薄紫の釣鐘

2009-06-30 | 【草花】ETC
 先般、青梅の吹上しょうぶ公園を歩いた折、道脇に、蛍袋(ホタルブクロ)を見つけた。
 その花の形から、その名を覚えやすい。
 花には淡紅紫色と白色とがある。
 見かけたのは、薄紫と言ってよいか。
 その後、もう少し色の濃いのも見かけた。
 多摩動物公園でだったろうか。
 キキョウ科の多年草である。
 釣鐘状の花を下からのぞくと、花びらの開き方などに、なるほどキキョウ科だなと思わせるものがある。
 あの形で、上向きに咲いたら、中に雨がたまってしまう。そうなると、花粉が濡れて、花粉の役を果たさなくなる。
 同属に山蛍袋(ヤマホタルブクロ)がある。
 蛍を袋の中に入れたら火垂る(ほたる)。
 蛍が出てくる和歌を二首。
 ながむれば月はたえゆく庭の面にはつかにのこる螢ばかりぞ(式子内親王)
 蛍火は木の下草も暗からず五月の闇は名のみなりけり(和泉式部)

花序から花序へ

2009-06-29 | 【樹木】ETC
 住まいのベランダのすぐ近くに、トウネズミモチ(唐鼠黐)の木がある。
 六月下旬、白い花が咲き出している。
 花のさかりはこれからだが、もう辺りに臭いを放っている。
 いくらか、ムッとする感じである。
 その臭いにひかれたのか。
 スズメバチが花序から花序へ移動していた。

「馬の栗」

2009-06-28 | 【樹木】ETC
 6月の終わり。
 トチノキ(栃の木)の実ができていた。
 和英辞典で、トチと引くと、a Japanese horse chestnut とある。
 horseは、馬である。
 chestnutは、栗、栗の実。
 栃の実は、栗の実のようにつやつやしてうまそうである。
 だけど、そのままでは、食べられない。
 人間の舌には、渋すぎる。
 それで、「馬の栗」である。

初夏は春が終わって

2009-06-26 | 【断想】ETC
 あたらしい季節へのよろこびを感じさせられる一首だ。
 そこには、生き生きと脈打つものがある。
 和泉式部の歌はいつもいい。
 桜色に染めし衣をぬぎかへて山ほととぎすけふよりぞ待つ(和泉式部)
  初夏。
  春の終わり。
  俺の春はとおに終わった。
  ほととぎすの声を聞くこともない。
  そんな風に思うこともある。

雲居のよそに

2009-06-25 | 【断想】ETC
 曇り空の朝。
 ほととぎすの一声を聞く。
 風が少しだけ吹いている。
 通りの向こうの欅の枝が揺れた。
 新古今和歌集より一首。
 夜を重ね待ちかね山のほととぎす雲居のよそに一声ぞ聞く(周防内侍)

うすむらさきの夢

2009-06-24 | 【草花】ETC
 住まいの近くを流れる川岸に生えていた鰭薊(ヒレアザミ)の写真を撮ろうかと思ったら、周りの雑草とともに、きれいさっぱり刈られていた。その薊は、雑草といえ、丈も太さもなかなか堂々としたもので、いささかもったいないなと思った。紅紫の花もそれなりのサイズで、美しかった。
 鰭薊は、日本にはかなり古い時代に渡来したという。
 西脇順三郎の詩集「豊饒の女神」に、「あざみの衣」という詩がある。
 「あざみのうすむらさきの夢の
  ようなものが言葉につづられる」
 「夏はもどらない
  この貧者の食卓には」
 とある。こんな抜粋では、何のことかわからないだろう。だけど、全部を読んでも分かるとは限らない。
 「うすむらさきの夢」とは、どんな夢かと思ってみたり、「夏はもどらない」から、過ぎし夏の日のことを思い出してみるのもいいのでないか。

花びらしわくちゃ

2009-06-21 | 【草花】ETC
 青梅の吹上しょうぶ公園で、しわくちゃになった花菖蒲(ハナショウブ)の花びらを見て、蕪村の句を思い出した。
 座敷に脱ぎおかれたままの着物は、花菖蒲の花びらのような色をしていたろうか。
 にほひある衣も畳まず春の暮(蕪村)