ケニー・ドリュー・トリオの「IMPRESSIONS/パリ北駅着、印象」
〈アルファ・ジャズからのヨーロッパ3部作〉
「IMPRESSIONS/パリ北駅着、印象」(1988)
「RECOLLECTIONS/欧州紀行」
「EXPRESSIONS/旅の終りに 」(1990)
「パリ北駅着、印象」は、その第一作。
アルバムになんだか女心をくすぐるような日本語の洒落たタイトルが付けられているのは、このリリースに木全信(Makoto Kimata)と言う日本人プロデューサーがかかわっているからのようだ。
ジャケットも、その路線できれいなイラストが使われている。
曲は当然、その通りで、美しい。
〈収録曲〉
1. パリ北駅着、印象
2. イブニング・イン・ザ・パーク
3. カフェ・フローラ
4. 枯葉
5. ノー・グレーター・ラブ
6. マイ・シップ
7. ルージュ・ブルース
8. モーニング・ミスト
9. ラスト・タンゴ・イン・パリ
10. 追憶
フィル・ウッズというサキソフォーン奏者について、僕はほとんど知らない。
チャーリー・パーカー好きで、その流れをくむ白人プレイヤーだそうだ。
どういうわけか、私のこれまでのジャズへの関心のなかから抜け落ちている人なのだ。
開いたモダンジャズの名盤ガイド本に載っていたので聞いてみようかと思った。
フィル・ウッズの「ライブ・フロム・ザ・ショーボート」(1976 SONY)。
CD2枚組である。
一気に聞くには、いささか時間がかかる。
フィル・ウッズのサキソフォーン、音がよく出て、気分がいい。
肺活量の大きさを感じる。
それに、ノリノリになる。
このアルバムの録音は、1976年で、僕のCDコレクションでは、もっとも新しい部類。
チャールズ・ミンガスの「クンビア」等と同じだ。
フュージョンの傾向がはっきりでている。
フュージョンは、どうも好みにあわない。
とてもいい音楽になっていると思っても、僕の心に響いてくるものがないのだ。
このアルバムを演奏しているのは、6人。
フィル・ウッズ(as,ss)、マイク・メリロ(p)、ハリー・リーヘイ(g)、スティーヴ・ギルモア(b)、ビル・グッドウィン(ds)、アリリオ・リマ(perc)。
ディスク1に7曲、ディスク2に6曲、収録されている。
BARNEY WILEN with the MAL WALDRON TRIO Movie Themes from France
CD本体に、French Stories とプリントされている。
1990年にタイムレス・レコードからリリースされたものである。
このCDのなかみは、以下と同じ。
FRENCH STORY BARNEY WILEN with MAL WALDRON (1989 ALFA jazz)
日本語で「ふらんす物語」とされて、売られている。
このアルバムは、僕の気に入りの一枚だ。
もっともよく聞くのは、Quiet Temple 。
ケニュー・ドリュー(p)
ニールス・ペデルセン(b)
アルヴィン・クイーン(ds)
この3人の演奏で、「ネイチャー・ボーイ」を聞く。
ケニュー・ドリューの美しいピアノの調べ。
それに、ニールス・ペデルセンのベースがともなう。
まるで、ギターを聞いているような気分になる。
不思議な少年が登場する「ネイチャー・ボーイ」は、僕の好きな曲で、これまで、幾つかの演奏で聞いた。
ナット・キングコール、アニー・ロスのヴォーカルで、ジャッキー・マクリーンやバルネ・ウィランのサキソフォーンで。
どれも、気に入りである。
今回は、ピアノ・トリオである。
ピアノがメインで、どうだろうかを思ったが、凄くよかった。
アルファ・レコードからのアルバム「エバーグリーン」のトップに収録されている。
1991年、コペンハーゲンでのレコーディングである。
日本での発売元は、日本コロムビアで、オビに「エバーグリーン~今は夢」とある。
ともかく、心癒されるような、気分の波を静かにしてくれるような曲集となっている。
緑の庭を窓の外に眺めながら、紅茶を飲む午後という感じ。
そのことは、以下に記す曲名からも推察できるであろう。
〈収録曲〉
1.ネイチャー・ボーイ
2.エコ・トリップ
3.フラワーズ
4.スプリング・イズ・ヒア
5.エバーグリーン
6.グリーンスリーブス
7.ムーンライト・ソナタ
8.エンジェル・アイズ
9.ソング・オブ・ザ・バース
10.ブルース・イン・グリーン
11.サンセット
チャールズ・ミンガスのアルバム「MINGUS,MINGUS,MINGUS,MINGUS,MINGUS」。
このアルバムは、「ファイブ・ミンガス」と呼ばれる。
アトランティックを離れた頃のもので、インパルスから。
1963年1月と9月の録音である。
このアルバムに収録されている曲の名前と元の名前。
1.Ⅱ B.S=Haitian Fight Song:ハイチ人の戦闘の歌
2.Ⅸ ラブ=デュークス・チョイス
3.セリア
4.ムード・インディゴ
5.ベター・ゲット・ヒット・イン・ヨ・ソウル=Better Get It Your Soul
6.レスター・ヤングのテーマ=Goodbye Pork Pie Hat
7.オラ・デクビタス=EフラットとAHフラット
1,4,6,7と2,3,5とは、演奏の日時、メンバーが異なる。
エリック・ドルフィーやブッカー・アーヴィンが加わっているのは、1,4,6,7。
2,3,5には、チャーリー・マリアーノ他。
「Ⅱ B.S」をかける。
すぐさま、チャールズ・ミンガスの魅力があふれかえる。
その魅力とは何だろうか。
魂の躍動、うねりのようなもの、男っぽさ、喧嘩・・・・。
一直線、まっしぐら・・・・。
「オラ・デクビタス」のエリック・ドルフィー、いいな。
油井正一氏は、自著「ジャズ・レディス・ヴォーカル」(主婦の友社)で、カーメン・マクレエのことを「ライブ・ジャズの女王」とのタイトルの一文で紹介していた。
ステージ・シンガーとしてではなく、ジャズ・クラブなどで、お客を近くにして歌うのをメインとしたということなのだ。
ジャズ・シンガーとしてのひとつのスタイルが伺われる。
僕には、好ましく思われる。
また、彼女はピアノを弾き、弾き語りをしている。
代表的アルバムには、以下のようなものがある。
・アフター・グロウ
・ブック・オブ・バラード
・フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ
・グレイト・アメリカン・ソング・ブック
・ライブ・アット・ゲレイト・アメリカン・ミュージック・ホール
・カーメン・マクレイ&デイブ・ブルーベック/テイク・ファイブ
・ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド
・アズ・タイム・ゴーズ・バイ/カーメン・マクレエ・アローン
以上の中で、どんな紹介本にも載るのが「アフター・グロウ」(1957 DECCA)。
ゆっくり、落ち着いて、耳を傾けたくなる名盤である。
カーメン・マクレエは、このアルバムに収録された1,4,8,12曲目でピアノを弾いている。
他の演奏メンバーは、以下の3人。
レイ・ブライアント(p)
アイク・アイザックス(b)
スペックス・ライト(ds)
〈収録曲〉
1.アイ・キャント・エスケープ・フロム・ユー
2.ゲス・フー・アイ・ソー・トゥディ
3.マイ・ウァニー・ヴァレンタイン
4.ザ・リトル・シングス・ザット・ミーン・ソー・マッチ
5.アイム・スルー・ウィズ・ラヴ
6.うまくやれたら
7.イースト・オブ・サン
8.イグザクトリー・ライク・ユー
9.オール・マイ・ライフ
10.絶体絶命
11.ドリーム・オブ・ライフ
12.バーデッド
「マイ・ウァニー・ヴァレンタイン」、素晴らしい。
松任谷由実の「春よ、来い」。
・・・・
春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに
愛をくれし君の なつかしき声がする
・・・・
何て、胸に沁みるんだろう。
過ぎし春は遠く
二度とその日はかえらない
永遠の静寂が残る
ジョニー・グリフィン/ザ・リトル・ジャイアンツ/1959/リバーサイド
JONNY GRIFFIN / THE LITTLE GIANT / 1959 / RIVERSIDE
アルバム名「リトル・ジャイアンツ」は、ジョニー・グリフィンのあだ名。
“からだは小さいけど音はでかい”と言うこと。
ジョニー・グリフィンのリーダー盤「ザ・ケリー・ダンサーズ」を以前に聞いた。
そのジャケットは、よくおぼえている。
林の中にジョニー・グリフィン、写りがよくない。
あれは、どしろうとの写真だ。
ジョニー・グリフィンは、セロニアス・モンクやアート・ブレイキーのグループでプレイ。
〈パーソネル〉
ts,tp,tbの3管編成デアル。
ジョニー・グリフィン(ts)
ブルー・ミッチェル(tp)
ジュリアン・ブリースター(tb)
ウィントン・ケリー(p)
サム・ジョーンズ(b)
アルバート・ヒース(ds)
〈収録曲〉
1.オリーヴ・リフラクションズ
2.ザ・メッセージ
3.ロンリー・ワン
4.63丁目のテーマ: 63RD STREET THEME
5.プレイメイツ
6.ヴィーナス・アンド・ザ・ムーン
1956年6月、クリフォード・ブラウンは、交通事故で亡くなった。
フィラデルフィアからシカゴに向かうルート76でのことだった。
25歳だった。
ジャズ・プレイヤーとして活動したのは、1952年からの僅か4年間である。
そのトランペットは、ひろく人気がある。
ほれぼれするほど基本的に上手い、音はすなお、本道を行き、模範生的とも言える。
模範生が嫌いな私だが、そのよさをもっと感じたいと思って接している。
クリフォード・ブラウンのアルバム「ザ・ビギニング・アンド・エンド」(CBS)には、5曲が収録されている。
1.アイ・カム・フロム・ジャマイカ
2.アイダ・レッド
3.ウォーキン
4.チュニジアの夜
5.ドナ・リー
はじめの2曲が1952年の録音、残り3曲が1956年の録音である。
死の数時間前に行われたセッションの記録なのだ。
まさに、クリフォード・ブラウンの音楽活動の〈ビギニング・アンド・エンド〉。
申し分のない隅々までひっかかるところない名演である。
クリフォード・ブラウンの「ジャズ・イモータル・フューチャリング・ズート・シムス」
レーベルは、パシフィック・ジャズ、1954年に、ロサンジェルスで録音されている。
このことが、このアルバムの成り立ちを示している。
イースト・コーストのクリフォード・ブラウンが、ウエスト・コーストで、その地の面々と演っているのだ。
テナーがズート・シムス、ドラムがシェリー・マンという具合である。
とてもいきいきした演奏になっている。
東西合奏が、ノリノリで、トータル・パワーをアップさせている。
聞いて、気持ちのいいものとなっている。
収録曲は、以下の8曲。
1.ダーフード
2.ファインダーズ・キーパーズ
3.ジョイ・スプリング
4.ゴーン・ウィズ・ザ・ウインド:風と共に去りぬ
5.ボーンズ・フォー・ジョーンズ
6.ブルーベリー・ヒル
7.タニー・ケイバース
8.タニー・ケイバース(別テイク)
以上は、私の手元にあるCDの収録曲。
元のアルバムは、曲順が異なり、「タニー・ケイバース(別テイク)」がなく、その代わりに「ボーンズ・フォー・ズート」が入っているようだ。
ソフトでアクがない。
ちょっと味気ない、僕は、そう感じる。
偉大なるオスカー・ピーターソンのピアノ。
名盤と呼ばれる「ナイト・トレイン:NIGHT TRAIN」(1962 Verve)を聞く。
凄く立派である。
整っている。
安心して聞ける。
僕は、小さいときから、模範生が好きになれなかった。
それだけのこと。
わだかまりがない育ちのいい奴がうらやましいだけかも知れない。
「自由への賛歌」を聞くと、オスカー・ピーターソンの個性があってこそ、これが演れて、気持ちよく聞けるのだろうなと感じる。
ドロドロした情念からは、あのさわやかさは発しない。
〈このアルバムの演奏者〉
オスカー・ピーターソン(p)
レイ・ブラウン(b)
エド・シグペン(ds)
〈収録曲〉
1.C ジャム・ブルース
2.ナイト・トレイン
3.我が心のジョージア
4.バグズ・グルーヴ
5.モーテン・スウィング
6.イージー・ダズ・イット
7.ハニー・ドリッパー
8.昔はよかったね
9.アイ・ガット・イット・バッド・アンド・ザット・エイント・グッド
10.バンド・コール
11.自由への賛歌
エロール・ガーナーの「コンサート・バイ・ザ・シー」(1955 CBS)
カリフォルニア州カーメルでのライブ盤。
ジャケットは、海と岩、波しぶきの写真。
ちょっと独特、エロール・ガーナーのピアノも独特。
その奏法は、ビハインド・ザ・ビートと呼ばれるそうだ。
悪くはないし、魅力は感じる。
しかし、人が真似をしたくなるような類の魅力ではないように思う。
「エロールのテーマ」を聞くと、まさにハッピー・ピアニスト。
〈Personnel〉
Erroll Garner:エロール・ガーナー(p)
Eddie Calhoun:エディ・カルホーン(b)
Denzil Best:デンジル・ベスト(ds)
〈収録曲〉
1.4月の想い出
2.ティーチ・ミー・トゥナイト
3.マンボ・カーメル
4.枯葉
5.イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー
6.レッド・トップ
7.パリの4月
8.私からは奪えない
9.つれない仕打ち
10.いつか、どこかで
11.エロールのテーマ
デューク・エリントンの代表作のひとつ「C ジャム・ブルース:C JAM BURUES」。
僕の好きなジャズ・ナンバーのひとつだ。
いや、誰もが好きなジャズのスタンダード曲のひとつだ。
よく、演奏もされている。
ピアノ・トリオでの演奏が多いようだ。
これまでに聞いた演奏。
●レッド・ガーランド・トリオの「グルーヴィー」
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
アート・テイラー(ds)
●ホレス・パーランの「ムーヴィン・アンド・グルーヴィン」
ホレス・パーラン(p )
サム・ジョーンズ(b)
アル・ヘアウッド(ds)
●デューク・ジョーダン・トリオの「ブルー・デューク」
デューク・ジョーダン(p)
ハリー・エメリー(b)
ジェームス・マーティン(ds )
●ザ・オスカー・ピーターソン・トリオの「ナイト・トレイン」
オスカー・ピーターソン・トリオ(p)
レイ・ブラウン(b)
エド・シグペン(ds)
●そして、チャールズ・ミンガスによる大がかりなライブがある。
「ミンガス・アット・カーネギー・ホール」
チャールズ・ミンガス(b)
ジョージ・アダムス(ts)
ハミエット・ブルイエット(bs)
ジョン・ファディス(tp)
ジョン・ハンディ(as, ts)
ローランド・カーク(ts,stritch)
チャールス・マクファーソン(as)
ドン・ビューレン(p)
ダニー・リッチモンド(ds)
ピアノ・トリオでの4つの演奏を聞きくらべる。
今夜の気分で、好みの順位をつけてみよう。
オスカー・ピーターソンの4位は確定だけど、あとは何とも言えないのだが。
ただ、デューク・ジョーダンの跳ねる感じが、1位にした理由。
1. デューク・ジョーダン
2. ホレス・パーラン
3. レッド・ガーランド
4. オスカー・ピーターソン