性に目覚める前。
色恋による煩いのない少年時代。
男にとっては、至福の時とも言える。
当然、色恋の楽しみもかけがえのないものだが。
そして、老いては、色恋は元気のもとともなる。
肉体の元気に直結しているようにも感じる。
さて、男の中で、「いい奴だな」と思わせる人には共通したところがある。
俺の勝手な思いかも知れぬが、「いい奴」には、純真な少年のおもかげがある。
そして、だいたい早死にである。
「いい奴」の印象を残すには、早死にした方がいいとも言える。
もう、多くの友人が他界した。
YやI、とても「いい奴」だった。
Yは、木造の潜水艦を造り、それに乗り込み、池だかプールに乗り出したのはいいが、潜水艦から、脱出できなくなり、溺れ、死にかかったと言っていた。
とても楽しそうだった。
禁漁の魚を捕まえたり、禁止の手段で一気に魚を大量に捕まえたこと。
馬や犬と仲良くしたこと。
熱帯魚の世話。
自前のスピーカーなどを造ったこと。
亡くなる少し前には、インドからバイクを取り寄せ中と言っていた。
多趣味だった。どれもこれも楽しそうだった。
いずれも、色恋と関係なく、少年のおもかげただようあれこれ。
仕事では、Nさんにつかえていたが、気心があっていたようだ。
動物どうしとして相性がよかったのでないか。
こまごました仕事そのものは、面白くなく、無理をしたのでないか。
俺のように、いい加減ではなかった。
Yは、元旦に亡くなった。そして、葬儀が故郷で行われた。
そのため、友人たちもお別れの機会を得られない者も多かった。
それで、その後7年ばかり、「春に想う集い」と称して、友人たちが集まり、彼を偲んだ。この間に、鬼籍に入る友人も増えた。Yの友人でもあった一人は、不審な死を遂げたりした。いろんな状況変化があり、ここ2年、「集い」はやっていない。
彼が、楽しそうに、少年時代のことを話していた姿が思い出される。