死すべきものよ

2010-12-31 | 【断想】ETC
 朝の薄青い空に、月と星を見る。
 今年は、今日でおしまい。
 この世から去った人たち。
 悠久の時の流れのなかで、われわれの交わりはひととき。
 奇跡のようなわれわれの出会い。
 そして今、俺は、こうして生きている。
 この俺も、やがて、この世からは消えていく。
 喜びや苦しみ、悲しみに、とやかく言いつつも。
 色恋や友情、権力や金、わずらわしさが懐かしくもある。
 朝の光が、雲を黄金色に染める。
 旅人よ、さようなら。

何ものでもない

2010-12-29 | 【断想】ETC
 今年は、人の死に接することが多かった。
 年々、死が身近になっていく。
 エピクロスの主要教説より。岩波文庫、出隆・岩崎允胤訳。
 《2 死はわれわれにとって何ものでもない。なぜなら、分解したものは感覚をもたない、しかるに、感覚をもたないものはわれわれにとって何ものでもないからである。》
 死ねば、われわれの神経系は機能しなくなり、感覚をなくす。と言うことは、苦痛もないということ。死そのものに、思い煩うことはないということ。
 沓掛良彦訳の「ピエリアの薔薇」より、パルラダースの「死の怖れ」。
 同じような考えをもとにした詩である。
 先日は、二行だけ書き写したが、今日は全部。
  死を待つ心こそが大いなる苦患
  死すべき身の人間は
  死によりてこの苦を遁る。
  されば生に訣れ告げたる人を
  悼んで泣くのはやめよ。
  死して後ははや
  何の苦しみもなきが故に。
 もうひとつ、エピクロスの断片より。
 《66 亡くなった友人にたいしては、悲嘆によってではなく、追想によって、共感を寄せようではないか。》

楽しい酒席

2010-12-25 | 民社
 和田一仁さんを機縁に集うようになった仲間。
 核である和田さんが、先般亡くなったが、いつものように集まった。
 いつまでも、われわれの絆を大切にしていきたい。
 きっと、和田さんも喜んでくれるだろう。
 和田さんが、政治の現場から身を引いてからも、かつてのスタッフを中心に年に二回、集まってきた。
 和田さんを囲んで、楽しい酒席をともにしてきた。
 なんだか誇らしいことでもあるのだ。

「死の怖れ」

2010-12-23 | 【断想】ETC
 葉を落とした欅の木のうえに、こうこうと、月が照っていた。
 「もう、死がこわくなくなった」と言った友人の一言が心にのこる。
 そして、彼の悲しみを思う。
 「ピエリアの薔薇」沓掛良彦訳より、パルラダースの「死の怖れ」から二行。
  死して後ははや
  何の苦しみもなきが故に。

夢よりゆめに

2010-12-23 | 【断想】ETC
 束の間の闇のうつつもまだしらず夢よりゆめにまよひぬる哉(式子内親王)
 多摩動物公園へ行く。
 お気に入りの場所へ。
 腰を下ろし、木々を眺めて、亡き人のことなど思う。
 束の間のうつつの大切なひととき。
 すべて、夢から夢へと彷徨うだけとも思えるが。

束の間のこと

2010-12-23 | 【断想】ETC
 酒席で、死を語り合う。
 思えば、そういうことが増えてきたか。
 死が身近に多くなってきたからか。
 プトレマイオスの星辰という詩の前半。
 「ピエリアの薔薇」沓掛良彦訳より。
  わたしは知る
  神ならぬわが身の
  世にあるは束の間のことなるを、
  人間なれば逃れ得ぬ死の定め負い
  はかなき存在なるを。
  ・・・・・・・

ふかき夜の夢

2010-12-20 | 【断想】ETC
 「もう、こわいものはないだろう。思い通りにやればいい」
 和田一仁さんに、そう言われたのは、去年だったろうか。
 俺にとっては、忘れられない言葉である。
 嬉しかった。
 それは、俺の弱点をも見たうえでの励ましだったのでないか。
 はかない人生。
 限られた生のなかで。
 無明の夢のなかで。
  静かなる暁ごとに見渡せばまだふかき夜の夢ぞかなしき(式子内親王)

寂寥の美か

2010-12-15 | 【断想】ETC
 見るに心の澄むものは・・・・・子産まぬ式部の老いの果て(梁塵秘抄)
 知と美にめぐまれ、華やかな日々を過ごした女官の老いの日のこと。
 侘びしさがひとしお。
 寂寥の美か。
 現代感覚では、「心の澄む」と言うのはしっくりこない。

和田一仁逝く

2010-12-10 | 民社
 何かの折、川奈ホテルで、ひと休みした。
 空と海を眺めた。
 一緒に、観閲式に行った。
 戦車が地響きをたてていた。
 ホテルオークラで、ブランデーグラスをかたむけた。
 よき男たちがいた。美女もいた。
 赤坂の石造りのカウンターバーで、ウィスキーを飲んだ。
 折々に、西尾末廣のことを聞いた。
 政治の使命について聞いた。
 元衆議院議員の和田一仁さんとのことである。
 その和田さんが、一昨日、亡くなった。86歳。
 昨夕に前夜式、今日昼に告別式があった。
 最後に触れた和田さんの額は冷たかった。
 俺が拾ったのは、どこの骨だったろうか。
 「和田さん、ありがとうございました」

やっぱり死刑だね

2010-12-07 | 読書
【本の紹介】
●死刑絶対肯定論/美達大和著/新潮新書/2010年7月20日発行/735円(税込み)
 殺人罪で服役中の無期懲役囚による著作。塀の外では、死刑廃止論などが人権派から声高に唱えられたりしている。こんな風潮に対し、著者は被害者の生命権、人権が余りに軽んじられていつのでないかと指摘する。また、犯罪者達は、己の罪をいかに反省しないものであるか、殺人犯たちの心性の実態を報告。更正の実をあげるための手だてについては具体的提案、終身刑の導入論は安逸への逃避との指摘も、さらに裁判員の心得にも言及。塀の内からの貴重な声が聞ける一書である。