「陽樹」シラカンバ

2007-01-31 | 【樹木】ETC
 学生時代、赤城方面に一人で出かけたとき、宿泊地の近くに、白樺(シラカンバ)の林があった。光あふれる明るい林に、白い樹皮のシラカンバが、すっきり立って空に枝を伸ばしており、美しかった。カバノキ科カバノキ属の落葉高木である。
 広く人気の高い木でもある。リゾート地、高原の木というイメージがある。人間の気持ちがリラックスしているときに見ることの多い木であるからか。
 実際、すがすがしいリゾート地などに多く、日本では、静岡以北の木である。また、陽樹と言われ、白樺林は明るさをともなう。照葉常緑樹林のもつ暗さがない。
 そうであるのは、シラカンバは、山火事など植生破壊があった更地にいち早く生えてくる先駆植物であるからである。もともと明るいところに生えるのである。
 成長は速い。それだけに、寿命は短い。20年くらいである。ほとんど一代で終わりと言う。幹周り1メートル、樹高20~30メートルにもなるが、大きくなると幹の中に腐朽が生じることが多いそうだ。風による倒木も多いという。
 先駆的で薄命。生き急ぎタイプである。このようなところにも好かれる原因はあるのだろうか。
 美しきスオミの国・フィンランドの「国の木」とも聞く。

祝菓「福梅」

2007-01-30 | 【樹木】梅
 一昨日、通りがかりの道で、白梅が咲いているのを見た。
 そう言えば、今年の正月も、「福梅」を食べることができた。私の郷里である加賀百万石の都・金沢の冬の和菓子である。いわゆる最中であるが、その形は前田家の紋である剣梅鉢を象っている。皮は固めで、砂糖がまぶしてある。なかの小豆の粒餡はコシの強いのが特徴である。歯先にいくらか堅さを感じる。色は紅白の二種。上品な色合いである。
 金沢の人間は、大概、正月に口にする。新春を迎えられた慶びを味わうのである。正月の祝菓は他にもあるが、「福梅」が代表的である。
 現在は東京に住む両親が、金沢の和菓子屋から取り寄せてくれた。私の通勤途上のデパートでも、金沢の店が出ていて、入手はできるのだが。

サカキとシキミ

2007-01-29 | 【断想】神々
 天の岩屋戸に隠れた天照大御神に出てきてもらうために、さまざまな事が行われるが、その時、玉飾りや大鏡、白や青の幣を取り付けたのがサカキ(賢木)である。サカキは神事には欠かせないツバキ科の常緑高木である。
 一方、仏事で使うのが、モクレン科の常緑小高木、高木のシキミである。古くは、神事でも使われたそうだが、いつしかすみ分けができたようである。どちらも葉は厚く、つやがある。
サカキは、神が降りるヨリシロで、神と人の境となるところから、境木(サカキ)の意ともいわれる。通常、榊と書かれる。また、いつも青々しているところから、栄樹(木)とも言われる。
 シキミの語源については、実の形から「敷き実」だとか、毒があるところから、「悪しき実」がつづまったものとか言われる。普通は、樒とか、木偏に佛でシキミ。別名、ハナノキ。

「楽しむドングリ」

2007-01-28 | 読書
●ドングリと松ぼっくり/写真・平野隆久 文・片桐啓子/山と渓谷社/2001年9月30日発行/1600円
 多摩動物公園の売店で、山と渓谷社の「探して楽しむドングリと松ぼっくり」を買った。写真と文で構成されており、様々なドングリ、松ぼっくりが紹介・解説されている。前から、この本のことは、知っていた。もっと早く買えばよかった。
 アク抜きをしないと食べられないいわゆるドングリと生のままでも口にできるシイの実の区別が、いくらか出来るようになるかも知れない。
 「森の休日」というシリーズのなかの1冊。他に「拾って楽しむ紅葉と落ち葉」等がある。見て、読んで楽しめる本である。レベルも高い。「関東でシイといったらスダジイ」というような、なんでもないことだけど、貴重な情報が載っている。

「桜の樹の下には」

2007-01-27 | 【樹木】櫻
水色の空に浮かんだままの水球が震えている。
宇宙が発する震動をうけて、震えている。
瑞々しいいのちである。
いつか消えるいのちである。
梶井基次郎の「桜の樹の下には」を読んだ。
27歳の作である。
その魂のようすを思い描いてみた。
作品の1行目を記しておく。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」

天地と神の誕生

2007-01-26 | 【断想】神々
 天地開闢のようすは、ギリシア神話では、カオスのなかから、神が生まれたとある。そして、初めの神は、大地を象徴する女神であるガイアである。
 日本書紀では、天地が未分離のカオスがまずあり、次第に天と地が定まり、その後に、神々が生まれてくる。
 ギリシア神話と日本の神話は似ている。一方、ユダヤの民は、神と天地の誕生について異なる捉え方をする。
 旧約聖書は、「初めに、神は天地を創造された」と始まる。神がまず先にあり、神が天地を創るのである。
 ひとりの神が先に立ち、すべてを律すると、いささか窮屈になる。

ヴィーナスの誕生

2007-01-25 | 【断想】神々
 ギリシア神話に登場する愛と美の女神・アフロディテ(ヴィーナス)は海の泡から生まれたとされる。その泡がどうして発生したかというと、ウラノスの男根が、海に投げ込まれたからである。カオス(混沌)から生まれたガイア(大地母神)の子にして夫のウラノスの男根が切られたのである。切ったのは、ガイアとウラノスの末っ子であるクロノス。何故そういうことになったかと言うと、ウラノスの行いが悪く、ガイアが怒ったからである。ガイアは、大鎌をつくり、息子たちに、「これで夫をこらしめろ」と言った。
 要するに、お母さんの意をうけた息子が親父の男根を切り取り、海に投げ込み、、その周りわいた泡から、アフロディテが生まれたという顛末。
 これは、紀元前8世紀頃の詩人・ヘシオドスの「神統記」に記されている。オリンポスの神々が活躍する以前の話である。ホメロスによれば、アフロディテは、クロノスの子であるゼウスとディオーネの間の娘ということだが、これでは話として面白くない。
 ここでは男根と表現したが、それは、創造、力のシンボルでもあるのだろう。男根とせず、ファロス(陽物)という表現の方がよかったかと思う。
 改めて、ボッティチェリの画集をひろげ、「ヴィーナスの誕生」を見た。「へぇー、アレから生まれたのか。どんなアレだったのかな。でかかったのかなあ」と。

オリンポスの神々

2007-01-24 | 【断想】神々
 ギリシア神話のオリンポスの神々には、己れの神木というものが決まっていたりする。ゼウスは樫の木、アテナ(ミネルヴァ)はオリーブ、アポロンは月桂樹というようにである。また、アフロディテは、ミルテ(桃金嬢)がお気に入りだったそうだ。他の神々はどうだったかなど、詳しいことは分からないが、少なくとも、樹木に聖なるものを感じる心性があってのことと思う。
 オリンポスの神々は、その後の旧約聖書の神のように、厳格な正義をかかげるというようなことがなく、好色な神もいて、非常に人間くさい。森を愛する神、火の神、商売や泥棒の神、戦いの神、天の神、地の神等々がいて、そこは、多様な価値観が入り混じった世界が広がっている。さらに、女神も多く、「唯一の父なる神よ」の世界とは異なる。
 様々な神が登場する日本の神話に近い。ギリシア神話の時代のその地には、まだ、豊かな森があったのだろう。豊かな森は、多くの神々を抱擁する。

パイプのくわえ心地

2007-01-23 | 【樹木】躑躅
 パイプには、実にさまざまな形がある。その木部(ボウル部分)、吸い口(マウスピース)にも。見た目にいいと思っても、実際にくわえてみるとしっくりこないということがある。私は、パイプについてあれこれ語るほどの愛好者ではないので、おこがましいが、いかなるパイプを自分のパイプにするかについては、その人の歯の噛み合わせが大きな要因ではないかと思っている。
 私は、吸い口がゆるいカーブをなし、ボウルがブルドック型のベント・ローデシアン・サドルがいい。くわえたときのボウルの位置、角度が落ち着くのである。

ツツジ科のパイプ

2007-01-22 | 【樹木】躑躅
 女にはパイプをくゆらせる姿は似合わない。パイプは、男に残された愉しみと言われる。休日の午後などに、パイプで煙草をすうことがある。パイプには、喫煙そのものの他に、パイプ自体の選定、関連グッズ集め等さまざまな愉しみ方がある。
 パイプのほとんどは木でつくられている。その木は、桜や柘植や樫が使われたりもするが、その主流はブライアーパイプである。ブライアーとは、ツツジ科のホワイトヒースと呼ばれる灌木で、パイプには、その根塊が使われる。他の素材に較べて、火に強くて、軽くて丈夫である。ホワイトヒースは地中海沿岸の乾燥した岩場などに自生する。ヒースという名前が示すようにエリカ属の木である。
 ナポレオンの生地であるコルシカ島に旅行に出かけた男が、愛用のメアシャウムパイプ(海泡石でつくったパイプ)を壊してしまい、代用に島の人たちが作っていたブライアーの根のパイプを使い、それが世に広まったきっかけであると言われる。その木肌、木目の美しさに魅せられたわけである。
 様々な木製品があるが、独特の思い入れがこもるのがパイプである。

「小さな樅の木」

2007-01-20 | 【樹木】ETC
 パウル・クレーの絵が好きだ。
 「小さな樅の木」という絵には、木が1本はえている。
 「鷲とともに」という絵には、木が20数本はえている。
 「旗を飾ったパビリオン」という絵には、15本ほどはえている。
 それだけのことです。
 どれも何だか楽しい絵。

梅の便りよ

2007-01-19 | 【樹木】梅
 梅の木は中国原産。この渡来の樹木とその花を、いにしえの大和人は、よく和歌に詠んだ。万葉集などでは、桜より、梅の方がよく詠まれている。
 この梅は、花樹であるとともに、果樹である。
 私は毎日、一粒は梅干しを食べる。だけど、中国産のものは食べない。かの国のことが、信用できないからだ。からだに悪いのでないかと。今の中国では、権力や金ばかりが突出しているように思える。そんな国から輸入される食品は、信用できない。
 それはともかく、梅の便りが聞こえるようになってきた。

僕たちも冬眠

2007-01-18 | 【断想】ETC
 僕たちも冬眠したいね
 そうね
 ぬくぬくぬくぬく ぬぬぬぬぬ
 目が覚めたら
 ぽかぽか春というのはいいね
 ぽかぽかすがすがだよ
 人間はあくせくし過ぎだね
 ばかたれだね
 グーグーグー

 ちょっと草野心平のまねのつもり。氏の「第百階級」という詩集に、「冬眠」というのがある。本文は、以下の通り。

          

冬芽という外套で

2007-01-18 | 【樹木】ETC
 寒い冬をどのように乗り切るか、動植物は、さまざまな方法をとる。冬の毛を生やすもの、冬眠するもの、種子となって身をを守るもの。
 樹木は越冬芽という、いわば、外套を着る。外套の中は、葉と蕾である。
 その蕾ができるのは、夏から秋である。すぐに花をつけるわけではない。冬を越して、春になってからである。開花のタイミングは樹木によって、幾らか異なる。花が葉より先に開くのが、梅や染井吉野である。
 一昨年秋に植えたクヌギの実は、昨春、芽を出し、葉をつけた。今は、その葉を落とし、30センチばかりの一本の細い枯れ木が土に突き刺さっているというさまである。春に、葉をつけてくれるだろうか。