紅にほふ桃の花

2010-03-31 | 【樹木】ETC
 春の苑 くれなゐにほふ桃の花 下てる道に出で立つをとめ(大伴家持)
 おだやかさ、やわらぎ、ほのぼの、ういういしさ、そんな中に身をおくときもあっていいね。
 桃の花の季節。
 街を歩くとところどころで見かける。
 通常、モモ(桃)と言うと、桃の木になる果実を指す。
 桃の木は、採果用と観賞用の品種に分けられる。
 花や樹形を楽しむものをハナモモ(花桃)と言う。

妖精の恋

2010-03-30 | 【草花】ETC
 妖精は、美少年ナルシス(ナルキッソス)に恋をした。
 だけど、相手にされなかった。
 恋に痩せ細り、姿が消えて、声だけになった。
 妖精の名は、エコー。
 恋がもたらす幸不幸。
 万葉集より、恋の激情。
 君が行く道の長手を繰りたたね焼き亡さむ天の火もがも(狭野弟上娘子)

ナルシストの死後

2010-03-29 | 【草花】ETC
 スイセンは漢字では、水仙と書く。
 水の仙なるものである。
 その名は中国由来と言われている。
 だけど、その元は、やはりギリシャの神話か。
 中国にも古くには、水仙なる名はなかったそうだ。
 水辺に生え、己の姿を泉にうつす。
 ナルシストの死後の姿。

水仙は彼岸花の仲間

2010-03-28 | 【草花】ETC
 ヒガンバナはリコリンなる有毒物質をもっている。
 己の身をまもるためである。
 墓場にヒガンバナ。
 動物に墓を荒らされないため。
 そんな言い方を聞いたことがある。
 スイセンは、ヒガンバナ科。
 毒素を有している。
 その葉はユリ科のニラの葉に似て、細く平たい。
 間違って食べたりすると中毒を起こしたりする。

「ナルシスの墓」

2010-03-27 | 【草花】ETC
 いまの季節、近隣の庭に野に黄色い花のスイセン(水仙)が見られる。
 副冠が花弁より長いラッパスイセンの系統だ。
 住まいの前を流れる程久保川の水辺にも咲いている。
 そのスイセンは流れる水に自分の姿を見ることができるだろうか。
 スイセンは、フランス語でナルシス。
 ギリシャ神話のナルシスは、呪いをかけられ、自分自身の姿に恋をしてしまう。
 水面にうつる己を抱きしめようと手をばすと、その姿は乱れ消えてしまう。
 その恋は決して成就することはない。
 みのらぬ恋に憔悴したナルシスは息絶える。
 そこに生えたのがスイセン。
 ジャン・コクトーの詩に「ナルシスの墓」というのがある。
 以下、堀口大學訳である。
  その正体を現わして
  いまこの水に留るは
  世を欺いて生きたもの。
  死があざけってやるために
  いま裏がえしにして見せる
  手袋の指同様に。

春の野に菫摘み

2010-03-26 | 【草花】ETC
 春の野に菫摘みにと来しわれそ 野を懐かしみ一夜寝にける(山部赤人)
 菫摘みなんてしたことないなあ。
 したことないことたくさんあるな。
 花の横顔が、大工道具の墨入れに似ていた。
 それで、「すみれ」とか。

この世にし楽しくあらば

2010-03-25 | 読書
 上村悦子著の「万葉集入門」(講談社学術文庫)を読んでいる。
 大伴旅人の歌には、老荘思想が表れていて、「現世を享楽的に過ごそうとする刹那主義的傾向が濃厚である」との評があった。それは、批判的に言われているものではない。ありのままのことしてであった。
 わたしは、大伴旅人の歌に魅かれているのだが、このように解説されると、己の嗜好もどこにあるかが、改めて考えさせられる。
 この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥にも吾はなりなむ(巻第三)
  この世を楽しくやろう。
  それが一番だ。
  来世に虫になろうが、鳥になろうがかまわない。
  さあ、みんなで杯をあげようではないか。
 そういう、酒を賛する歌のひとつである。
 老荘思想とあるが、西洋流には、エピキュリアンの思想ということか。

空色の美しい花

2010-03-25 | 【草花】ETC
 空色の美しい花が終わると、ぷっくりとふくらみがふたつ、そこに実る。
 うぶ毛が生えている。
 その果実が陰嚢を連想させ、オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)と名がついた。
 「大」がついたのは、同じ仲間の「イヌノフグリ」より大きいから。
 あくまで、その比較上のことで、大犬とは桁違いに小さくかわいい。

「春香」という名の岩牡蠣

2010-03-24 | 【断想】牡蠣
 先日、今年になって初めての岩牡蠣を食べた。
 岩牡蠣は、夏牡蠣とも呼ばれ、五月頃から出まわる。
 まだ三月、桜の季節の前である。
 昼食をと入ったオイスター・バーのメニューに岩牡蠣を見つけ、「もう出ているのか」と、注文せずにはおれなかった。
 食べたのは、島根県隠岐の産で、「春香」と名づけられていた。
 ひとくちでは少し大きめかなと思いつつガブリと。
 メニューには、「日本で一番早く食べられる岩牡蠣」との説明があった。
 もう、岩牡蠣が楽しめる。
 さて、また食べに行かなくては。

花桃の候

2010-03-23 | 【樹木】ETC
 大概の梅の花が散った今、同じバラ科の桃の花が咲いて、ひとの心をなぐさめる。
 その花期は、雛祭り、桃の節句の時期。
 総じて梅よりはなやかである。
 園芸品種で、花が美しいものを花桃(ハナモモ)と呼ぶ。