佐々木高明著「照葉樹林文化とは何か」(中公新書)を読んだ。
その第三部は、「討論 照葉樹林文化と稲作文化をめって」となっている。討論への参加者は、佐々木高明、佐藤洋一郎、堀田満、安田喜憲の4名である。内容は表題の通りで、何をもって照葉樹林文化、稲作文化と言えるかということはあるが、その発生地域や時期などについて論議されている。
おもしろいのは、その論議のやりとりそのものである。学者の間でのお互いの評価や師弟関係がどうなっているかは知らないが、しゃべり言葉に歴然と上下関係のようなものが感じさせられ、各人の個性がはっきりと現れていることである。
同じような発言が繰り返されて、しつこい方だなとか、かなりこだわっているんだなとの印象を抱かせたりする部分もある。また「それでどうなの」と、相手を小馬鹿にしたような言い方、相手の論の盲点を突くところなどもあり、なんとも興味深いのである。
個々の言い回しは別として、あのような討論が行われるということは、とても良いことだなと感じさせる。一人で思いこんでいても、それが間違っているということもある。自由な論議で、じかに別な研究者から思いがけぬ指摘を受けるというのは、貴重なことだと思われるからである。
読み終えて、感心した次第である。