なほあさましき

2013-10-31 | 【断想】ETC
真菰草まことにわれは思へどもなほあさましき淀の沢水
和泉式部の歌である。
あさましいというか、偽りというか、わが思い、わが愛。
どこまでつづくか、泥濘道。

N君と胡桃の実

2013-10-15 | 【樹木】ETC
 昨日、鳥沢というあたりを歩いていた。
 道に木の実が落ちていた。
 足で踏みつけても割れない。
 胡桃だった。
 見あげると、木の枝に胡桃の実。
 胡桃というと思い出す。
 金沢の笠舞にある猿丸神社の裏手に胡桃の木があった。
 N君が教えてくれたのだ。
 僕は、そういうことを知っているN君を凄いなと思った。
 僕たちは、それぞれの持ち味を認めあっていた。 
 知らず知らず、尊敬しあうというと大袈裟だが、そういうところがあった。
 半世紀以上前のことだけど、しっかり覚えている。

業の深さよ

2013-10-04 | 読書
●能の見方/松岡心平著/角川文庫/2013年8月25日発行/819円
 1997年に、角川叢書から刊行された「能-中世からの響き」の文庫化。歴史、作品、鑑賞という区分けで三部構成になっている。
 能の基礎知識に乏しい私には、いささか読みづらい本だった。作品の背景など周辺事項が中心に記述されているように見えた。作品そのものがもつ情動的側面、人間の罪業のようなものについても、もっとアプローチされてもいいのにと言う印象をもった。
 本書に刺激され、今後、次の作品に接してみたいと思う。
 ・世阿弥が74歳の時の作品「金島書」。
 ・元雅の「重衡」。
 ・「井筒」の解説の中で、紀貫之、世阿弥に「性の反転、複綜」が見られるとあった。興味深かった。改めて、読んでみようかと思った。

「いのちの森」

2013-10-04 | 読書
【本の紹介】
●森の力/宮脇昭著/講談社現代新書/2013年4月18日発行/777円(税込み)
 サブタイトルに「植物生態学者の理論と実践」とある。著者は八十五歳にして、今なお元気に植樹活動に邁進、長年の植生に関する調査・研究のエキスがわかりやすく語られた好著である。この土地を自然のいとなみにまかせた場合、いかなる木が育ち、森となるかという調査に発し、「いのちの森」とは何かを明らかにしている。関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災の火や津波から、人の命を救った木々のこと、森の復活に取り組む人々のことが述べられ、われらの文明のあり方も問われる。

「原発事故報告書」

2013-10-04 | 読書
【本の紹介】
●「原発事故報告書」の真実とウソ/塩谷喜雄著/文春新書/2013年2月20日発行/788円(税込み)
 東電福島第一原発の事故原因等に関し、国会、政府、民間、東電から調査報告書が出されている。これらを比較・検証した労作。地震、津波によるダメージの真相、炉心溶融という最悪事態は回避できなかったのかという対応のあり方を問う。全体を通じて、人や組織はいかに自己都合のとらえ方をするものかと感じられる。東電の報告には、地震に関する部分に大きな欠落があると。メディアの官邸報道にも言及。読み終えて、わが国のエネルギー政策、社会の責任体制という根本問題も気になる。