こひしきことの色

2011-01-31 | 【樹木】梅
 むめの花こひしきことの色ぞそふうたて匂ひのきえぬころもに(式子内親王)
 匂いが誘う思い出。
 思いを誘うための匂い。
 梅の花の匂いに歩みをとどめるとき。
 今年はまだ、そんなときがない。
 二月には、どこかの梅林へ。

遊び暮らさな

2011-01-30 | 【樹木】梅
 梅の花咲きたる園の青柳をかづらにしつつ遊び暮らさな(少監土氏百村)
 梅の花を見た。
 いにしえの日の宴を思う。
 「かつては、もし俺の記憶が確かならば、俺の生活は宴であった。誰の心も開き、酒という酒はことごとく流れ出た宴であった。」(ランボオ作・小林秀雄訳「地獄の季節」)
 楽しく、春の日を過ごしたいものだな。
 俺の肉体やあれこれ思う俺がこの世にあるのは、時間の流れの中でわずかの期間のこと。

冬の日が透けて

2011-01-29 | 【樹木】ETC
 このブログは、樹木にまつわることをメインにしてきた。
 しかしながら、ここのところ、樹木への関心が薄れてきた。
 それで、とりあげることが少なくなった。
 ただ、今日は、久しぶりに、樹木図鑑を開いた。
 昭和記念公園で見たロウバイ(蝋梅)の種類の確認のためだ。
 普通のロウバイより花が大きめのソシンロウバイ(素心蝋梅)だった。
 わたしは、春早い野に透明感のある黄色の花びらをつけるロウバイが好きだ。
 それで、このブログでも、いろいろ書いた。
 それなのに、なさけないことに忘れてしまったことも多い。

哲学から歌

2011-01-27 | 読書
 先日、長谷川三千子著の「日本語の哲学」(ちくま新書)を読み終えた。
 読んだとは言うものの、わたしの読解力では追いつかず、字面を見ただけというのが実際だった。存在論を表現する言語能力のこと、「てにおは」などの日本語の持つ言語としての力量のこと、日本語で使う「もの」や「こと」の意味のことなどが書かれていた。
 全体としては、読むのが辛い本だった。
 続いて、前から気になっていた沓掛良彦の「和泉式部幻想」(岩波書店)を読み出した。沓掛良彦は、古いヨーロッパ詩の翻訳で知っており、何かしら共感できるところの多い人だなと思っていた。
 こちらは、読んでいて楽しい。好きな和泉式部のことが綴られていることもあるが、著者の解釈・言いぶりが、しっくりくるのである。
 「和泉式部という女人は、ただ単に恋を詠じて秀でた歌人であるばかりではない」とある。まさにそうだと思う。色恋が基本にあって、そこが魅力の源になっているとしても、人の生死、それにともなう悲しみのことなどを詠じていて、それがなんともいいのである。

隠れた筋肉よ

2011-01-16 | 読書
【本の紹介】
●身体能力を高める「和の所作」/安田登著/ちくま文庫/2010年10月10日発行/630円(税込み)
 この本のキーワードは、「大腰筋」。人体の表面には見えないが、背骨の腰の部分から大腿骨の付け根あたりに伸びている隠れた筋肉である。これが身体能力に大いに関わっていると言う。高齢の能楽師が颯爽と舞い、迫力ある声を発する秘密もそこにあるそうだ。さらに、深い呼吸を得て心を安らかにするにも大きな役割を果たすと。本書には、その筋肉を活性化させる具体的方法も記されている。それは、「和の所作」とされる歩き方、座り方などに秘められていると。著者は能楽師。

世の中は恋繁し

2011-01-15 | 【樹木】梅
 天平二年、大伴旅人がひらいた梅の宴で詠まれた歌。
 万葉集から。豊後守大伴大夫の作。

 世の中は
 恋 繁し
 ゑやかくし あらば
 梅の花にも
 ならましものを

 「恋繁し」、結構ではないか。
 悩みもともなうかも知れないが、他で悩むよりましと言えないか。
 梅の花になりたいなんて世迷いごと。
 梅の花になったら、いいことできないよ。  

宙に浮く心柱

2011-01-14 | 読書
【本の紹介】
●宮大工と歩く奈良の古寺/小川三夫著/文春新書/2010年7月20日発行/950円(税込み)
 平城京遷都千三百年ということで賑わいをみせた奈良。その地の法隆寺から長弓寺まで古刹十二ヶ所の建造物を宮大工棟梁である著者が案内してくれる。確かな視線と技のもと、その美しさの秘密、構造や工法のもつ特徴から匠たちの心意気まで坦々と語られる。五重塔の心柱は宙に浮いていることなど、興味深い知識も。感動は、対象物への知識があって、より高まるもの。この一書に目を通したあとに奈良の古寺を訪ねれば、何倍もの楽しみを得ることになろう。(聞き書き・塩野米松)

「梅華皮」

2011-01-13 | 【樹木】梅
 梅にちなんで、やきもののことである。
 「梅華皮」と書いて、「かいらぎ」とよむ。
 茶碗の下部から高台に見られる。
 燃焼が足りなくて、釉薬が溶けきらず、むらをなし、縮れたようなさまを言う。
 鮫皮とも言う。
 井戸茶碗の見どころとされ、茶人は、それをめでたりする。
 俺は、あまり好きではない。 

梅の花かと

2011-01-12 | 【樹木】梅
 わがやどの冬木のうえに降る雪を梅の花かとうち見つるかも(巨勢朝臣宿奈麻呂)
 こころが平静でないと、見えないものを見たり、見ても気づかなかったり、
 かんちがいしたりするもの。
 平静であっても、あることだけど。
 彼女のそぶりを見間違えてうぬぼれたり、
 彼女の愛のサインを見逃してしまったり、
 いろいろあるね。