【悪口の効能】

【悪口の効能】

他人の悪口を言葉に出して言った人は、言ったこと自体を忘れてしまうらしい。とくに女性に多い気がする。
「あなた蔭であの人の悪口を言ってたよね。だったら付き合わなきゃいいのに」
と言うと、
「あら、わたしそんなこと言った覚えないわ」
などと言い、本音を隠したすまし顔で、悪口を言った相手と普通に付き合っている。第三者に悪口を漏らすことで向き合う相手との関係が破局に至らない。

なかなか面白い社会的スキルだと感心しながらも、悪口を聞かされたほうはいい面の皮で、もう聞いてやるもんか、聞かされても心配なんかしてやるもんかと思う。

他人の悪口を陰で言ってガス抜きする女の社交に対して、精神衛生上いけないのが他人の悪口を声に出さず陰に籠もって心の中でモゴモゴ考え続けるオスの社交である。爆発させないかわりに、いつまでも燻らせて執念深い。

そういう男にならないためには、悪口をことばにして心の中で音読してみるといい。実践してみるとオスなのに
「あら、わたしそんなこと言った覚えないわ」
と思えるようになるから不思議だ。

2009/12/03 高橋是清翁記念公演


NEW
20 音オルガニートで

20 音オルガニートで『ワシントン広場の夜は更けて Washington Square』

20 音オルガニートで『オーケイ!  OK !』

20 音オルガニートで『なんとなく なんとなく Nantonaku Nantonaku』

を公開。

***



2023年12月号(通巻14号)まで公開中

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

【太陽がいっぱい】

【太陽がいっぱい】

本格的な梅雨入りが近いそうで太陽の日差しも今週末以降しばらくは見納めかも知れないと気象予報士が言っていた。

東京都港区赤坂 7 丁目。
高橋是清翁記念公園内を歩いていたら足もとに見事な木漏れ日があった。
木漏れ日が丸い光の水玉模様を作るのは、葉っぱが重なり合ってできた小さな穴がピンホールカメラ(針穴写真機)の原理で大空の陽光を集めて地面に結像するからであり、木漏れ日のつくる水玉模様の一つひとつは木の葉の針穴写真機が投影した太陽そのものなのである。


太陽がいっぱい。
DATA:Canon PowerShot G7

岬の先端に立って海原を眺めるとき水平線が円弧状に見えるのは地球が丸いからである、という説明が幼い頃からピンと来ない。水平線が丸く見えるのはもっと別の理由であって、仮に海が太古の人が考えていたように無限に続く真っ平らな平面だったとしても、岬に立って眺めたらやはり水平線は円弧状に見えるのではないか、それは自分の目で見える限界が自分を中心に円形に広がっているだけではないか、と自分には思えるのだけれど無限に続く平面を実際に試すことはできない。

木の葉の針穴写真機が投影する大空の陽光、その光源である太陽が丸くなくて四角や三角や五芒星のような形をしていてもも、実は木漏れ日は丸い水玉模様を作るのではないか、地面の丸い光点は太陽の投影像ではないのではないかという気がしないでもない。


足もとに太陽がいっぱい。
DATA:Canon PowerShot G7

それもまた試すのは難しいなぁと思い、ふとデザインを担当している理科の雑誌でそういう記事を読んだ記憶があるので調べてみたら、筆者である中学校の先生が公開されているサイトを見てびっくりした。
「普段何も気にしていませんが、木漏れ日はピンホール効果で太陽の像が写っています。ですから、部分日食の時の木漏れ日は、かけた太陽を写しだしているのです。」
と書き添えられて部分日食時の木漏れ日の写真があった。

やはり木漏れ日の水玉は太陽がいっぱいなのだ。

( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2007 年 6 月 12 日、15 年前の日記に加筆のうえ再掲載。)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

【赤坂環境総合測定局測定装置】

【赤坂環境総合測定局測定装置】

港区赤坂 7 丁目。青山通り沿いに草月会館とカナダ大使館に挟まれて小さな公園があり、ここにかつて 1936(昭和 11 )年 2 月 26 日の二二六事件で青年将校に暗殺された高橋是清の住まいがあった。

公園前に大きな時計があり、仕事で時間を気にしながら通る道であるせいかとても便利だ。公衆の大型時計は街灯と同じく公共物としてありがたみを実感するもののひとつである。

東京都港区赤坂7丁目。急いでいるときは時計しか目に入らなかったけれど、その後ろに観測装置をつけた柱がある。


DATA:RICOH Caplio R3 


DATA:RICOH Caplio R3 

年度末仕事の大騒ぎが終わりに近づき、時間に追われるように早足で歩かなくてよくなったせいか、今まで気づかなかったものに気づけるようになっていた。
大時計の後ろにあるコンクリートの柱に風車型風向風速計が取り付けられていてくるくる 4 枚羽根のプロペラを回して風上の方角を探っている。「(ああ、いいなぁ)」と思う。


用途不明の計測器。
DATA:RICOH Caplio R3

静岡県清水で過ごした中学生時代、NHKラジオの気象通報を聞かされ
「……御前崎では、南南西の風、風力2、霧、990ミリバール、24度……」
などというアナウンサーの声を聞き取っては紙に書き入れて地上天気図を作成する授業があった。ヘクトパスカルになる前の時代だ。

よく見ると風車型風向風速計の下にステンレス製の筒があり、雨量計ではないし、気温を測るための通風筒かとも思ったけれどそれにしては位置が高すぎる。そのほかにも奇妙な装置がつけられていてわくわくする。

どうも天気予報のための気象観測用設備ではなさそうだし、そうだここで集めたデータを集計してどこかへ送るための設備があるはずだ、と園内を見回したら緑色の鉄製の人が入れる大きな箱があり「赤坂環境総合測定局 港区環境保全部」と書かれていた。

ただそれだけのことなのだけれど、こういう観測機器を見るとひどく興奮して嬉しくなり、嬉しい勢いで帰宅してから風向を表すための『16・36分割方位図』を作図してみた。
「……御前崎では、南南西の風、風力2、霧、990ミリバール、24度……」
……懐かしいなぁ。

( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2006 年 3 月 28 日、16 年前の今日の日記に加筆のうえ再掲載。)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

【紅一点】

【紅一点】

こう‐いってん【紅一点】
[王安石、詠石榴詩「万緑叢中紅一点」](青葉の中に一輪の赤い花が咲いている意) 唯一つ異彩を放つもの。(広辞苑第四版より)

東京都港区赤坂。カナダ大使館と草月会館の間に旧高橋是清邸跡を開放した小さな公園がある。

青山通りから右折してドイツ文化会館方向へ向かう際、この公園の角を折れるのだけれど、舗装道を通らずついつい公園内を歩いてしまう。決して近道ではない回り道のように思うけれど、なぜか足が向いてしまうのが不思議である。

毎日赤坂で打ち合わせがあるわけではないけれど、年度末が近づいて立て続けに用事があり、通りかかるたびに公園内でフルートの練習をする女性を見た。

東京都港区赤坂7丁目、高橋是清翁記念公園内でフルートを吹く女性。カバードキイタイプのフルートらしく手に手袋をはめて演奏している。

翌日も高橋是清翁記念公園内でフルートを吹く女性。今日の手袋は赤。

公園内に入ったとたん笛の音が聞こえて誰かが練習していることがわかるので、フルートを吹く女性に突然遭遇してドキッとするわけではないけれど、木々が生い茂る薄暗い公園内で女性がひとり笛を吹いている風景には、広辞苑を引き写しつつ言葉にすれば、二つの相対立する感覚や感情などが空間的あるいは時間的に相接して現れる時、その差異が強調され、あるいは際立つ現象としての対比がある。

2 月 27 日は笛を吹く女性はおらず、このところ冷え込みがきついせいか公園内は人影もなく閑散としている。

敷石を踏んで曲がりくねった細道を歩き、是清翁の銅像がある築山脇を通り過ぎようとしたら、眼の片隅で見慣れた景色の中に異彩を放つものを見つけ、それは銅像前に置かれた花束だった。

東京都港区赤坂。高橋是清像前に置かれた紅一点。

ににろく‐じけん【二‐二六事件】
一九三六年二月二六日、陸軍の皇道派青年将校らが国家改造・統制派打倒を目指し、約千五百名の部隊を率いて首相官邸などを襲撃したクー‐デター事件。内大臣斎藤実・大蔵大臣高橋是清・教育総監渡辺錠太郎を殺害、東京麹町区永田町一帯を占拠。翌日戒厳令公布。二九日に無血で鎮定、事件後、粛軍の名のもとに軍部の政治支配力は著しく強化された。(広辞苑第四版より)

そうか、昨日2月26日は二・二六事件のあった日なのだったと気づき、最近の軍事と教育をめぐる社会風潮と二・二六事件の背景を思うと、是清翁前の花束は万緑叢中紅一点(ばんりょくそうちゅうこういってん)としてひときわ異彩を放ちつつ鋭い対比となっている。

( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2008 年 2 月 27 日、14 年前の今日の日記に加筆のうえ再掲載。)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

【植物との暮らし】

【植物との暮らし】

夥しいビル群を見て砂漠に例えられたりするけれど、東京は非常に緑の多い都市である。

街路や公園など、公共空間から産み出される落ち葉の量たるや相当なもので、仕事で出掛けた港区赤坂、高橋是清記念公園でも港区清掃事務所の職員が入って、冬に備えての枝打ちと、落ち葉の清掃をしていた。
 
小さな公園でも膨大な量の落ち葉がビニールゴミ袋に入れられて山積みされている。東京都内公共空間で収集される落ち葉の量というのは想像を絶するものがある。これらはみな焼却処分にされるのだろうか。


Data:CANON PowerShot A70

東京都府中市では、市民が市内の公園で収集した落ち葉を、タバコなどの夾雑物を取り除き、市が配布する収集袋( 70 リットル)に入れ、5 袋溜まった所で所定場所に置き、週 2 回の収集を受けると(これを預金と呼ぶ)、『落ち葉銀行』の通帳にスタンプが一つ貰え、五つ溜まると市の施設で落ち葉を熟成して作った 20kg の腐葉土、もしくは花の種子と交換してもらえるという。これを『府中市落ち葉の銀行』と呼ぶ。
 
植物にはエネルギーと不思議な能力があり、それを上手に活用する工夫は、聞いただけでも気持ちがよい。


Data:CANON PowerShot A70

高橋是清記念公園と草月会館に挟まれた路地を入り、ドイツ文化会館前を通って、仕事の得意先へと向かう。いよいよ今年も押し詰まり、年内に終えなければならない仕事の打ち合わせに行くのだ。

小さな打ち合わせテーブルには、いつも思わず笑顔になるようなものが置かれていて楽しみなのだけれど、このところ小さなガラス製の球形水槽が置かれているのが気になっている。

水を張り、イネ科の多年草である葦をひとつかみ入れ、ホテイアオイを浮かべ数匹のメダカを放ってあるのだ。ツーイツーイと動くメダカが可愛らしく、水田の畦に座り込んで飽きることなく生き物を眺めていた幼い頃を思い出して懐かしい。
 
デジカメで撮影しているとやって来た編集者共々笑顔になる。
「年末年始の餌やりは?」
「動きが鈍くなっていますからその頃には冬眠するかも」
メダカは稲の根や枯れたホテイアオイの陰でじっとして越冬するのである。
 
帰宅して調べてみると、それは最も簡便なメダカの飼育法であり、水生植物の水質浄化作用を利用するため、置き水を注ぎ足すだけで飼育でき、麩(ふ)などを餌として少量与えるだけでよい。カワニナやタツボなどを入れて藻の除去をさせると完璧かもしれない。
 
中学生時代、郷里清水の田んぼで捕って来たメダカを飼ったことがあるけれど、メダカは逞しく、容易に産卵させることができた。当時は何も知らなくて、共食いを見て興味が失せてしまったのだけれど、1 週間程度で孵化する卵はもちろんのこと、成魚と稚魚、発達の差がある幼魚同士も、いくつかの区画に分けてやらないと共食いしてしまうらしい。
 
生き物の厳しくも平和な共存を眺めているのは楽しく、いつか年をとって、外出の楽しみもなくなったら、室内でやってみたい遊びの一つである。

(閉鎖した電脳六義園通信所 2003 年 12 月 18 日、18 年前の今日の日記に加筆のうえ再掲載。)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

【暴風雨と雀】

【暴風雨と雀】

台風 7 号関東地方直撃。
 
朝一番に仕事場を出て打ち合わせで外回りをし、地下鉄青山一丁目駅から国道 246 線青山通り沿いの歩道に出たら正午少し前になっていた。

暴風雨の中、柄と骨と覆いが分離してしまったビニール傘をかぶって走るずぶ濡れの勤め人、などというニュースでよく見かける都市の台風風景がそこには有る。傘を壊さないように注意しながらカナダ大使館前を過ぎ、ふと思いついて水浸しの高橋是清記念公園に入ってみた。

1936 年 2 月 26 日、陸軍の皇道派青年将校らによるクーデター、二・二六事件で命を落とした大蔵大臣高橋是清邸が有った場所で、いまは高橋是清翁記念の小さな公園になっている。この公園内を歩いてドイツ文化会館側へ抜けるのが好きだ。

個人の邸宅跡というほんのわずかな樹木に覆われただけの場所なのに、そこは暴風雨などとは無縁の別世界のようだ。

かつて、農耕文化を獲得し平地に定住した「向日性」を持った民族がいた一方で、森で獣を追い木々の間で生活する「背日性」を持った民族が日本列島にはいたという。近世における開墾以前の、もっと古い由緒を持つ農村の屋敷林は、さながら森の中に複数の農家や共同の広場を内包したような構造になっているという。

「森からの自立は母の胎内からの自立過程に似て、意識、無意識のうちにさまざまな退行心理が発現する」(高取正男著作集 4 生活学のすすめ「住まいの原感覚」法蔵館)

森の構造は限りなく生き物に優しく、懐かしいものだったのだろう。

正午というのに夕暮れ時のように暗い園内を歩いて行くと、笹藪のあたりで生き物が動く気配がする。目を凝らすと、夥しい数の雀が地上に下り、一塊になって暴風雨が通りすぎるのを待っているのである。雀もまた森の優しさを忘れていないのだ。

(閉鎖した『電脳六義園通信所』2002年 7 月 16 日の日記に加筆掲載)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

◉意欲

2019年8月20日
◉意欲

 

 

色(しき)・声(しょう)・香(こう)・味(み)・触(そく)の五境に対して起こす欲望をそれぞれ、色欲(しきよく)、声欲(しょうよく)・香欲(こうよく)・触欲(そくよく)という。六境になると法(ほう)が加わり、六根の「法」は「意」なので欲は意欲(いよく)だろうか。それでいいのだ、…であるかどうかは知らない。

考えてみると意欲というのは不思議な欲だ。「どうしても意欲が湧かない」とか「その意欲だけは買おう」などという。 法欲というのはあるのだろうかと検索すると善法欲というのがあり、人には究極の善に対する希求がある、というのだとしたら麗しい気がするけれど残念ながら中国語のページなので何を言っているかわからない。

知求心(ちきゅうしん)平たく言えば知識欲だろうか。従うべき法を持ちたいという信仰への欲!。そう考えると意欲というのはたしかに信仰くさい気もする。よくわかりません。

よくわかりませんで思い出した。ソクラテスは自分が「知らないということを知っている」ことは大切でそれを「無知の知」であると言ったらしい。知らないことを知って、それを知ろうと努力することをフィロソフィアという。ソフィアは知ることでフィロは愛し求めること。そうか意欲はフィロソフィアなのかもしれない。1日ひとつ『知らない』を探してしつこく考えるルールづくり、それが意欲なのだ。そう思うことにした。ルールールルルー、夜明けの意欲、由紀さおり風。(3:44)

   ***

本駒込 2019

一日ひとつ名言を表示するアプリを入れている。

夜明けに立ち上げたらにやけたおっさんの写真があり、「何だまだ昨日とおんなじの画面のままだ」と思い、「このウォーレン・パフェットというおっさんは何者だろう」と検索したらアメリカ合衆国の投資家、経営者、資産家で大金持ちらしい。わが親たちと同世代で、そう思って読んだらある意味では面白い。

「あなたは株式市場というカジノでたくさんの愚かな人達を相手にしているようなものです。カジノにいる人達はみんな酔っ払っていますよね。でもその場の雰囲気に流されることなく、ペプシを飲むんですよ。そうすれば万事オーケーですよ。」ウォーレン・パフェット(4:43)

   ***

別の名言アプリより

“Hate the sin and love the sinner.”     Mahatma Gandhi

というガンジーの言葉を改ざんして

“Hate the politics and love the politician.”

後者が無理であることを先に考えると前者も実践が難しい。

   ***

 赤坂 2019

いつ雨が降り出しても良さそうな空模様なので、午前中早めに赤坂まで新刊本のプレゼンテーションに行ってきた。むんむんと熱気のこもった高橋是清翁記念公園で蝉が鳴いていた。是清像のある築山は樹木の根の張り方が荒々しい。

 

永田町 2019

結局雨に降られずに帰ってきた。

コメント ( 8 ) | Trackback ( )

◉何の音!

2019年8月5日
◉何の音!

 
 

ご近所さん飲み会中にスマートホンが異音を発して睨まれたら緊急地震速報だった。五人中四人がスマホ保有者で一人はアップルウォッチまでしていたけれど、緊急地震速報を受信したのは自分だけだった。「何の音!」と聞かれて「地震だ!」と言ったらゆさゆさと揺れが来た。面目躍如である、というか緊急地震速報の受信率の低さに驚いた。

震源が福島県沖で震度5弱だというので明日ミャンマーに帰国する友人がいわき市の実家に電話していた。東日本震災のときはどうだったのかと聞いたら、実家は津波で流されたけれど家族は避難できて無事だったという。緊急地震速報くらい受信できるようにしておけと言っておいた。聞けば彼女のご両親は自分と同年齢だった。

朝刊を読んでいたらタイでは昆虫食が広く行われているそうなので、ミャンマーではどうかと聞いたらやはりコオロギをよく食べるという。あなたは食べるのかと聞いたら、自分はダメだけれど四歳になる息子は平気で食べているという。ハチや川虫などの昆虫食をする信州出身の女性も、出されればコオロギくらい食べられるという。

飲み仲間の女性はベテランパーキンソン病者として名が売れていて取材申し込みが絶えない。パーキンソン病のリハビリに卓球が良いそうで、全国パーキンソン病友の会東京都支部が十条台の障害者総合スポーツセンターで卓球大会をやるという。パーキンソン病者でなくても参加可能だそうで参加申し込み用紙をもらってきた。(5:24)

   ***

メモ帳として持ち歩く Android ファブレット(5.5 インチ以上 7 インチ未満のスマートフォン)からメール送信することはあっても着信があるのは煩わしいので、なにか捨てメールアカウントを設定しておこうと思い、取得したまま使っていないものを探したら、xxxx@hotmail.co.jp があった。これはマイクロソフトのメールアドレスで最近は見かけない。調べたら「2004年11月19日から日本国内専用ドメイン『hotmail.co.jp』が提供を開始された」とあるので、実母の介護中に必要があって取得したらしい。というわけでマイクロソフトの Outlook をインストールして xxxx@hotmail.co.jp をアカウントに設定してやったらちゃんと生きていた。当然、着信ゼロなのですっきりしている。(11:26)

 
 

   ***

仕事で赤坂まで外出。竹内宏『昭和経済史』精読は昭和六年十二月十三日犬養内閣成立まできた。日本のケインズ、高橋是清財政が始まるところ。青山一丁目駅に向かう帰り道、高橋是清邸跡を抜けて帰ってきた。(16:18)

コメント ( 4 ) | Trackback ( )

◉正金銀行

2019年8月4日
◉正金銀行

 

『高橋是清・井上準之助 論争 昭和恐慌 金解禁・金輸出再禁止: 付・Q&A よくわかる金本位制 歴史に学ぶ金融と経済』は辞書引きしながら読むととてもいい。ようやく湾内にもやもやと立ち込めた霧のような疑問が晴れてきた。

正金銀行(しょうきんぎんこう)と為替手形の話を読んでいたら、そういえば清水にもかつて東京銀行があったことを思い出した。輸出入が行われる港町なので当然だろう。転校生同様にして郷里清水へ戻ったら、同様に同じ中学校へ入学してきた女子生徒がいて、父親が東京銀行の支店長として赴任してきたのだという。休み時間に裕福な家庭のクラスメイトに声掛けして「ホームパーティ」に誘っており、気取った嫌な女だなぁと思っていたけれど、単にお声がかからなかったことへの僻(ひが)みにすぎない。いまでは素直に懐かしい。長い髪と豊満な肢体の美人だった。田舎町に引っ越してきて自分が生まれついた生活の柄を忠実に演じていたのだろう。(5:41)

   ***

1994 Paris

昨夜、録画した NHK『ららら♪クラシック』を観ながら、渡米したドボルザークのホームシックで思い出し、妻にホームシックになった経験があるかと聞いたらほとんど記憶にないと言う。ホームシックは恵まれなさの原風景を郷愁の底(てい)に持つ者が抱く感情であり、もしドボルザークがアメリカ人としてチェコを訪れたならホームシックになどならなかっただろうと言ったら、またよくわからない話を始めたという顔をされた。暴論だろうか。かもしれない。僻み根性の話で昨夜のことを思い出した。(5:52)

   ***

今年も本郷通りに黄色いカンナが咲いている。「可憐ね」と言いながら「カンナは赤い方が好き」だと言う。なるほど。近所のローソンまで買い物に出たら、カトリック本郷教会裏手に、今年もまたオレンジで斑入りのカンナが咲いていた。オレンジといえば清水エスパルスが横浜 F・マリノスに完封勝ちしていた。プロ A 契約なった西澤と移籍初戦の吉本が輝いて良い流れになっている。(9:47)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

◉竹内宏の『昭和経済史』を読む

2019年8月3日
◉竹内宏の『昭和経済史』を読む

 
 

木曜日の夜はヴィヴァルディの『四季』の CD を 2 枚通して聴いた。演奏者それぞれの四季があった。その余韻が残っているうちにもう一枚クラシック全集に入っている盤があったので金曜日の昨夜はそれを聴いた。やはり、もう一つ別の四季があった。イ・ムジチ盤が聴いてみたくなった。文京区の図書館で探してみよう。

夜明けにドアチャイムがなるのでびっくりして飛び起きたら、新聞受けに差し込む際、朝刊の端がボタンに触れたらしい。「ああびっくりした!」と目を覚ました妻が「まだ頭の中でヴィヴァルディが鳴ってる」と言っていた。

竹内宏の『昭和経済史』を読んでいて朴烈(パク・ヨル)の大逆事件が出てきて気になっていたが、早朝ドアチャイムを鳴らして届いた朝日新聞折り込みの「be on Saturday」みちのものがたりに朴烈と金子文子の話が出ていてタイムリーだった。こちらも驚いた。(8:32)

   ***

 Akabane 2019

ミャンマー駐在生活から一時帰国している友人母子を誘って明日の夕方から納涼会をするので、赤羽の角上魚類まで買い物に出た。猛暑なので蒲原で買った麦わら帽子をかぶった。ネット上でまとめ買いをすると、ひとつ二百円もしない帽子らしいけれど妙に気に入っている。


 Akabane 2019 

数ヶ月ぶりに来たので街の様子もちょっとだけ違う。不思議なもので小学生時代六年間を東京城北地区で過ごしただけで、北区はわが故郷という感じで何を見ても懐かしい。(15:43)

   ***

引き続き竹内宏の『昭和経済史』を読んでいるけれど、興味を持って読み始めた金解禁と金本位制と昭和恐慌の部分が「わかりました」と言えるように理解できない、要するにわからない。検索したら『高橋是清・井上準之助 論争 昭和恐慌 金解禁・金輸出再禁止: 付・Q&A よくわかる金本位制 歴史に学ぶ金融と経済』という Kindle 版電子書籍を見つけたので買ってみた。350円。


 「金解禁と昭和恐慌がよくわからない」という高校生や受験生でも読め、国際金融と経済政策を学び、歴史の謎を解く知的エンターテインメントとしても楽しめる。(同書解説より)

これでもわからなかったら高校生や受験生以下ということになる。きびしいなあ。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

◉Lightning Keyboard

2019年7月29日
◉Lightning Keyboard

 

昨夜の NHK 大河ドラマ『いだてん』では塩見三省演じる犬養毅が出てきて(この役者どこかで見たなあと思ったら『あまちゃん』に出てきた「琥珀の勉さん」だった)時局は五・一五事件(昭和 7 年)へ。昨日の日記で蒲原の城山隧道(昭和 9 年竣工)と時局匡救事業(昭和 7 年〜 9 年)について書いたので、高橋是清大蔵大臣(昭和 6 年〜、昭和 9 年〜)による高橋財政と偶然にも同期していて妙な気分だった。満州事変が昭和 6 年、桐谷健太演ずる河野一郎は朝日新聞を辞して昭和 7 年衆議院初当選、のちに佐藤栄作と自民党総裁を争うわけだが、東京オリンピック翌年の 1965 年 7 月に亡くなっている。

   ***

夜中の空気は囁きを伝えるためにできている。草木も動物も人間も、囁くように物音を発して、それがよく闇を伝わっていく。未明に目が覚めてごそごそする音も眠い人には耳障りに違いないので、起き出して食堂のテーブルにタブレットを置き、キーボードをつないで調べ物と読書メモなどを書いている。キーボードをそっと叩いても微かな打鍵音がきこえるので、なるべく音の出ないものを選んでいる。iPad mini につなぐキーボードとしてすぐれているのは Logitec 社の Lightning Keyboard で、これは Bluetooth ではなく Lightning 端子につなぐので電池がいらない。キーボード自体もよくできている。それでも文字を一文字打つたびにかそけき音を囁く。(3:59)

   ***

言うまいと思えど今日の暑さかな。
口に出して言わずにいられる暑さは、たいした暑さではない。
「暑いですね」
と互いに言い合う暑さは、まあまあ暑い。
「暑いのはわかってるから、暑いって言うな!」
と叱られる暑さは、かなり暑い。子どもの頃、わが母が
「口もききたくないから話しかけるな!」
と怒鳴る夏の日があり、そう言う日はとてつもなく暑かった。

うるさいと怒鳴られるほどの暑さかな

(15:25)

コメント ( 4 ) | Trackback ( )

◉赤坂と桜

2019年4月10日(水)
◉赤坂と桜

赤坂といえば TBS、TBS というと近衛第三連隊と二・二六事件を思いだす。TBS がまだ古い建物だった頃、大学の先輩のつてで裏方仕事の現場を見学したことがあるが、近衛第三連隊跡と聞いていたこともあって、なんだか地下要塞の迷路を歩くように陰惨な気分がした記憶がある。

 OLYMPUS Zuiko 1:3.5 f=28 mm

1936(昭和11)年 2 月 26 日の雪の降る朝、この場所を出た兵士たちはコロムビア坂、薬研坂を経由して高橋是清邸を急襲した。すぐそこだ。そしてあの戦争まで突き進み、空襲で焼け野原となった近衛第三連隊跡は、昭和 27 年 TBS に払い下げられ昭和 30 年 4 月からテレビ放送を送信した。

OLYMPUS Zuiko 1:3.5 f=28 mm

華やかで清らかな思いのみならず、桜は陰惨な記憶とも親和性が高く、怪しげな感興を人の胸に呼び起こす。要注意な春の風物詩である。

(2019/04/10)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

◉鰭(ひれ)と網膜

2018年12月4日(火)
僕の寄り道――◉鰭(ひれ)と網膜

年末になると下関のふぐちりセットの貰い物があり、日本酒を飲まなくなったせいもあって、ひれ酒用のひれ一式だけが残る。日本酒を飲んでいた頃も、ふぐのひれ酒や、カニのこうら酒や、イカのとっくり酒のような類が好きではなかった。

結局しばらくとっておき、ミイラのように気味が悪くなって捨ててしまうのだけれど、もったいない気もするので
「これを炙って雑炊にしてみようか」
と言ったら、やはりひれ酒嫌いの妻が浮かない返事をしている。

最近はネット上で素人レシピが山ほど公開されているのでふぐひれ活用レシピを検索してみたら、ひれ酒の延長にある似たり寄ったりのアイデアばかりで発想のきらめきがない。

その中で、軽く炙って醤油をつけて食うとパリパリしてうまいと書いている人がいて「いいなあ」と思う。そういうのが好きだ。

「いいなあ」と思ったらちょっと愉快になったので未明に起きだし、コーヒーをいれて廣松渉の続きを紙の書籍で読む。未明の電子書籍寝たまま読書は妻から禁止されている。

直後の牛の網膜を取り出して一種の現像処理を施すと、直前に見ていた映像が写像として写っているという。そういう意味で眼球は凸レンズとフィルムを組み合わせた写真機的構造になっている。

電車の座席に腰掛けて本を読んだり考えごとをしたりに退屈すると眼球写真機遊びをするのが好きだ。

向かいの座席に座っている人々は車窓を背にしているので逆光になってコントラストの強い見え方をしている。そういう景色をちょっと見つめてから瞼(まぶた)を閉じて現像すると、明暗の残像となって直前見た光景が写っている。網膜に焼きついたのか視神経刺激の残存かはわからない。わからないけれど幼いころ遊んだ日光写真のようで懐かしい。

で、本の方はここから脳の中枢神経は外部の光景を直接見ているのか、それとも網膜に結像した映像を見ているのか、という、ややこしくてむずかしい話になるわけだ。

銅像が紅葉を見ているのではなく、われわれが銅像をとおして紅葉を見ている。写真は、その結果として紅葉狩りを楽しむ高橋是清(2018年12月3日)。

(2018/12/04)

コメント ( 0 ) | Trackback ( )

◉生誕100年違い

2018年9月3日
僕の寄り道――◉生誕100年違い

高橋是清は 1854 年 9 月生まれなので、1954 年 9 月生まれの自分より丸 100 歳年上ということになる。めでたい。

赤坂で新刊書の打ち合わせがあったので、東京メトロ南北線と銀座線を乗り継いで青山一丁目駅で下車し、高橋是清翁記念公園内を抜けて歩いてみた。

台 風 の 曲 が り 具 合 に 薬 研 坂

(2018/09/03)


コメント ( 0 ) | Trackback ( )

◉「ある」と「ない」

2018年6月21日
僕の寄り道――◉「ある」と「ない」

地下鉄溜池山王駅で南北線のホーム端から銀座線ホームに出たらホームドアが開きっぱなしになっており、「故障か」と思ったら、新たに設置される途中の運用開始前だった。「ああ、そうか…」と思う。戸袋はできたけれどまだ雨戸が引き出せずにいる状態である。

「故障か」のように瞬間こころが高まったことによる勘違いは用心しなくてはいけないと思う。「故障か」と思った途端「あった」を前提とした思い込みによる勘違いが発生するからだ。

銀座線に乗って青山一丁目駅で下車したら、こちらはすでにホームドアが稼働していた。地上に出て青山通りを歩き、高橋是清翁記念公園を抜けて赤坂に出ようとしたら足元に切り株があり「こんな場所に切り株があったかなぁ」と思う。

こんな場所に切り株はなかったということであれば、ここには最近まで大木が切られずにあったことになる。ちょっと後ずさりして視野を広げてみると、そんな大木を見た記憶がない。

まず最初に「あったかなぁ」という、見えるものの存在を否定したい思い込みがあって世界の認識がおかしくなっている。これも要注意。「こうであるにちがいない」「こうあってほしい」という先入観が、世界の見え方を狂わせている。(2018/06/21)


コメント ( 0 ) | Trackback ( )
« 前ページ