。
 ともかく、葉のない長い茎の頂に、炎のような赤い花、ヒガンバナというと、視覚的には、そんなイメージばかりだ。
 曼珠沙華という名をも持つ。それは、梵語で赤い花という意味である。他に、狐の松明、火事花、痺れ花、死人花、幽霊花などとも呼ばれる。
 これらの名前の中にあるように、日本では、文化的には、不吉をただよわせる花と見られている。実際、彼岸に墓参りにいくと、墓石の間に生えていたりして、浮かばれぬ霊がそこに宿っているように感じてしまう。
 しかし、そのような感覚は、あくまで伝統・文化的なもので、生活習慣が変わり、その継承が薄れつつある今後、どうなるだろうか。
 とらわれなき目で見れば、個性きわだつ花として、もっと大切にされてもおかしくない。既に、そのような傾向は広がりつつあるわけだが。