パウル・ギーガーのアルバム「イグニス」。
1998年の録音で、ECMから出ている。
「イグニス」とは、ラテン語で、篝火、炎のことのようだ。
1曲目は、「Organum:オルガヌム」。
ヴァイオリンとヴィオラとチェロの弦楽三重奏曲。
「オルガヌム」は、合唱の技法のことようだが、曲に声はない。
これも、広い聖堂に響くような曲である。
アルフレッド・シュニトケの「カノン・イン・メモリアム・イゴール・ストラヴィンスキー」。
ヴァイオリン2,ヴィオラ、チェロの弦楽四重奏。
この前、グバイドゥーリナを聞いたので、ソ連関係のもう一人をもと思った。
現代音楽、20世紀音楽、人は何を失ってしまったのだろうか。
先日、グラント・グリーンの「抱きしめたい(BN)」で、ハンク・モブレーのテナー・サックスを聞いた。
なんだか控えめで優しい音だなあと思った。
これまでに、何を聞いているのかと、自分のブログを検索して調べてみた。
サイドマンとしてのものは多くあったが、リーダー・アルバムでは、「ソウルステーション」(1960 BN)、「ディッピン」(1965 BN)くらいだった。
そして、「大人しい」感じだと、印象が記されていた。
どうも、全面にしゃしゃり出ると言うタイプではないと言うことだろう。
ハンク・モブレーのリーダー・アルバムで、それなりに注目された「ロール・コール」(1960 BN)をCDで入手。
〈演奏メンバー〉
ハンク・モブレー(ts)
フレディ・ハバード(tp)
ウィントン・ケリー(p)
ポール・チェンバース(b)
アート・ブレイキー(ds)
錚々たる顔ぶれである。
しかも、派手なプレーヤー達である。
リーダーがいちばん地味なタイプと言えるかな。
どんな仕上がりか、予想されるところである。
〈収録曲〉
1.ロール・コール
2.イ・グルーブ・ユア・ムーブ
3.テイク・ユア・ピック
4.ア・バプティスト・ビート
5.ア・バプティスト・ビート(別テイク)
6.ザ・モア・アイ・シー・ユー
7.ザ・ブレイク・ダウン
みんな、それぞれ、目立っている。
そして、ブレイキーやハバードの音には花があるなと感じさせられる。
「ア・バプティスト・ビート」のハンク・モブレーの音に、のびがあって、生き生きしたものが感じられた。
でも、フレディ・ハバードの方が、そうかなあ。
快適なハードバップの一枚 。
かつて、パウル・ギーガーの「シャルトル」をよく聞いた。
聖なる空間との対話との説明が付いている。
続けて、「Schattenwelt」、「lgnis」を聞いた。
「Schattenwelt」を手に取る。
3曲収録されている。
その1曲目「Bay」を聞いてみる。
日本語で、「湾」でいいのだろうか。
録音は1992年、ECM。
この手の音楽は、そのムードに浸りたければ、BGMみたいに何度かけてもいい。
でも、そうでなければ、何度も楽しむ類いではないので、適度に接するだけでいい。
夏だ。
暑い日が続いている。
地球は、人の業でおかしくなったようだ。
さて。
サマータイムを。
アルバート・アイラーで。
1963年、デンマークでの録音である。
激烈なアイラーのサックスの音にとらわれてしまって、これまで気づかなかった。
ベースは、ニールス・ペデルセン。
ケニー・ドリューとよくやったペデルセン。
ペデルセンは、アイラーのことをどのようにおもっていたのだろうか。
ジェルジュ・リゲティでもう一曲。
1961年の「アトモスフェール」。
スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」で知られた曲。
そう言えば、現在は、2023年。
2001年は、過去となってしまった。
管弦楽曲で、指揮はクラウディオ・アバド、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。
さて、「永遠の光」のお口直しになるだろうか。
映画のことが、あたまにあって、聞きながらイメージを描けて親しみやすい。
だけど、それがなかったら、どうだったろうか。
ほとんど気まぐれで、ジェルジュ・リゲティ(1923-2006)を聞こうと思った。
リゲティは、ハンガリー生まれの作曲家で、1956年、ハンガリー動乱を機にオーストリアに亡命。ウィーンに暮らした。
「全体主義体制は、不協和音を嫌う」と感じていたそうだ。
全体主義の権力者は、不協和音を嫌うと言うより、分かりやすい表現で体制を賛美しないもの、得体の知れないものを抹殺しようとするものだ。
リゲティの何を聞こうかと手元のCDをみた。
アトモスフェール、ロンターノ、ルクス・エテルナ(永遠の光)、レクイエム、アヴァンチュール等があった。
声楽作品の「永遠の光」を聞くことにした。
1966n年の作だから、西側の空気を吸ってからのものである。
Musica Sacra(ミュージカ・サクラ)によるものである。
1.No.1 GREEN STREET
グリーン・ストリート
僕のお気に入りの道なんだ
柳の並木がつづいてるんだ
まっすぐ行くと
港に白い大きな船が見えるよ
2.'ROUND ABOUT MIDNIGHT
夜は暗いよ
窓の外の道
誰も歩いていない
今夜もひとりっきりだ
人の世はさみしいものさ
そんなものだよ
3.GRANT'S DIMENSIONS
通りに落書きしたのは誰だろう
白いペンキで
ドルフィンのかたち
このあたり
雨が少ないからな
当面
白いドルフィンの横
歩こうか
4.GREEN WITH ENVY
坂を登ったところに
窓辺に白い薔薇の花の家
かわいい娘が住んでいるんだよ
そこを通るだけで
ウキウキするよ
5,ALONE TOGETHER
いい奴だった
どこへ行っちまったんだろう
シャツの白い襟がいかしてたな
白いズックが片一方だけ
6.GREEN WITH ENVY
7.ALONE TOGETHER
蹴飛ばした石ころ
黄色い窓ガラス
潮の臭いがする街
グラント・グリーンの「グリーン・ストリート」(1961 Blue Note)。
一緒に演っているのは、ベン・タッカー(b)とデイブ・ベイリー(ds)。
ポール・マッカートニーの「抱きしめたい」で始まる。
そのアルバム、グラント・グリーンの「アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド」(1965 Blue Note)である。
ライナーノーツを小川隆夫氏が書いていて、グラント・グリーンの魅力を“シンプルだが極めてジャージーに響く”ところにあると述べていた。
多言は要しないのだ。
それだけでいいのだと思う。
自然体で、素直に、ジャズの気分が愉しめるのだ。
コルコヴァド(静かな夜)、英語で、クワイエット・ナイト。小さい頃、歩いた道、その街角の景色が瞼に浮かぶような気分。
オルガンを弾くのはラリー・ヤング。
ドラムは、エルヴィン・ジョーンズ。
ハンク・モブレーのテナー・サックスも加わった演奏である。
〈収録曲〉
1.抱きしめたい
2.スピーク・ロウ
3.星影のステラ
4.コルコヴァド(静かな夜)
5.ジス・クッド・ビー・ザ・スタート・オブ・サムシング
6.アット・ロング・ラスト・ラヴ
このブログでとりあげたグラント・グリーンのアルバム、これで7枚目かな。
特別に、心に響くと言うわけでもないのに。
きっと、心地いいんだね。
1961年 グランツ・ファースト・スタンド
1961年 グラント・スタンド
1962年 フィーリン・ザ・スピリット
1962年 ザ・ラテン・ビット
1963年 アイドル・モーメンツ
1965年 マタドール
1965年 アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド
ソフィア・グバイドゥーリナの“セブン・ワーズ(七つの言葉)”を聞く。
YUJI TAKAHASHI / WORKS BY SOFIA GUBAIDOLINA (FONTEC)で。
バヤーン、チェロ、弦楽オーケストラのための曲である。
“七つの言葉”とは、イエス・キリストが十字架上で発した言葉とされる。
曲は、指揮をとる高橋悠治の日本語によるナレーションで始まる。
聖書のイエスの“七つの言葉”が日本語で朗読されるのである。
続いて、七つのパートが切れ目なく演奏される。
第4楽章は、「わが神、わが神。どうして、わたしをお見捨てになったのですか」。
マタイ傳福音書第27章46節は、「三時ごろイエス大聲に叫びて、『エリ、エリ、レマ、サバクタニ』と言ひ給ふ。わが神、わが神、なんぞ我を見棄て給ひしとの意なり」。
第7楽章は、「父よ、御手にゆだねます」。
信仰というのは、人にとって何なんだろうか、なんとも言えないものだなあと思ってしまう。
ソフィア・グバイドゥーリナの“イン・クローチェ”。
言葉を変えれば、“イン・クロス”、“十字架で”で、1979年の作。
チェロとオルガンによる曲。
ダヴィッド・ゲリンガス(チェロ)、エドガー・クラップ(オルガン)で聞く。
KOCHの「現代ロシアの室内楽曲集:イン・クローチェ(十字架で)」に収録。
手元のNAXOSのCD「グバイドゥーリナ」にも、この曲が収録されている。
チェロとバヤンの演奏になっている。
アリア・クリーゲル(チェロ)、エルスベス・モゼール(バヤン)である。
これは、わけが分からない現代音楽ではない。
旋律ではなく、音質・響きが、人の心にもたらすものがある。
津波のような音、上下する鳴動、破滅的な表現。
果たして何ができるのか。
神よ、いるなら、告げてくれ。
この曲では、バヤンより、オルガンを使った方が迫力がでていいように思う。
アルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」。
チェロとピアノによる8分半くらいの曲である。
もとは、ヴァイオリンとピアノのための曲として。1978年に作曲されている。
演奏者は、まるっきり知らない人だ。
ピアノは木琴のように叩かれている。
チェロは、静かにゆったり流れる。
1990年のレコーディング。
KOCHの「現代ロシアの室内楽曲集:イン・クローチェ(十字架で)」と言うアルバムに収録されている。
4人の作曲家の曲が収録。
アルヴォ・ペルトはエストニア生まれ。
現代ロシアという括り、引っかかるな。
夜
あとは眠るだけ
一曲聞こうか
リストの「忘れられたロマンス」
キム・カシュカシャンとロバート・レヴィンのデュオ
ヴィオラとピアノだ
ECMからの「エレジー」にある
俺はまだ生きているよ
君のことを
思い出したりしながら
生きているよ
ケニー・ドリュー・トリオのアルバム「エレジー」(1986 BAYSTATE)。
秘めやかに、哀感あふれたかと思うと、快適にかっ飛ばし、ケニー・ドリューの魅力いっぱいである。
ニールス・ペデルセン、エド・シグペンとのトリオ。
「ジャンゴ」からはじまる9トラック。
5曲目に「エレジー」との名前の曲。
「タリスの瞑想曲」で知られたマスネーの1873年の作。
ケニー・ドリューのピアノの音には、静かに、気持ちよく暮らしていきたいなと言う思いが潜んでいる。
さあ、行こう、天気も良さそうだよ・・・。
トマス・タリスの「エレミアの哀歌」(ECM)。
ポール・ヒリアー指揮、ヒリヤード・アンサンブル。
1.Incipit Lamentatio(預言者エレミアの哀歌なり)
2.De Lamentatione(預言者エレミアの哀歌より)
預言者エレミアが活動したのは、紀元前7世紀から6世紀、南王国ユダが衰亡する末期、バビロン捕囚にいたる時代である。
エレミアは、南王国ユダは、神に背く悪(偶像崇拝ヤ堕落した暮らし)により滅亡すると預言、民の悲劇を嘆いた。
やがて、バビロニア王ネブカドネツァルにエルサレムは攻撃を受けて滅びる。
民は捕囚となる。第1次バビロン捕囚が行われたのである。
※哀歌は、英語でラメンテーション
※旧約聖書の中に「エレミア書」、続いて、エレミアによって書かれたとされる「哀歌」。