山の女神に媚びたりし

2008-09-30 | 【断想】ETC
 吉野裕子の「山の神」(講談社学術文庫、1989年刊行本の文庫化)を読み始めた。副題に「易・五行と日本の原始蛇信仰」とある。われわれの文化の奥深いところのことで、面白そうである。
 山の神にちなみ、前登志夫の歌を一首。
 魔羅出して山の女神に媚びたりし翁の墓に花を捧げむ

うまそうな橡の実だが

2008-09-29 | 【樹木】ETC
 散歩していて、橡の実が落ちているのを見つけた。拾ってみた。橡の実は大きく丸くて、栗のようにツヤがあって、いかにもうまそうである。しかし、橡の木は、よく実をつけるようになるまでには年数もかかるし、その実を食べるには、かなり手間をかけて、アクを抜かなくてはならない。以前、その方法を本で読んだことがあるが、山の中で、隠遁生活でしていれば出来るかも知れないなというものだった。それで、橡餅を食べるときは、その労のことを思うようになった。

瓜の膚をした楓

2008-09-29 | 【樹木】楓
 ウリカエデ(瓜楓)、ウリハダカエデ(瓜膚楓)は、ともに山地で育つ。同じ山地育ちのミネカエデやコミネカエデに較べると低い山のようである。
 ウリカエデの裂片は3つ、ウリハダカエデの方は3~5片。両方とも、成木で、緑がかった樹皮に縦の縞が入り、瓜を思わせる。そのさまは、ウリハダカエデの方が鮮明であるようだ。
 参考まで、ウリハダカエデに似たカエデに、ホソカエデ(ホソエウリハダ)がある。
 カエデ属の樹木のことを種類別に書いてきたが、ここらで一区切りにしたいと思う。形や色のこと、文章で読んでもピンとこなかっただろう。自分が楓の種類を覚えるための勉強でしかなかった。

峰の楓

2008-09-29 | 【樹木】楓
 ミネカエデ(峰楓)、コミネカエデ(小峰楓)は、山地に生えるカエデだ。ミネカエデの方が、より標高のある深山、高山に生える。ということで、樹高は、ミネカエデが2~8メートル、コミネカエデが6~8メートルとなっている。

花の木

2008-09-28 | 【樹木】楓
 ハナノキ(花の木)というカエデがある。花というと桜を思い浮かべがちで、カエデにいたることはなさそうだが、その名はカエデにつけられている。別名、ハナカエデである。
 ソメイヨシノなどと同じく、葉がつきだす前に花が咲き、その花が真紅色で美しく密生するところから、そんな名をもらったという。
 大きく育つと25メートルくらいにもなると言う。葉は浅く3裂。
 辻井達一の「日本の樹木」(中公新書)には、ハナノキは、メグスリノキとも呼ばれると記されている。この表記が気になった。ハナノキとメグスリノキは、別の木である。葉の形も付き方も異なる。
 同じ辻井著に、「東北地方では一般にカエデの類をハナノキあるいはハナと呼んだという。そして単にハナと呼ぶ場合は、イタヤカエデを指す場合が多いのだそうだ」とある。そうだとすると、ハナノキをメグスリノキと呼ぶことがあるというより、逆にメグスリノキをハナノキと呼ぶことがあると言った方がいいように思う。
 一応、ハナノキとメグスリノキは別物であることを前提に、呼び方としていろいろあると覚えた方が頭が整理できるように思う。

日本のもみじ

2008-09-26 | 【樹木】楓
 日本のもみじと言えば、イロハモミジ(いろは紅葉)、オオモミジ(大紅葉)、ヤマモミジ(山紅葉)の3種が代表だ。これら以外のカエデ属は、モミジとは言わず、カエデと呼び分けたりする。
 この3種、葉の大きさからは、オオモミジ、ヤマモミジ、イロハモミジの順。
 今日の朝の風はあたたかい。南風だ。紅葉の季節はまだだ。 

大きなハート形の楓

2008-09-25 | 【樹木】楓
 切れ込みがなく、いわゆるもみじの葉の形をしていないカエデ属に、昨日ブログでとりあげたメグスリノキと同じく3つの小葉からなる複葉をしたミツデカエデがある。小葉が4~5枚になることもあるようである。
 また、ヒトツバカエデ(一葉楓)がある。名前が示すように対生で一枚の葉は、大きなハート形をしている。それで、マルバカエデ(丸葉楓)とも言われる。秋には、黄葉となる。
 ちょっとした見かけだけでは、分からぬこともある。

天狗の羽団扇

2008-09-25 | 【樹木】楓
 天狗の羽団扇と聞いて、その形状を思い浮かべることができますか。
 死んでしまった彼は少年の頃、鞍馬あたりの山で、天狗をすぐそこに感じながら、剣術の稽古にいそしんだ。素晴らしいことではないか。彼なら、きっとよく知っていただろう。
 カエデ科カエデ属のハウチワカエデ(羽団扇楓)は、その葉が、天狗の羽団扇の形に似ているから、そんな名前になった。9~11の裂片をもち、切れ込みは浅めで、全体に丸っこい感じがする。
 そんなことで、別名、メイゲツカエデ。英名でフルムーン・メイプル。
 ハウチワカエデに似ているが、小型なのがコハウチワカエデ。裂片は5~11。
 彼を見守った天狗さんは、時を経た今、どうしているだろうか。

目に鮮やかなメグスリノキ

2008-09-24 | 【樹木】楓
 メグスリノキは、目薬の木と書く。その樹皮を煎じた汁で目を洗うと眼病に効き、また、かつて服用もされたということである。
 別名、センリガンノキ(千里眼の木)、チョウジャノキ(長者の木)、ミツバハナ。
 先年、秩父に出かけた折、とあるお寺の売店で、メグスリノキのお茶というのを飲んだ記憶がある。ただ、自信がない。同行者に確認すると、あれはブルーベリーだったと思うとのことだった。単に、目に効くということだったか。いずれにしろ「メグスリノキ」という表示を見かけたことは確かである。
 このメグスリノキは、カエデ属である。カエデというと、その葉に切れ込みがあることをもって特徴との一般的認識があるが、メグスリノキの葉は、普通の木と同じく楕円形である。3枚の小葉からなる複葉をなしている。秋深まると、濃紅色に変じて、鮮やかである。
 眼病に効くだけではない。その美しさで目を愉しませてくれるのだ。

板屋根と猿の掌

2008-09-23 | 【樹木】楓
 昨日のブログで、エンコウカエデをイタヤカエデ系と書いて、そのような表現でよかったのだろうかと思って、図鑑を何冊か開いた。
 イタヤカエデの裂片は、5つから7つとあり、これはどの図鑑にも共通する。秋に黄葉となることも。
 イタヤカエデのことをエンコウカエデと呼ぶこともあるという表記があった。
 だとすると、葉の裂というか、切れ込みが深いイタヤカエデもあるということでいいのか。
 イタヤカエデの切れ込みについては、中くらいから浅い方であるとの解説が一般的のようでもあり、また、その深浅はまちまちであるとの説明もあった。それで、エンコウカエデは切れ込みの深いもののこととあった。
 イタヤ〔板屋根〕とエンコウ〔猿の掌〕では、あきらかに形状が異なる。異なるが、木の呼び名には、峻別されたものがないように思った。
 まあこのようなことなのだ。このように覚えておこう。

それだけの時

2008-09-23 | 【断想】ETC
 欅が朝の光を浴びている。
 気持ちのいい朝だ。
 ふと思う。
 信仰や愛、友情、それらは、人が抱く美しきもの。
 確かに、それらはまぎれもなくある。
 しかしながら、われわれは、社会をなして暮らしている。
 独りではない。
 それゆえの愛でもある。
 それで、実際は、憎しみ、嫌悪、怒り、傲り、愚かさ、自尊と自虐、優越感や劣等感などから切り放たれた信仰も愛もなかなか困難である。
 美しいものも、醜いものもごちゃ混ぜである。
 そういうことで、朝の光を浴びる木の葉を眺める、それだけの時のことをよしと思う。

雨の日は板屋楓のした

2008-09-22 | 【樹木】楓
 秋の葉の色づき、赤みは少なく黄色となるイタヤカエデ。漢字では、板屋楓と書く。名前の由来については、板谷という地名との関係も言われるようだが、定かではないということである。浅めの裂をもつ葉が繁った状態が、板屋根のようで、雨をしのげるというようなところからというのが通説だ。
 イタヤカエデは、カエデ属のなかでは、大木になる種で、大きくなれば、樹高20メートルくらい。樹液に甘みがあり、楓糖と言う。
 イタヤカエデ系にエンコウカエデ、ウラゲエンコウカエデがある。
 多摩動物公園の猛禽舎近くに、何本かエンコウカエデの木があり、カタカナ表示のプレートがついているのを見かけたとき、どういう意味なんだろうかと思った。「エンコウ」というと、援助交際としか思い浮かばぬ教養しか持ち合わせておらず、帰ってから図鑑で調べた。猿猴楓とあった。葉の裂が深いその形がテナガザルの掌のようだからとの説明であった。だけど、裂がそんなに深かっただろうかと思い返した。
 今度、現物をよく観察してみたいと思う。

紅葉の季節の前に

2008-09-22 | 【樹木】楓
 紅葉の季節をひかえ、その代表格の楓について、もっと知っておこうと思う。
 秋の葉の色づき、赤いもの黄色いもの、われわれの目を愉しませてくれる。
 カエデ科カエデ属には、約200種ある。
 主だったものを順次とりあげていきたい。