「わたしを覗かないで」

2008-10-15 | 読書
 古事記、黄泉の国にくだった伊邪那岐命を伊邪那岐命が訪ねる段を読んだ。
 二神は再会を喜ぶわけだが、「わたしのことを覗いたりしないで」と身を隠した伊邪那美命を伊邪那岐命が見てしまって大騒動という話である。神話、昔話によくあるパターンである。
 タブーを破った伊邪那岐命は、「わたしに恥をかかせた」とばかりの伊邪那美命の逆鱗に触れ、やっとのことで、この世に逃げ帰るという次第である。追っ手である「よもつしこめ」には、蒲子(えびかづら)、笋(たかむなな)で、雷神には、桃で対応する。
 「よもつしこめ」とは、黄泉の国の醜女のことだが、いにしえの人は、どのようなイメージをもっていたのか。強欲にとらわれ、女の恥じらいをなくした見た目も醜い女というところか。
 さて、話に出てくる植物であるが、鬘を投げてできたのが蒲子で、山葡萄のことである。櫛の歯を投げると生えてきたのが笋、すなわち筍(タケノコ)。桃であるが、その桃は、果物として最も一般的な大きな桃ではなく、スモモとか、ヤマモモの類ではないかとの説を読んだことがある。正確な記憶ではない。確認すればいいのだが、また今度にする。
 この段、女たる伊邪那美命の気持ちと行動の変化というのが、興味深くもある。

木の神が生まれる

2008-10-15 | 読書
 古事記の伊邪那岐命、伊邪那美命の二神による「神生み」の話を読む。
 海、風、木、山、野の神などを次々と生み出していく。そうして、生まれた男神、女神がまた神を生む。神々の世界では、近親結婚は問題外である。
 伊邪那美命は、火の神を生んだとき、陰部を焼き(みほと炙かれて)、それがもとで死に、黄泉の国へ行くことになる。火の神を斬った剣がまた神を生む。
 神々のうち、木の神はククノチノカミと言う。久久能智神と書く。ククはクキで、茎の意で、チは霊的な力のあるようなものにつける語ということである。