泥鰌の取り合い

2008-08-31 | 【断想】蛇
 ヒバカリがヒバカリを呑み込もうとしていた。
 ヒバカリ(日計、日量)は、わが国に棲息する体長40~60センチの蛇。頸部に淡黄の帯がある。咬まれると、命はその日ばかりということで、その名がついたが、実際は毒を持ってはいない。
さて、一匹の蛇の口に、もう一匹のヒバカリの頭が入っていた。一匹は、呑み込まれまいと、近くのものに躰をからませ、頭を引き抜こうとしているように見えた。じっと眺めていたが、なかなか事態に進展は生じない。
 と、なにかの拍子に二匹が離れた。あいつ、逃れることができたなと思ったら、そうはならなかった。二匹は激しく咬み合う動きをしめし、また、元のように躰を引き合うような状態となった。ただ、二匹が動いたとき、二匹以外の何かがチラッと見えたような気がした。
 それで、よく見た。一匹のヒバカリの口から、何かが出ており、もう一匹が、それに食らいついているのだった。その何かは、第三のヒバカリなどではなく、泥鰌の下半身のようであった。そうか、この二匹のヒバカリは、一匹の泥鰌をめぐって取り合いをしていたのかと合点した。
 穏和な性格と言われるヒバカリだが、こと食い物に関しては、譲り合いの精神などないのだな、そうだろうなと思った。
 以上、多摩動物公園でのこと。

今朝も雲は低い

2008-08-26 | 【樹木】ETC
 雨降りが続く。
 季節が移りゆく。
 秋の虫の声がするようになった。
 蝉の声が弱くなった。
 ベランダのドラセナ・コンシンネ。
 まだ暑い日にうんざりもしようが、
 いつまでそこに置いておけるだろうか。

子犬の尾で猫じゃらし

2008-08-25 | 【草花】ETC
 あなたが、イヌッコロのようだった頃、ネコジャラシで、猫をじゃらしましたか。
 そのどこにでもある雑草は、エノコログサ(狗尾草)という。
 その穂の形が、子犬(エノコ=犬のこ子:狗)の尾のようだということで名前がつけられている。
 その穂の色ガ、金色のものはキンエノコログサ、紫色のはムラサキエノコログサと言う。
 アキノエノコログサと言うのは、穂が少し湾曲しているそうだ。
 エノコログサと言うのは、これらの総称でもある。

死の終りに冥し

2008-08-25 | 【樹木】ETC
 ここ数年のあいだに、木々の名前は以前より知るようになった。
 昨夜からのザーザー降りで、木々も土もたっぷり濡れたことは分かる。
 齢も重ねた。だけど、まるで落ち着かぬものがある。
  生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
  死に死に死に死んで死の終りに冥し
 空海の秘蔵宝鑰の序詩の結びだ。
 大きな古木でも眺めれば、・・・・・・

雨に煙る稜線

2008-08-24 | 【樹木】ETC
 ここのところの朝、空が曇っていることが多い。
 今朝は、雨だ。
 向こうの丘の木々たちは、雨に煙っている。
 不鮮明なシルエット。
 さだかなぬのは、稜線だけではない。
 さだかになることはいつまでもあるまい。
 ただ、平静であらんことを。

近所の蛇たち

2008-08-23 | 【断想】蛇
 多摩動物公園のなかには、8種類の野生の蛇がいることが確認されているという。8種類というと、日本の本州に棲息するすべてということか。
 アオダイショウ(青大将)
 シマヘビ(縞蛇)
 ジムグリ(地潜)
 ヒバカリ(日計、日量)
 ヤマカガシ(山楝蛇)
 ニホンマムシ(日本蝮)
 シロマダラ(白斑)
 タカチホヘビ(高千穂蛇)
 このうち、上から4種が、水鳥のケージのところに展示されている。
 ここ数年の間に見た野生の蛇を思い出してみる。
 ・程久保川の石垣を這っていた。
 ・程久保川添いの草むらを這っていた。
 ・多摩動物公園の人気の少ない遊歩道にいた。
 ・多摩動物公園のシフゾウのあたりの路上にいた。
 ・駐車場入り口あたりで、猫が興味津々というようすで眺めていた。
 ・窓の外の栗の木にあった鳩の巣を襲って樹上にいた。
 いずれもアオダイショウ。
 蛇は嫌いだけど、蛇が棲息できる環境をまもらなくてはならないと思う。

森のこなたの河岸に

2008-08-22 | 【樹木】ETC
 謡曲「遊行柳」を読んだ。
 遊行上人は、白河の関をこえ、那須の野を行く。
 「心の奥を白河の、関路と聞けば秋風も、立つ夕霧の何くにか、今宵は宿を狩衣、日も夕暮れになりにけり」
 白髪の髪を乱した老人があらわれて言う。
 「昔の道を教へ申さんとて、はるばる是まで参りたり」
 その古道とは、「あれに見えたる一村の、森のこなたの河岸を、御通りありし街道なり。其上朽木の柳とて名木あり」と言うことである。
 「急がせ給へ旅人」
 その辺り、「蔭踏む道は末もなく、風のみ渡るけしきかな。風のみ渡るけしきか」と寂しい。
 そして、かつて西行が次の一首を詠んだと語る。
 「道のべに、清水ながるる柳蔭、しばしとてこそ立ちとまりつれ」
 上人の念仏に、老人は姿を消す。老人と見えたのは、柳の精であった。
 「朽木の柳の古塚に、寄るかと見えて失せにけり、寄るかと見えて失せにけり」
 夜になり、老人が再びあらわれて、報謝の舞を見せて、そして消えていく。
 「是は老いたる柳色の、狩衣も風折も、風に漂ふ足もとの、弱きもよしや老木の柳、気力無うして弱々と、立ち舞うも夢人を、現と見るぞはかなき」
 ※野村八良校訂・謡曲集上巻・有朋堂文庫より引用


いま栗の青い毬

2008-08-21 | 【樹木】ETC
 栗の青い毬、柿の青い実、橡の茶色の球殻、熊四手の果穂、木々たちは、秋の実りに向かって、それぞれの歩みのうちにある。そして、実りの季節のあとに、葉が枯れ落ちる。しかし、あたらしい春にはまた、あたらしい葉を出し生長する。いずれは、枯死の日がくるとしても。
 人は、一度衰えた容色が、次の年に、すっかり回復するというようなことはない。
 女性には、「恋せよ、乙女」という思いがわく。
 この命を、命ある日々がいつまでも続くものではないことを思いつつ今日をと。

姫女苑と春紫苑

2008-08-20 | 【草花】ETC
 ヒメジョオン(姫女苑)は、ヒメジオン(姫紫苑)ともいう。ハルジオン(春紫苑)とは、見かけは似ているが異なる。見分けのポイントは、ハルジオンの方は、蕾がおじぎをすること、茎が中空で折れやすいこと、葉が茎を包み込むような形状をしているなどである。ヒメジョオンの茎の中には白い髄がつまっていて、容易く折れることはない。
 それにしても、姫女苑、春紫苑、なんとも風情ある名前だ。その苑には、美女たちの色香がただよい、美酒があふれているようだ。

権萃の半月形袋果

2008-08-18 | 【樹木】ETC
 「ゴンズイ(ミツバウツギ科)」との木札をつけられた木が、赤い実をつけていた。以前からも、その木札は目にしていたが、とりたてて感興を呼ぶものがなかった。ただ、その赤い実が単なる球形でないことに気づいた。何と言えばいいのかなあと、図鑑を開くと半月形の袋果と説明があった。
 ミツバウツギは、三葉空木と、ゴンズイは権萃と書く。ウツギ(空木)というと、卯の花をつける木、ユキノシタ科ウツギ属で、別種である。
 まあ、あれこれ思って、木の名前を覚えようとしている次第だ。

うるわしの白百合

2008-08-17 | 【草花】ETC
 うるわしの白百合 ささやきぬ昔を、
 イエス君の墓より いでましし昔を、
 讃美歌496番。
 先日、檜原の都民の森へ行った。頂上付近のブナ林が美しいと言われる三頭山(みとうさん)である。しばらく歩いて、大滝を見たあたりで雷が鳴りだし、そそくさと戻った。正解だった。駐車場近くで、激しい雨となった。ブナ林は、次の機会とあきらめた。
 三頭山に、白い山百合(ヤマユリ)が咲いていた。
 野にある花、いろいろあるが、美しく見事な花だ。
 美しく見事な野の花だ。