二週間ばかり前に聞いたウェス・モンゴメリーの「ロード・ソング」がバロック調だったので、バロックの調べが聞きたくなった。
何にしようかと考えたあげく、テレマンの「水上の音楽/ハンブルクの潮の満ち干」にした。
ネヴィル・マリナー指揮、アカデミー室内管弦楽団(LONDON)で。
この曲が収録されているCDには、ピンクの付箋が付けてある。
わたしの気に入りのシルシである。
10の楽章になっていて、そろぞれに、「恋するネプトゥーヌス」とか「道化」、「嵐」とか名前が付けられていて、愉しく聞ける。
ジャッキー・マクリーンの「ジュイャッキーズ・パル」(1958 Prestige)
このアルバムの紹介に、「・・・マクリーンのハードバップの輝かしき記録(CDオビ)」とか「典型的なマイナー・ムードのテーマに始まるハードバップ」(後藤雅洋)とある。
要するに、ジャズの分類から言えば、ハードバップで、マクリーンらしさの出たものと言うことか。 ハイテンションとは異なる気分、憂愁ガ感じられると言うことか。
サキソフォーン、トランペットのフロントだけでなく、ピアノ、ベース、ドラムスのリズム・セクションもそれなりの存在感を示している。
そういう顔ぶれでの演奏なのだ。
〈パーソネル〉
ジャッキー・マクリーン(as)
ビル・ハートマン(tp)
マル・ウォルドロン(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジュー・ジョーンズ(ds)
〈曲目〉
1.スウィート・ドール
2.ジャスト・フォー・マーティ
3.ディーズ・ディレンマ
4.サブルース
5.スティープルチェイス
6.イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー
ケニー・ドーハムの代表作のひとつとされる「マタドール」(1963 United Artists)
〈パーソネル〉
ケニー・ドーハム(tp)
ジャッキー・マクリーン(as)
ボビー・ティモンズ(p)
テディ・スミス(b)
J.C.モービス(ds)
〈ソング・リスト〉
1.エル・マタドール
2.メラニー
3.スマイル
4.ビューティフル・ラヴ
5.ゼア・ゴーズ・マイ・ハート
6.プレリュード
7.ナ・マス
8.イット・クッド・ハップントゥ・ユー
9.レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス
10.ノー・トゥー・ピープル
11.ラヴァー・マン
12.サン・フランシスコ・ビート
もともとLP盤で出たときは、A面に、1と2の2曲、ただし「メラニー」は、パート1~3。B面に、3~6の4曲。
このCDの「メラニー」は、演奏時間が11分30秒。オリジナル盤でパート1~3とされたものが、特にそのように分けていないだけかも知れぬ。
もの悲しくて、いじましいようなトランペットの音。
さみしい波止場で、ひとり試し吹きしてるようなサキソフォーンの音。
「お化け屋敷」のような「メラニー」。
「ビューティフル・ラヴ」とは、どういうことなのだろうか。
分からない。
分からないことだらけだ。
「プレリュード」、俺の人生の「プレリュード」は、とっくに終わっている。
フィナーレが近いのだ。
「レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス」、ありきたりのフレーズが身にしみる。
この世には、そんなに変わったことはない。
そんな風に、聞こえる。
幼友達が亡くなったと言う彼、彼のために僕が何ができというのか。
多くの友が、死んでしまった。
いったいこの世の生とは、何なんだろう。
生きていてできることは何なんだろう。
◇
マタドールで思い出し、アンドレ・マッソンの「闘牛鑑」(須藤哲生訳・現代思潮社 1971)を開いてみた。
背に剣を突き刺された牛のイラストを見る。
「闘牛技」の出だしを読んでみる。
「さてそこで、マタドールは直立する、非の打ちようもなくぴたりと揃えた両足は・・・・・」
「友竹辰詩集」を開く。昭和48年、思潮社発行。
「・・・・・背ニ痛ミヲ覚エタ時 オレノ怒リハ角ニアツマリ・・・・馬ガ 飾リタテタ騎者ヲノセタママ オレノ頭ノ上ニ花簪ノヨウニ止マッタ。血ガシブキ・・・・」
イリアーヌ・イリアス:ELIANE ELIASの「夢そよぐ風:Dreamer」
2004年の録音で、BLUEBIRD=BMGから。
彼女は、1960年、ブラジル・サンパウロの生まれ。
ジャズ・ヴォーカリストでありピアニスト。
ジャケットに、彼女の美貌。
「スローなボッサの歌とリズム」とある。
〈ソング・リスト〉
1.コール・ミー
2.ビーズと腕輪
3.フォトグラフ
4.ムーヴィン・ミー・オン
5.ソー・ナイス
6.ザッツ・オール
7.タンジェリン
8.ドリーマー
9.タイム・アローン
10.ドラリシ
11.ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム
12.嘘をつかないで
美しいのは、彼女の貌だけではない。
とても素敵な歌声に、爽やかな風に吹かれているような気分になる。
素敵なボサノヴァを聞きながら、「シートン動物記」の「オオカミ王ロボ」を読んだ。
学研からのこども向け「世界名作シリーズ」のひとつだ。
編訳:千葉茂樹、絵:姫川明月である。
チャーリー・パーカー
チャーリー・パーカー・オン・サボイ(サボイ、キングレコード)
完全版ということで、CD3枚組。
録音は1945~48年。
曲順等、オリジナル盤からは、かなり整理されているとのこと。
曲は、「TINY GRIMES QUINTET」「CARRIE PARKER'S REBOPPERS」「CARRIE PARKER ALL-STARS」「MILES DAVIS ALL-STARS」と言うように演奏者・形態によってまとめられている。
演奏者には、チャーリー・パーカー、マイルス・ディビス、ディジー・ガレスピー、バド・パウエルらがいる。
どうしてか、チャーリー・パーカーには、特別の魅力を感じない。
「音楽」と「情感」、チャーリー・パーカーは、音楽派だと思う。
アルバム: ART BLAKEY Jazz Messengers(ア・ラ・モード:A La Mode)
レコーディング:1961年
レーベル:インパルス
メンバー:アート・ブレイキー(ds)
リー・モーガン(tp)
カーティス・フラー(tb)
ウェイン・ショーター(ts)
ボビー・ティモンズ(p)
ジミー・メリット(b)
ソング;1.ア・ラ・モード
2.インビテーション
3.サーカス
4.ユー・ドント・ノウ・ワット・ラヴ・イズ(君は恋の何かを知らない)
5.アイ・ヒア・ア・ラプソディー
6.GEE BABY, AIN'T I GOOD TO YOU
以上の情報があれば、どういう傾向のジャズで、どういうレベルのアルバムかが分かるだろう。
「君は恋の何かを知らない」は、聞いているとしんみり。
でも、暗くはならない。溌剌と若々しい音もする。
3つのホーン、それぞれに個性があって、楽しめる。
それぞれに光るスターたちをまとめていくアート・ブレイキーは、ほんとうに素晴らしい。
日本でウィントン・ケリーの「枯葉」と言う名前で売られているアルバム、ジャケットを見ると「WYNTON KELLY!」(Vee Jay)とあるだけである。
1961年の7月20日、21日にレコーディングされたもので、確か完全盤ということで、2枚組みのものがある。
1枚のものでは、盤によって選曲が異なるようだ。
わたしが持っているCDでは、以下の曲が収録されている。
1.降っても晴れても
2.愛を仕掛けて
3.枯葉
4.飾りのついた四輪馬車
5.ジョーズ・アベニュー
6.サッシー
7.わたしの愛は
8、風と共に去りぬ
9、チャーズ・ブルース
古いガイド・ブックには、「W,K,ブルース」、「いつか王子様が」の曲名が見られる。
聞いて、ハイレベルなアルバムだなと感じる。
申し分がない。
幅広いジャズ・ファンの人気を得て当然だろうと思えるアルバムだ。
とても、聞きやすく、嫌味がない。スマートである。
わたしは、へそ曲がりなので、もっとクセがあってもいいんじゃないかと言いたくなる。
〈パーソネル〉
ウィントン・ケリー(p)
ポール・チェンバース(b)
サム・ジョーンズ(b)
ジミー・コブ(ds)
アート・テイラーのリーダー・アルバム「A.T.'s デライト」(1960 Blue Note)
〈delight;大喜び。大好きなこと。〉
演奏メンバーにスタンリー・タレンタイン(ts)がいる。
ピアノはウィントン・ケリー、ベースはポール・チェンバース。
気になるアルバムだ。
他に、ディヴ・バーンズ(tp)とパタート・ヴァルデス(conga)の二人。
演っているのは、次の6曲。
1.シーダス・ソング・フルート
2.エピストロフィー
3.ムーヴ
4.ハイ・シーズ
5.クークー&フンジ
6.ブルー・インタールード
「シーダス・ソング・フルート」、「エピストロフィー」あたりがいいな。
アート・テイラーのソロ・ドラミングが、あちこちで聞ける。
ジュッキー・マクリーンの「ブルースニク」(1961 Blue Note)
ジュッキー・マクリーンの魅力であるブルージーで奇妙な調べを愉しめるアルバムだ。
奇妙な調べと言ったが、それではなんだかわからない。
どのように表現したらいいものだろうか。
泣きべそ風、泣き虫のごっつい奴。
いずれにしろ、ジャズのかっこよさを感じさせる。聞いていると、自然にからだが動く。
マイナーであっても、落ち込まない。
どんなに深刻な事態でも、笑い声は聞こえるような。
そこがジャズのよさ。
〈パーソネル〉
フレディ・ハバート(tp)
ジュッキー・マクリーン(at)
ケニー・ドリュー(p)
タグ・ワトキンス(b)
ビート・ラ・ロカ(ds)
〈ソング・リスト〉
1.ブルースニク(ジュッキー・マクリーン)
2.ゴーイン・ウェイ・ブルース(ジュッキー・マクリーン)
3.ドリューズ・ブルース(ケニー・ドリュー)
4.クール・グリーン(ケニー・ドリュー)
5.ブルース・ファンクション(フレディ・ハバート)
6.トーチン(ケニー・ドリュー)
持っているCDでは、2と6に別テイクがあり、8トラック。
ここのところ、次々と気に入るアルバムに出会っている。
CDに付いているパンフに、NOW ON SALEとして一連のアルバムの宣伝が載っている。
IDA RECORDS/ALFA JAZZが売っているものである。
以下の5枚のアルバムのジャケット写真が載っているる。
1.ラ・ノート・ブルー(1986)
2.フレンチ・バラッズ(1987)
3.ワイルド・ドッグス・オブ・ザ・ルウェンゾリ(1988)
4.フレンチ・ストーリー(1989)
5.パリス・ムード(1990)
「ラ・ノート・ブルー」は、この一連のアルバムのトップをきったもの。
バルネ・ウィランのカムバック・アルバムと言われている。
CDは、16トラックで成っている。
全体にムード・ジャズ。妖しさをただよわせているのもある。
とりわけ、3つめの「ポーリーヌ」、これは果たしてジャズだろうか。
フルボディの赤ワインが飲みたくなるな。
気遣いなしの友だちと。
「ロード・ソング」(1968 CTI)
ウェス・モンゴメリーの最後のアルバムだ。
このレコーディングから、1ヶ月後、ウェス・モンゴメリーは、心臓麻痺で急逝。
43歳だった。
アルバムには、9曲収録されている。
うち、「ロード・ソング」と「セレーヌ」の2曲がオリジナル。
他は、耳になじみのヒット・ソング。
「グリーン・スリーブス」、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」、「スカボロー・フェア」、「アラモ」、「花はどこへ行った」、それにビートルズの「イエスタディ」と「アイル・ビー・バック」の2曲。
自然体で、美しいジャズを愉しめる一枚。
もうすぐ、本格的な紅葉・黄葉の季節となる。
それが過ぎれば、木の葉は小枝をはなれ、枯葉が舞う。
時の流れは速い。
●男の胸を焦がさせる
某日、国会の議員会館の廊下で、数十年間を秘書仲間としてともに過ごした美女と出会う。 かつて民社党に集った仲間のひとりだ。皆、仲が良かった。
彼女は、多くの男性諸氏の胸を焦がさせてきた美形の方。過去形で言うのは失礼か、今なお素敵な方だ。
立ち話で、「元気にしてますか」と聞くと、「立憲民主党でやってます」と言わずもがなの返答。
なんともつまらないやりとりをした。以前なら、アフロディテの愉しみを唆したり、それをにおわせたり、もっと互いの琴線を刺激するやりとりをしていたはずだ。
振り返れば、よく一緒に、秘書仲間のさまざまな集まりをセットしたりした。誕生日や結婚の祝う会、亡くなった友の偲ぶ会等々。集まれば、気心をゆるしあう楽しい時となった。
それらが、懐かしい過ぎし日のことになりつつある。
それに、政党の再編などで、立場が変わるなど、つきあいの間に夾雑物も多くなってしまった。いくらか距離ができたことで、それまで気づかなかった側面が気になるようにもなった。
齢も重ねてしょうがない面はあるが、“僕たちが楽しくやった時代は過ぎ去ったのか”とさみしく感じる。
●恋をしていた季節
さて、ジャズのスタンダード・ナンバーともなっている「オータム・リーブス」の美しい演奏でも聞いて、少しばかり冷えた心を慰めようか。
「オータム・リーブス」は、英語名あって、日本語では「枯葉」として親しまれている。
「枯葉」は、もともとはシャンソンの名曲。1945年にジョゼフ・コスマがバレエ音楽として作曲し、映画「夜の門」の中で、イブ・モンタンが歌って広く知られるようになった曲だ。
詞は、フランスの詩人ジャック・プレヴェールによるもので、「ああ思い出してくれないか ぼくらが恋していた幸福な時代を・・・」(小笠原豊樹訳)と、過ぎしよき日を回想する曲だ。
その後、1950年にジョニー・マーサーが英語の詞をつけた。そして、「オータム・リーブス」とのタイトルで、ナット・キング・コールが歌って、より広く知られるようになった。
ヴォーカルでは、何と言っても、ナット・キング・コールなんだろうが、娘のナタリー・コールのもしっとり歌い上げていて素晴らしい。
ジャズの女性ヴォーカリストで、人気・実力ナンバー・スリーにはいるサラ・ヴォーンには、「枯葉」なるアルバムもある。ここで歌われている「枯葉」は、ジャズ化はなはだしく、スキャット・オンリー、原曲のもつ哀愁に浸るにはふさわしくない。
ニューヨークのため息と言われ、ハスキー・ボイスで日本人好みのヘレン・メリルも英語で歌っている。
男性では、メル・トーメがフランス語でも歌っていて、これは情緒たっぷり。
インストゥルメンタルでもマイルス・ディビス、バルネ・ウィラン他に多くの名演がある。
秋の日、「オータム・リーブス」の聞きくらべをして愉しむのは如何ですか。
(月刊誌「改革者」2022年10月号)
マリーナ・ショウは、1942年の生まれだ。
ちょっと年上だ。
その歌は、メロウだと解説にあった。
「フー・イズ・ジス・ビッチ、エニウェイ?」(1974 Blie Note)
11曲収録されていて、その中の「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」が一般に人気があるらしい。
以前、油井正一著「ジャズ・レディース・ヴォーカル」(主婦の友社)に付いていたCDで、マリーナ・ショウを聞いたことはあったが、特に印象が残らなかった。
でも、改めて聞くと、わるくないなあと感じる。
デューク・ジョーダンの「フライト・トゥ・ジョーダン」から、「スターブライト」を聞く。
僕が、夜に聞くジャズの曲・演奏として選んだもののひとつだ。
ディジー・リースの伸びやかにしてしぶいトランペット、スタンリー・タレンタインのブルージーなテナー・サックスが、くつろぎ・癒やしを誘い、のびやかな気分にさせてくれる。
これから、ベッドへというときにいいのだ。