「死」とともに

2014-10-14 | 読書
 フェデリコ・ガルシーア・ロルカの詩について、何を言いたいのか分からないとの感想を書いた。
 そう言いながら、長谷川四郎訳「ロルカ詩集」(みすず書房)を飽きもせず、何日もかけて目を通した。
 わたしを惹きつけたていたのは、何だったのだろうか。
 気になる詩句があったページの端を折りながら、頁をめくった。
 その部分だけ見かえして、気づいた。
 直截な「死」のことが、そこにあった。
 前に取り上げた詩をはぶいて、幾つか書き写す。

 ●「不意打ち」と言う詩の部分。
  短刀を胸に
  道ばたにころがっていた
  見知らぬ男
  ・・・・・
  短刀を胸に
  死んで街路にころがっていた
  彼を知る者
  一人としていなかった

 ●「デ・プロフンディス」と言う詩の冒頭の3行
  ひからびた地面の下ふかく
  とこしえにここに眠る
  恋わずらいの男女百名

 ●「騎馬行」と言う5節からなる詩の2節、3節
  黒い馬 大きな月
  鞍袋にオリーブの実
  ぼくは道を知っている
  だがコルドバにいけないだろう
  平野をこえ 風をこえ
  黒い馬 赤い月
  死がぼくを見ている
  コルドバの塔の上から

 
 「生まれた人で、死なない人はいない」と誰か言っていた。
 生まれたわたしは、死が気になる。
 死を思うことは、大切なことと、思い込んでいる。
 ロルカの詩には、つねに死の影がある。

記憶の中のユリノキ

2014-10-13 | 【樹木】ETC
 葉が早く枯れ落ちるユリノキ
 記憶の中のユリノキ
 住まいから多摩動物公園駅へ行く道
 ユリノキの並木があった
 その道にモノレールが走ることになり
 伐採された
 それなりに立派な木だった
 もったいないと思った
 その葉の形から半纏木
 花の形からチューリップツリー
 花は木の上方に空を向いて咲く
 だからあまり見られることがない

王朝の崩壊

2014-10-08 | 読書
【本の紹介】
●中国崩壊カウントダウン/石平著/宝島社/2014年7月14日発行/1080円(税込み)
 中国における秦の始皇帝にはじまり、現在の中国共産党王朝にいたる政治権力の変遷が概観できる一書。王朝の崩壊がいかなる要件のもとに起こるかが分析されている。権力者による国家の私物化、流民の大量発生、知識人の体制批判と離反が指摘され、今の赤い王朝のなかで、それが歴然としてきていると。権力中枢における内部対立、経済成長と同時進行の賄賂の横行、日本の人口を超える流民の発生・予備軍の増大・・・崩壊のシナリオが描かれる。他人事ですまぬ中国のこと、一読しておくのがいい。

たれかとまりて

2014-10-06 | 読書
 堤中納言物語「虫めづる姫君」に、作者の思想・人生観が端的に表れている文言がある。
 格別、めずらしいものではないが、備忘に記しておく。
 「・・・人は夢まぼろしのやうなる世に、たれかとまりて、あしきことをもみ、よきをもみ思ふべき」
 真実は、善悪の彼岸にあるというか、真実といっても、それは、夢まぼろしに過ぎないということか。
 右馬の佐が登場してあとの個所を何度か読んだ。
 歌のやり取り、女装しての姫の屋敷への忍び込み。
 色好みの男たるには、怠惰であってはいけない。怠惰であっては、色好みとはならない。

道家の思想を

2014-10-06 | 読書
【本の紹介】
●入門老荘思想/湯浅邦弘著/ちくま新書/2014年7月10日発行/907円(税込み)
 老子や荘子の思想に接したいという時、まず手に取るのにふさわしい一書。思想そのものの紹介も、近年の新しい資料の発見を踏まえて行われている。テキストによって、同じ箇所の文言に違いがあることを知ることは重要であろう。また、西欧や日本への伝播についても語られる。西欧では、孔子を筆頭とする儒家より、老荘の道家の思想が注目されたとある。ミヒャエル・エンデの作品への影響にも言及される。いずれにしろ、世俗の一般的価値観に汲々とせず、こころ静かな日々をと言う人は一読を。

死がぼくを見ている

2014-10-03 | 読書
 ロルカ詩集(長谷川四郎訳/みすず書房/1967年発行)を時間をかけて読んだ。
 意味をとるということは、ほとんど出来なかった。
 なんだか、分からないのだ。
 ただ、ところどころの詩句に、なんだか魅かれるのだ。
 だから、読むというか、目を通すことが出来たのだと思う。
 それに、最近は、意味がとれなくても、気にならなくなってきた。
 わざわざ、意味不明のものを読みたくなったりする。
 哲学や評論では、駄目だが、詩や歌なら、いい。
 砂の山に、ひとつぶの光るものを見つけるような。
 例えば、「イグナシオ・サーンチェス・メヒーアスを弔う歌」という詩の中の一部。
  午後の五時
  のこるは死 死だけだった
 同じ詩の別の個所
  牡牛もイチジクの木もきみを知らない
  馬どもの きみの家のアリの群れも
  子供も午後の時もきみを知らない
  永遠にきみは死んでしまったから

変わり者

2014-10-03 | 読書
 堤中納言物語の「虫めづる姫君」をザッと一度読む。
 その後、もう一度、脚注も見ながら、ゆっくり読む。
 それから、よく意味のとれないところをポツリポツリ読む。
 少しづつ、全体がつかめてきているような気持ちになる。
 虫をめづる変わり者の姫君の話だけど、
 このような話を書いた作者の心根を想うと、
 いかなる時代にも、世俗に埋没しない人がいることに気づく。
 それが、本人が、元々、望んだことかどうかは、分からぬが。
 俺は、そんな人が好きなんだなあ。

ゆとりのメルクマール

2014-10-03 | 【断想】蛇
 住まいの近くに、程久保川という小さな川がある。
 そのほとりを歩くときは、いつも蛇がいないか気にしている。
 よく蛇がいる場所があるのだ。
 今年は、一度も見かけていない。
 もう10月。
 今年は、見ないままに終わりそうだ。
 蛇を見かけるかどうかを、どれだけ豊かな自然が残っているか、
 自分が、どれだけ、ゆとりをもって時を過ごしているかのメルクマールにしている。
 自然環境の方には、大きな変化はないように思う。
 あまり、自信をもっては言えないが。
 ただ、はっきりしているのは、
 自分が、川沿いを歩くことが少なくなっていることだ。
 好ましくないことだ。