雨降れば

2013-12-19 | 【断想】ETC
 雨降ればもの思うことも増さりけり淀のわたりの水ならねども(和泉式部)
 そとは雨降り。
 うちに女の泣く声。
 悲しい思いで。

唐鼠黐に鵯

2013-12-19 | 【樹木】ETC
 窓から見えるところにトウネズミモチ(唐鼠黐)の木がある。
 黒っぽい実をつけている。
 今年は、少しつきが悪いように見える。
 毎年見ているから、このように感じるようになったのだろう。
 先日、鵯たちが来ていた。
 可愛げのない声をあげて。 

かたがたに漂う

2013-12-19 | 【断想】ETC
 近く見る人もわが身もかたがたに漂う雲とならんとすらん(和泉式部)
 先日、同世代の友人が急逝した。
 かつて、同じ事務所で、同じ目標をもって、ともに働いた。
 過ぎてしまった歳月を思えば、一時期のことであるが、一度抱いた同志感は、変わることはなかった。
 その事務所がなくなってからも、定例の年二回の「同窓会」他で顔を合わせた。
 「俺たちは、いい仲間だな」といつも思った。
 葬儀の翌日、いつも集まるメンバーのひとりが催すお茶会があった。
 彼の突然の死の前から、予定されていたものだ。
 茶室に「無事」と書かれた掛け軸があった。
 「事無し」・・・・。
 なんだか、それでいいのだと感じた。
 お茶会の帰り、友のひとりが私を見て、「そんなに長生きしそうには見えないな」と言った。
 「そうかも知れないな」と思った。

花みる程の心にも

2013-12-13 | 【断想】ETC
 野辺に出でて花みる程の心にもつゆ忘られぬものは世の中(和泉式部)
 そうだね。
 空や風。
 木々や花々。
 これらに、他の一切の思いを忘れることはある。
 それによって、気持ちがリセットされることもある。
 しかし、それも束の間。
 俗世のわずらいから離れるということはない。
 だけど、その束の間の解放が、心の健康につながるのでないか。
 和泉式部が、この歌をつくったときの「世の中」とは何だったのか。
 やはり、色や恋いをふくめた人間関係だったろうか。

50年来の洋食屋

2013-12-13 | 【断想】ETC
 愛宕下通りぞいのビルの地下に降りた。
 昼食をとるためである。
 幾つかある店のひとつの洋食屋に入った。
 変哲のない店、店の調度は古い。
 かつて、ここに入ったことがあるはずである。
 少なくとも35年以上前。
 ハンバーグライスを注文した。
 ひとつの皿に、ご飯。
 もうひとつの皿に、ハンバーグとサラダと目玉焼き。
 味噌汁のカップがつく。
 なんとなく、なつかしいスタイル。
 「この店は古いんですか」
 帰りがけに聞いた。
 50年はやっているとの返事。
 かつて、虎の門で、今、西新橋で仕事。
 界隈の店は、かなり変わっている。
 だけど、そんな店もある。
 なんだか、嬉しかった。

われ何事か思はまし

2013-12-11 | 【断想】ETC
 日を経つつ我何事か思はまし風の前なる木の葉なりせば(和泉式部)
 暗闇の道。
 やってきたクルマのライトが道端の枯葉をあきらかにする。
 瞬時のこと。
 歩く老婆の足下がおぼつかない。
 耳は聞こえているのだろうか。
 枯葉のうえで、老婆とすれ違う。

№2

2013-12-10 | 【断想】ETC
 古来、政治権力をめぐる争いの中では、「ナンバー2は、消される」と言われる。
 自由社会の中では、それは、人の生命に直結したかたちで露骨に現れることは少ない。
 しかし、自らの立場を脅かす者を、なきものにしたいという人の心性は変わらない。
 政治の場面に限られたことではない。
 誰だって、自分の胸に手を当てれば、分かることであろう。

暮れぬる秋

2013-12-06 | 【断想】ETC
 かくしつつ暮れぬる秋と老いぬれどしかすがになほものぞかなしき(能因)
 新古今和歌集より。
 かくて秋は暮れ、わたしも老いてしまった。
 やむを得ぬこととはいえ、やっぱりかなしいな。
 生きていれば、必ず老いる。
 病気にもなる。
 そして、死ぬ。
 自然なこと。
 それは、かなしいこと、さみしいこと。
 西脇順三郎の「旅人かへらず」の39の一部。
  うつつは淋しい
  淋しく感ずるが故に我あり
  淋しみは存在の根本
  淋しみは美の本願なり
  美は永劫の象徴

古里のもみぢ葉

2013-12-06 | 【断想】ETC
 古里は散るもみぢ葉に埋もれて軒のしのぶに秋風ぞ吹く(源俊頼)
 「新古今和歌集」巻第五に収められている一首である。
 枯葉のうえを歩くのは、いいものだ。
 少年の頃、降りつもった落ち葉で遊んだことが偲ばれる。

ゆくへさだめぬ

2013-12-05 | 【樹木】楓
 「もみぢ」の季節。
 「古今和歌集」より。よみ人しらず。
  秋風にあへず散りぬるもみぢばのゆくへさだめぬ我ぞかなしき
 ゆくへが分からないのも、つまらないゆくへが見えすぎるのもかなしいものだ。
 いずれにしろ、気持ちの持ち方次第かな。

赤坂見附の冬桜

2013-12-04 | 【樹木】櫻
 冬桜の花が咲いていた。
 赤坂見附の交差点に。
 その冬桜に気づいたのは、もう何年も前。
 過ぎた日のうちに亡くなった友を思い出す。
 過ぎた日のあやまちに胸が痛い。
 なくしたものを取り戻すことはできない。

夢の殻

2013-12-04 | 【草花】ETC
 エノコログサの写真を撮る。
 焦点があわず、ぼけてしまった。
 尾花も風に揺れ、ぼけてしまった。
 ねばり、幾度も試めばいいのだが。
 そこまでやる気がなかった。
 西脇順三郎の「旅人かへらず」122
  十二月の初め
  えのころ草も枯れ
  黄金の夢は去り
  夢の殻のふるへる

聖書の史実

2013-12-03 | 読書
【本の紹介】
●聖書考古学/長谷川修一著/中公新書/2013年2月25発行/882円(税込み)
 紀元前、中東の地では激しい王権の盛衰があった。旧約聖書における記述と考古学の調査研究で明らかになった知見とが照合され、どこまでが史実なのかが語られる。神とイスラエルの民との契約という宗教的に重要な出来事であるモーセの出エジプトは、遺跡の発掘調査からは裏付けが得られていないこと、ダビデとゴリアトとの戦いにしてもフィクションが混じっている可能性が高いこと、ともかく興味深い。聖書は史実の後の世に、特定の意図のもと綴られた文書であるという基本性格を踏まえて接すべきであろう。