“クエスト”

2023-08-26 | 【断想】音楽

 第一印象は、ハイレベルなジャズだなあと言うこと。
 技量、意気込み、成熟度・・・素晴らしいと感じた。
 演奏メンバーの後年のプレイを思えば、そんなにベテランの域とは言えないが、それでも、ハイセンス、ハイレベルな感じである。
 マル・ウォルドロンの「ザ・クエスト」(1961 Prestige)。
 〈メンバー〉
 エリック・ドルフィー(as.cl)
 ブッカー・アーヴィン(ts)
 マル・ウォルドロン(p)
 ロン・カーター(cello)
 ジョー・ベンジャミン(b)
 チャーリー・パーシップ(ds)
 ロン・カーターは、ベースではなく、チェロを弾いている。
 それが、全体のムードをつくっているようにも思う。
 エリック・ドルフィーはもちろん、ブッカー・アーヴィンのテナーも宙を駆けるようだ。
 マル・ウォルドロンのピアノも、力強い。
 〈ソング〉
 1.ステイタス・シーキング
 2.ドゥクイリティー
 3.サーティン
 4.ウィ・ディディット
 5.ウォーム・カント
 6.ワープ・アンド・ウーフ
 7.ウァイアー・ワルツ
 「ウォーム・カント」では、ドルフィーは、クラリネットを吹く。
 静かで穏やかな空気が流れている。
 他の曲も含めて、全体がそうである。

 


“ルッキング・アヘッド”

2023-08-22 | 【断想】音楽

 ケン・マッキンタイアーのリーダー・アルバム「ルッキング・アヘッド」。
 1960年録音で、Swing-New Jazz-ビクター・エンタテイメントからの一枚である。
 「ルッキング・アヘッド」と言うと、セシル・テイラーのアルバムの方が知られていると思うが、こちらは、エリック・ドルフィーの隠れ名盤と評されている。
 ただ、このアルバムは、ドルフィーとはおもむきの異なるアルト・サックス奏者であるケン・マッキンタイアーとの共演で、そこに独特のおもしろさがあるとも評されている。
 以前から、聞いてみたい一枚であったが、なかなかお目にかかれなかった。
 ところが、先日、ひょっこりLP盤を見つけ、購入した。結構高い値がついていた。
 そうしたら、その後、廉価なCD盤も見つけた。なんだか、がっくり。
 演奏メンバーは、以下の通りである。
 ケン・マッキンタイアー(as,fl)
 エリック・ドルフィー(as,fl,bcl)
 ウォルター・ビショップ(p)
 サム・ジョーンズ(b)
 アート・テイラー(ds)
  〈曲目〉
 A-1 ラウティア
 A-2 カーティシィ
 A-3 ジョーズ・チューン
 A-4 ゼイ・オール・ライト
 B-1  ヘッド・シェイキン
 B-2 ディアンナ
 無邪気に、巫山戯て演っているかのようなケン・マッキンタイアーのアルト。
 なんとも摩訶不思議なムードが、そこにある。
 それに、あわせて、ドルフィーもお茶目である。
 ピアノもトイ・ピアノじゃないのと言う雰囲気。
 名盤というと一般的、希(まれ)盤と言った方が、賛となりそうだ。
 なんだか、ヘンテコで、気に入りました。
 ちなみに、「ルッキング・アヘッド」は、〈前方を見る〉と言うような意味。
 どこが、〈ルッキング・アヘッド〉なのだろうか。
 懐かしい、単細胞。
 ハード・バップのスタイルの一作である。
 梁塵秘抄の有名な歌があたまに浮かぶ。
  遊びをせんとや生まれけむ
  戯れせんとや生まれけん
  遊ぶ子どもの声聞けば
  わが身さへこそ揺るがるれ


“ヤコブの夢”

2023-08-20 | 【断想】音楽

 ヤコブの夢に現れた神は、次のように語った。
 「・・・・あなたが今横たわっているこの土地を、あなたとあなたの子孫に与える。あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなり、西へ、東へ、北へ、南へと広がっていくであろう。・・・(日本聖書協会・新共同訳)」
 ヤコブの夢には、地上から天国につづく梯子(階段)が現れ、そこを神の御使いたちが行き来している。この情景は、多くの画家によって描かれている。
 クシシュトフ・ペンデレツキの管弦楽曲「ヤコブの夢」を聞く。
 そこに、ペンデレツキが思い描いた神が登場し、語る。
 僕は、そんな風に思って聞く。
 傍らにいて、心和やかになる神ではない。


何時の日か“長閑に”

2023-08-19 | 【断想】音楽

 クシシュトフ・ペンデレツキ「ヴァイオリン協奏曲第1番」(1976)
 後に、「ヴァイオリン協奏曲第2番〈メタモルフォーゼン〉」(1992-95)を作曲。
  演奏は、ポーランド国立放送交響楽団。
 CDは、POLSKIE NAGRANIA。
 音楽は、厳しく、激しく、鋭い、・・・・。
 僕たちは、どういう時代を生きているのか。。
 かつての長閑さを取り戻すと言うことはあるのだろうか。


“フリー”

2023-08-19 | 【断想】音楽

 アルバート・アイラーのデビュー・アルバム「サムシング・ディファレント‼‼‼」(バード・ノーツ)から、唯一のオリジナル曲「フリー」を聞く。
 この録音は、スウェーデンのストックフォルムで行われている。
 CDで、一枚に収まったこのアルバムを入手できるようになったのは、そんな昔のことでは無い。
 「フリー」は、フリーらしく演奏されている。
 アイラーの息づかいが聞こえるが、後に現れるうねるような情動の表出は余りない。


“ポーランド・レクイエム”

2023-08-19 | 【断想】音楽

 クシシュトフ・ペンデレツキの「ポーランド・レクイエム(1984)」のCDを入手。
 手に取って、2枚組みであることに気づいた。
 オーソドックスな本格的レクイエムに近い構成だ。
 いくつかの個別に作った曲をまとめて、構成されているようだ。
  こんな大作だとは思っていなかった。
 1回で全部を聞くことは無理だろうから、少しづつとなるだろう。
 ペンデレツキの音楽について感じていることがある。
 いつも〈激しさ〉があるのだ。
 それは、人が持つ業への深い自覚によるもののように思える。
 神の憐れみ、救済にしか逃れようのない罪の自覚と言えるか。
 そのようなことが、全体主義の脅威によって、より鮮明に自覚されるというか。
 自分が愛する者が殺されて、殺し屋を憎まずにおられるだろうか。
 でも、憎しみを持つとき、殺し屋と同じになってしまうと思う自覚。
 わたしたちは、罪深さから逃れられない。
 せめてできるのは、そのような事態を招かないようにすること。
 その手立ては、具体的に何があるのか。
 それを、曖昧にしてはいけない。
 さて、「ポーランド・レクイエム」、曲の構成。
 【CD 1】 
 1   レクイエム・エテルナム(入祭文)
 2   キリエ
 3~9 ディエス・イレ
  【CD 2】
 1   ディエス・イレ
 2   ニュス・デイ(神羊誦)
   3   ルックス・エテルナ(聖体拝領誦)

 4   リベラ・メ(赦祷文)
 5   フィナーレ
 〈演奏〉
 北ドイツ放送合唱団
 バイエルン放送合唱団
 北ドイツ放送交響楽団
 その他、ヴォーカリスト
 指揮:クシシュトフ・ペンデレツキ
 今日は、10のトラックになっている「ディエス・イレ」を聞いた。
 「神よ、罪深きわたしを救い給え」を歌われる。


“ヒロシマ”

2023-08-19 | 【断想】音楽

 クシシュトフ・ペンデレツキの作品集、初期の作品をまとめたものなのだろうか。
 More 20th-Century Classics on EMIの一枚である。
 CD2枚組になっていて、以下の曲が収録されている。
 ペンデレツキの名前を国際的にした「広島の犠牲者に捧げる哀歌」藻収められている。
 曲種いろいろで、演奏者もいろいろ。
 ペンデレツキ自身がタクトを振っているものもある。
 【CD 1】
 1.アナクラシス《管弦楽曲》1959-60
 2.広島の犠牲者に捧げる哀歌《弦楽合奏曲》1959-60
 3.フォノグラシ《管弦楽曲》1973
 4.デ・ナトゥーラ・ソノリス第1番《管弦楽曲》1966
 5.カプリッチョ《ヴァイオリン協奏曲》1972
 6.カンティクム・カンティコルム・サロモンス《合唱曲》1970
 7.デ・ナトゥーラ・ソノリス第2番《管弦楽曲》1971
 8.ヤコブの夢《管弦楽曲》
  【CD 2】
 1.放射《管弦楽曲》1959
 2.ハープシコードと管弦楽のためのパルティータ 1971/91
 3.チェロ協奏曲第1番 1972
 4.交響曲第1番〈1.Arche-Dynamisu 1〉 1973
 5.交響曲第1番〈2.Dynamisu 2-Arche 2〉 1973
 6.クラリネットとピアノのための3つの小品〈1.アレグロ〉
 7.クラリネットとピアノのための3つの小品〈2.アンダンテ・カンターヴィレ〉
 8.クラリネットとピアノのための3つの小品〈3.アレグロ・マ・ノン・トロッポ〉
 ペンデレツキは、まさしく現代の作曲家、1933年の生まれである。
 亡くなったのは2020年3月29日、つい先年なのだ。
 ペンデレツキのことが載っている本では、ほとんどまだ存命中である。
  「広島の犠牲者に捧げる哀歌」を聞いた。
 原子爆弾が落とされたときの広島の地と空が思い浮かんでくる。
 “哀歌”と言うのは、曲そのものにそくせば、適切とは思えない。
 哀悼というより、悲劇そのもの、人の業そのものである。


“ボス”

2023-08-17 | 【断想】音楽

 スタンリー・タレンタインの「ザ・マン」(1963 J!MCO)。
 魅力は、スタンリー・タレンタインのテナーの男ぶり。
 黒くて太くて、ジャージー。
 ピアノのトミー・フラナガン(T.F)やソニー・クラーク(S.C)のジャズ・センス。
 ベースは、ジョージ・デュビビエ、ドラムスは、マックス・ローチである。
 〈収録曲〉
 1.レッツ・グルーブ T.F
 2.シェリ S.C
 3.ストールン・スウィーツ T.F
 4.マイルド・イズ・ザ・ムード S.C
 5.マイナー・ムード S.C
 6.タイム・アフター・タイム T.F
 7.マイ・ガール・イズ・ジャスト・イナフ・ウーマン・フォー・ミー
 久しぶりに聞いたスタンリー・タレンタイン。
 満足させてくれた。


“ラスト・デイト”

2023-08-12 | 【断想】音楽

 これまでに幾度となく聞いたお気に入りのアルバムの一枚だ。
 エリック・ドルフィーの「ラスト・デイト」(1964 fontana)
 彼は、何時聞いても素晴らしい。
 1964年、ベルリンで、36歳で死んでしまった。

 M
 彼とのラスト・デイトはいつだったろうか。
 おそらく、最後の出会いでも、喧嘩状態だったかな。
 一時期、一緒に焼き肉を食べて、ビールを飲んで、普通にしてた時もあったのに。
 S
 病院帰りに、会いに来てくれた。
 「死」の話をした。
 G
 肩を寄せ合い、恋人同士のように、駅まで歩いた。
 しばらくあとに、死んでしまった。


“ル・ドゥブル”

2023-08-12 | 【断想】音楽

 現代曲で、もう一曲。
 以前聞いて、そのよさが分からなかったもののひとつ。
 音楽的な技法のことなどは、わたしは分からない。
 アンリ・デュティーユの「交響曲第2番“ル・ドゥブル”」。
 1959年に書かれた曲だ。
 三つの楽章で構成されている。
 指揮:ヤン・パスカル・トルトゥリエ
 演奏:BBCフィルハーモニック
 CD:CHANDOS
 第2楽章:図体のでかい可愛いと言えない妖精が現れて、何かを語っている感じなのだ。
 教訓的では無く、押しつけがましいところも無い。
 第3楽章:結論を出そうと急いでいるような感じ。
 「ル・ドゥブル:La Double」は、ダブル、二重と言うことか。


クリスマス・シンフォニー

2023-08-12 | 【断想】音楽

 クシシュトフ・ペンデレツキは、1933年生まれのポ-ランドの作曲家。
 その音楽には迫力がある。崇高さ、重量感、美しさが感じられる。
 以前、「《聖ルカ伝》による主イエス・キリストの受難と死(ルカ受難曲)」を聞いたことがある。
 このブログにその時の感想が、“凄い”と記してある。
 ちょっと聞き返したら、やっぱり  “凄い”。
 それで、別の曲を聞いてみたいと思った。
 代表的作品に、次のようなものがある。
 「ダヴィデの詩篇」(1958)
 「アナクラシス」(1959-60)
 「広島の犠牲者に捧げる哀歌」(1960)
 「スターバト・マーテル」(1962) 
 「ディエス・イレ」(1967)
 「ウトレニア」(1970-71)
 「ポーランド・レクイエム」(1984)
 「交響曲第三番」(1988-95)
 そう言うことで、手に入った 「交響曲第二番・クリスマス・シンフォニー」(1979-80)を聞くことにした。
 曲は、2部構成。
 壮重である。
 激しいところもある。
 ペンデレツキの胸の内が気になる。
 ポーランドの歴史、共産主義圏におかれていたことなどが気になる。
 決して、軽やかではないのである。
 現代音楽によくある“わけのわからなさ”“ひとりよがり”“こけおどし”等はない。
 演奏は、ポーランド国立放送交響楽団。
 CDは、POLSKIE NAGRANIA。


“エレミアの哀歌”

2023-08-10 | 【断想】音楽

 16世紀の作曲家トマス・タリスの「エレミアの哀歌」を、ウインチェスター・カテドラル聖歌隊(WINCHESTER CATHEDRAL CHOIR)で聞く。
 for five voicesの声楽曲である。
 2部構成で、(1) 7'42、(2) 13'08。
 1989年に録音されたhyperionからのCD盤。
 旧約聖書、預言者エレミアによるとされる「哀歌」の末尾。
 第5章19節から22節、新共同訳。
 主よ、あなたはとこしえにいまし
 代々に続く御座にいます方。
 なぜ、いつまでもわたしたちを忘れ
 果てしなく見捨てておかれるのですか。
 主よ、御もとに立ち帰らせてください。
 わたしたちは立ち帰ります。
 わたしたちの日々を新しくして
 昔のようにしてください。
 あなたは激しく憤り
 わたしたちをまったく見捨てられました。


マイルスで“オレオ”

2023-08-06 | 【断想】音楽

 1956年のマイルス・ディヴィス・クインテットによるマラソン・セッションから生まれた4枚のアルバム、マイルス・ディヴィスを余り聞かないわたしだが、この時期の演奏はとても素晴らしいと思っている。
 その一枚「リラクシン」の4曲目に「オレオ」。
 グッドだった。


幸福という名の獣

2023-08-06 | 【断想】音楽

 ブリジット・フォンテーヌ(Brigitte Fontaine)は、1939年6月24日生まれ。
 彼女のアルバムは、以下の4枚を持っている。
 今日は、「幸福:Brigitte Fontaine et Areski Le Bonheur」を聞こうかな。
 1.1968 ブリジット・フォンテーヌは…:Brigitte Fontaine est folle(Saravah)
 2.1969 ラジオのように: Comme à la radio (Saravah)
 3.1975 幸福: Le Bonheur (Saravah)
 4.1988 フレンチ・コラソン:French corazon(Midi/EMI)
 〈ソング〉
 1.かぼちゃ
 2.芝居
 3.星と豚
 4.オーナー
 5.ブーダリ
 6.痛い痛い
 7.果樹園
 8.メフィスト
 9.ベーコンがある
 10.幸福
 11.忘却のうた
 歌詞はフランス語、訳された日本語、曲調から、何が歌われているかは伝わってくる。
 それは、わたしたちが日歩暮らすなかで感じる喜びや哀しさ。
 「薔薇の木の下に兵士がひとり埋められている」
 「オレンジが血を流し、蛇がおぼれる」
 「落ちて忘れられたフルーツ」
 「鹿毛色の美しい獣」
 「支配するに邪魔な獣」
 これらは、詞の断片。
 人の世の現実にあふれる思いが、そこにある。