散り行くかたは

2007-11-30 | 【樹木】ETC
 多摩動物公園駅前の楓が真っ赤になっていた。
 鉢植えの無花果の木の残っている葉も、すべて黄色くなった。
 欅も小楢も葉を染め、散らしている。
 国会周辺の銀杏の葉もほとんど黄色くなった。
 犬四手はあらかた葉を落とした。
 秋色濃し。明日からはもう師走。秋でなく冬か。
 西行の一首。
 何となく落つる木葉も吹く風に散り行くかたは知られやはせむ

時空を超えた科学あれこれ

2007-11-29 | 読書
【本の紹介】
●街角の科学誌/金子務著/中公新書ラクレ/798円(税込み)
 科学史にまつわる人物、事物にふれて、全部で五十六のエピソードが綴られている。古今東西、ギリシア神話から現代まで、時空を超えた多彩さ。青島ドイツ人俘虜収容所の捕虜たちから、日本に伝わった文化、技術のことなど興味深い。どういうわけか、石川県に関連したことが多く出てくる。能登の珠洲焼き、銭屋五平兵衛の庇護をうけたからくり師、高峰譲吉や前田綱紀のことなど。読者は好きな箇所を選んで読める愉しい一書。難を言えば、知識がつまりすぎ、「よくご存知ですね」となる。

虎斑の甲斐犬と彼

2007-11-27 | 【断想】ETC
 山村茂実さんが亡くなって、もうすぐ4年になる。
 彼に何度か聞いた。「薄汚い感じで、毛がまだらの子犬を拾った」
 それで、育てていたということだが、何か感じるものがあって、鑑定してもらったそうだ。そうしたら、日本の有数の猟犬である甲斐犬であることが判明したそうだ。甲斐犬の毛色は、黒虎毛(黒地に茶褐色の虎斑)、中虎毛(薄黒と茶褐色の虎毛)、赤虎毛(薄茶地に黒褐色の虎斑)の3つがあるということである。引き締まった体躯をした猟犬である。
 ともかく強くて、犬同士で喧嘩をしたときなど、制止しないと、相手を殺しかねないと言っていた。実際、半殺しにしてしまったこともあったそうである。
 そんなことを語る彼は、とても楽しそうだった。小さい頃は、馬と仲良く遊んだそうだ。彼には、動物と通じ合うものが、普通の人よりずっとあったように思う。

アカシデの紅葉

2007-11-25 | 【樹木】ETC
 程久保川べりにアカシデの木がある。紅葉すると美しい。同属のイヌシデでより、赤味が濃くなる。その樹皮の筋も、イヌシデの白っぽいのに較べて、幾らか赤味がかっている。昨日夕刻、アカシデを見たのは、薄暗くなった時刻で、よく分からなかった。

あなた何グミ

2007-11-24 | 【樹木】ETC
 11月22日のブログにグミ(茱萸)の木のことを取り上げた。その中で、近くの公園にあるのはトウグミか、と書いた。それで、確認に行ってみたら、ナツグミとのプレートが付いていた。間違ってしまった。それで、改めて、図鑑で調べてみた。そうしたら、ナツグミとトウグミは似ていることが分かった。当たらずと言えど、遠からずといったところ。ご容赦いただきたい。
 グミには、春(4~5月頃)咲きのものと、秋(10~11月頃)咲きのもがある。また、実が秋に熟すアキグミ、夏に熟すナツグミにわけられる。
 ナツグミ、トウグミとも春咲きで、花の終わった初夏に実をつける。ともに、実はサクランボのような柄の先につく。そして、トウグミの実の方がやや大きいということである。

平家物語:死者達への手向け

2007-11-23 | 【樹木】ETC
 水上勉による現代語訳「平家物語」(学研M文庫)を読み終えた。
 物語の中に出てくる樹木を気にかけながら読んだ。沙羅樹、椋、梶、桜、竹、松、楓、柳、茱萸などの出てくる箇所を記してきた。桜は、和歌に詠まれて何度か出てくる。
 さくら花賀茂の河風うらむなよ散るをばえこそとどめざりけれ(鹿谷)
 竹は竹の編戸というように、松は松風というように、使われて出てくる。
 戦いが終息し、平家物語も終わりちかく「大原御幸」では、柳、藤、桜、、山吹など、死者たちへの手向けのように花の咲く木が出てくる。
 この「大原御幸」が含まれる灌頂の巻には、幾首もの歌が記されている。それらの中で樹木の名が見られるものをあげてみる。
 ほととぎす花たちばなの香をとめて鳴くは昔の人や恋しき(建礼門院徳子)
 岩根ふみ誰かは問はん楢の葉のそよぐは鹿の渡るなりけり(大納言典侍の局)
 池水にみぎはの桜散り布きて浪の花こそ盛りなりけれ(後白河院)
 平家物語に出てくる樹木、見逃したものもあろうが、これで一区切りとしよう。

平家物語:粟津の松林にて

2007-11-22 | 【樹木】ETC
 木曽義仲の最期は、近江・粟津の浜の松林でである。今井四郎兼平は、義仲に言う。
 「あれに見え候ふは、粟津の松原と申し候。君は、あの松の中へ入らせ給ひて、静かに御自害候へ」と。
 ここが死に場所と見きわめ、天下に名をなした者としての最期を、雑兵の手にかかることなく迎えようということである。義仲は、松林に入ったが、自害する前に、首を落とされている。
 仕事で、粟津あたりにいたことがあり、義仲最期の場所がどこか、人に尋ねたことがあったが、分からずじまいである。粟津からそう遠くないところにある義仲寺には、二度ほど行った。義仲寺は、巴御前が義仲を弔うために建てた草庵がはじまりと伝えられている。

平家物語:茱萸の木林

2007-11-22 | 【樹木】ETC
 子どもの頃、時折、家の白い壁に「幻灯」を映して鑑賞した。今は、あんな機械やフィルムを見かけることもない。よく観たのは、捕鯨や源平の戦いのものだった。
 源平の戦いには、頼朝や牛若丸が出てきた。生まれ育ったのが石川県だったので、源平の関係では、郷土の歴史として「実盛」や「倶利伽羅谷」の話を聞くこともよくあった。
 水上勉訳の平家物語を読んでいて、「倶利伽藍落し」のところまできた。木曽勢が、夜陰に乗じて、平家勢を驚かせ、倶利伽藍の谷に落とす。その時、木曽勢は、暗くなるまで、平家勢を取り囲むように、あちこちに身を隠す。
そのひとつが「砥浪山の裾、松長の柳原・茱萸木林にひき隠したりける一萬餘騎」である。柳、茱萸がでてきたので記しておこうかと思った。、
 茱萸(グミ)というのは、グミ科グミ属の何種もあるグミの総称である。トウグミ、アキグミ、マルバアキグミ・・・などと。常緑、落葉の両方がある。実がつくのは、初夏のものと秋のものとがある。いずれにしろ、赤い実がついて、おいしそうである。その実は、肥大した萼筒で偽果、仮果と言うそうだ。
 近くの公園に茱萸の木があって、実がついていたことがある。初夏だったかな、傍らの池にオタマジャクシが見えたようにも記憶している。その果実はサクランボみたいに柄があって、あれはトウグミか、食べはしなかった。
 国会議事堂の南側の道に茱萸坂という標が立っている。いつもそこを通る。江戸時代には坂の両側に茱萸の木が植えられていたそうだ。
 倶利伽藍の茱萸は、どんな茱萸だったのか。兵が身を隠すのによいものだったのだろうな。

オオカミの血をひく川上犬

2007-11-21 | 【断想】ETC
 今年、9月に秩父の三峯神社に行ったとき、境内にある三峯山博物館で、「オオカミがのこしてくれたもの」と題された特別展が開催されていた。ニホンオオカミの毛皮などが展示されていた。あわせて、オオカミの血を引くと言われる川上犬について、パネルなどで紹介されていた。
 信州・川上村役場のホームページを開くと、川上犬のことが、「生きた文化財」として紹介されている。「文化財」という表現には、しっくりこないものを感じるが、写真も多く掲載されていて、犬好きには、見応えがあると思う。
 川上犬は、猟師たちが、山犬(日本狼)を飼い慣らしてきたものと伝えられている。カモシカ猟の猟犬として使われたそうだ。山岳での猟であり、俊敏さや足腰の強靱さが求められる。今、ところによっては、山岳救助犬として活躍しているそうである。
 川上犬を写真で見ると、どちらかというと頭でっかちで、胸板が厚い。特別格好いいとは言えないが、全体の印象は、体がキリリとしまっており、抜群の運動神経、強靱さが感じられる。それに、いかにも利口そうで、人なつっこい目をしている。犬を飼うなら、こういうのがいいなと思わせる。
 子どもの頃、家にいた犬に似ている。頭蓋はでかめ、毛並みは黒っぽかった。若い頃は、ともかく喧嘩が強く、負けたのを見たことがなかった。年老いて、どこかの犬に噛まれ血を流してしょんぼりしているのを見たときは、本当にかわいそうだった。種類について、親にはシェパードの出来損ないと言われていたが、全体のずんぐり感は川上犬の方に似ていた。
 川上犬は、現在、日本に300頭くらいしかいないという。戦時中の撲殺令で全滅しかかったのを、有志たちが、そこまで回復させたという。もっと増えるといいなと思う。
 害獣を追い払う犬のことを思って、川上犬のことを思い出した。

犬たちを使うこと

2007-11-21 | 【断想】ETC
 近年、鹿、猪、猿、熊などの鳥獣被害の報を頻繁に聞く。その対策のための特別措置法の早期制定を求める動きがある。滋賀県から東京へ要請に来られた方々に会った。
 琵琶湖の竹生島あたりでは、カワウが大繁殖し、漁業従事者を困らせていると訴えられた。そのカワウは、樹木を枯らすなど歴史的な景観をも台無しにしている。今読んでいる平家物語でも、竹生島のことを「心も言も及ばれず」と、美しさを称えている(2006.12.21blog森を荒らすカワウ、2007.01.17blog神々しき竹生島)。
 猪や鹿の話になって、私は「害獣を適度に駆除してくれた狼を復活させなくては。狼は農耕民と共存していた」と言った。これに対し、「最近は野犬もいなくなってしまった。野犬がいたときは、それなりに追いはらってくれた。犬を飼う家も減ってしまった」と応えられた。
 私の頭のなかには、狼のことが大きくあつたので、つい「狼を」と言ったが、「そうか、犬をうまくつかうということでもいいのか」と気づかされた次第である。同時に、犬と人間の関係をはじめ、今の私たちの暮らしぶりに反省すべきところが多々あるなと。例えば、犬の放し飼いができないような状態というのは、いいのかなと。
 今、農業従事者の高齢化がすすんでいる。「鳥獣は、田畑を荒らし、お年寄りから生き甲斐をも奪っている」という。
 このような鳥獣とのことでも、人と自然の調和やバランスがとれていないなあと思わされた。

栗鼠と毬栗

2007-11-20 | 【樹木】ETC
 栗、銀杏、松茸などがのっかったお弁当を食べた。季節感いっぱいのお弁当である。
 前に書いただろうか、栗の実が美味いことを栗鼠はよく知っている。栗の方は、イガ、硬い皮、渋皮で身を守っている。栗鼠は、それと格闘するわけだから、口の周りが血だらけになったりする。

平家物語:松の葉の棲家

2007-11-19 | 【樹木】ETC
 平家物語には、鬼界が島に流された俊寛の棲家について、以下のように記されている。
 「松のひとむらある中に、より竹を柱とし、蘆を結ひ、桁梁に渡し、上にも下にも松の葉をひしと取りかけたれば、雨風たまるべうも見えず」
 俊寛を訪ねた有王は、そのありさまに、信施無慚の罪の報いを見る。
 ここに出てくる松は、海のすぐ近くでもあり、恐らく黒松であろう。