【本の紹介】
●風談 漱石句抄/東出甫国著/毎日ワンズ/2010年3月19日発行/1470円(税込み)
夏目漱石は俳人でもあった。著者は、その折々の句を紹介する。それらは、漱石の生涯をたどるものであり、人との交わりの記念碑でもある。東京帝大同級の正岡子規をはじめ友人たちの死を悼み、亡き母を思い、忘れ得ぬ女性へのわだかまりとともに句がある。わたしはあなたの子なのだとの叫びであるかのような「梅の花不肖なれども梅の花」。漱石の心中深く潜むものが推察される。句は字数が限られているからこそ作者の本心が現れ出たりするとある。文豪・漱石を知る良書である。