▼聖橋夜景

 

6月8日、東京ビッグサイトで始まった展示会見学のため、郷里静岡県清水で珈琲自家焙煎工房を営む友人夫婦が上京した。

総勢4名で一日かけて見学し、夕食は市ヶ谷のネパール料理店『バール=タラ』で済ませ、奥さんだけ日帰りで高速バスに乗るというので、東京駅までお送りした。



ライトアップされた聖橋。



信濃町から総武線に乗り、御茶ノ水駅で中央線に乗り換えて東京駅まで。
日が暮れたのちに御茶ノ水駅ホームに立つことなど滅多にないので、聖橋がライトアップされていることを初めて知った。さまざまな人生の場面ごとに、さまざまな事情や思いを抱いて渡った橋なので、眺めていると感慨深い。

 
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▼近江楽堂

 


6月9日は初台にある近江楽堂で行われたルストホッファースのコンサートに行ってきた。

リコーダー:本村睦幸、チェンバロ:上尾直毅、リュート:櫻田亨のルストホッファース三名にバロックチェロ奏者の山本徹さんが加わって初期バロックから後期バロックにかけてイタリアの作品が演奏された。山本徹さんのチェロが素晴らしくて感動した。今まで聴いたルストホッファースのコンサートでは一番よかった。



近江楽堂の球形天井。



D. カステッロ:ソナタ第2巻第6番
D. ガブリエリ:チェロソナタ ト長調
P. P. メリー:カプリッチョとコレンテ
F. バルサンティ:リコーダーソナタ第6番
F. ジェミニアーニ:チェロソナタ作品5の2
A. ヴィヴァルディ:トリオソナタ イ短調ほか



球形天井を4等分するスリット端の始末。



櫻田亨さんのリュートがいつもよりよく聴きとれるのが不思議だったが、近江楽堂は音響的に優れているらしい。円形ドーム型の構造を眺めていたらなかなか面白く、構造と機能がともに優れた建築であるのが好もしい。

 
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▼茂田井武「ton paris」

 


6月5日、大川美術館第84回企画展、茂田井武「ton paris」展を見に行った。



茂田井武「ton paris」。



1930年、シベリア鉄道で渡欧した茂田井が描いた無一文パリ暮らし絵日記の全ページを展示する企画。この日は次女の暦さんが亡き父の思い出を語り、幻灯絵『ドリトル先生アフリカへ行く』を上映しつつ朗読をする会が18時から催された。



茂田井武「ton paris」の展示。



その打ち合わせもあって誰もいなくなった会場で、絵を見たり本を読んだり写真を撮ったり居眠りをしたりしていたら、あまり用のない人間のようで何とも幸せな気分になった。



茂田井武「ton paris」の展示。



16:31 from Keitai Mail
茂田井武「ton paris」展会場で居眠りして目が覚めたら誰もいない。パリでひとりぼっちみたいで悪くない。
16:33 from Keitai Mail
茂田井武の次女暦さんに紹介された。少女時代の写真そのままだ。
16:54 from Keitai Mail
美術館内ひとりぼっちで退屈「パリーのごらく場にある手相はんだんのキカイです。二十五センいれてボタンの上に手をのせるとカードが出てきます」茂田井武の絵日記より。いかがわしいキカイが魅惑的。
17:00 from Keitai Mail
伊藤昭さん制作「ton paris」日本人クラブ周辺地図を暇つぶしに見る。伊藤さんはみのむしばあさんの介護絵本を描いた人で懐かしい。惜しくも亡くなられたらしい。
17:08 from Keitai Mail
桐生大川美術館で清水銀座の友だちからメール受信。駅前銀座喫茶『かっぱ』のあった場所が更地になったという。串揚げ『剣』のあった場所も、我が実家のあった場所も更地になったと世の無情を嘆いている。元気出そう、美術館に行こう。
17:20 from Keitai Mail
「もすくわニ着イタ。二等車の四人の日本人と、たきしいデ、さぼおいほてる二行ク。よおろつぱ風のほてるデ、高イテンジヨウニバカデカイしやんでりあガサガリ、ナカナカ立派デアル」茂田井武1930年の日記。味わい深し。
(当日のtwitterに投稿したつぶやきより)




茂田井武がこんな風に幻灯を見せてくれたのだと、父親の絵を見せながら説明する暦さん(右端)。



楽しい幻灯会が終わり、暦さんより図録をいただいて大川美術館のある水道山公園から山道を歩いてくだった。

幻灯のない夜は当時の子どもたちにとって、こんなにも暗かったのだろうなと茂田井武が生きた時代を思いつつ歩いた。




茂田井武「ton paris」展示会場にて。



(写真は大川美術館の許可を得て撮影しました)

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▼松本峻介記念室

 


群馬県桐生市小曾根町の大川美術館。20年近く前に訪問したので今回が二度目になる。



松本峻介記念室入口。



同市出身の実業家大川栄二氏のコレクションを展示した私立美術館だけれど、前回同様ここの収蔵品で一番好きなのは松本峻介だな、と収蔵作品を眺めて思う。



松本峻介が書いた絵入りのはがき。



館内に松本峻介の作品を集めた松本峻介記念室がある。『運河』や『ニコライ堂の横の道』などが描かれた時代にはまだ生まれていないけれど、それでもわが親たちの息づかいを通じてかすかに知り得た、共有できる時代の空気感が生々しく封じ込められているようで胸を打つものがある。



松本峻介『運河』(右から2枚目)と『ニコライ堂の横の道』(右端)がある展示室。



そういう極私的で些細で心許ない体験ができるだけでも、日本という国に生まれて消えていった画家たちの、作品をいつでも見られるのはありがたいと思う。

(写真は大川美術館の許可を得て撮影しました)

 
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▼鋸屋根の若宮

 

桐生には織物工場として使用されていた鋸状の屋根をした建物が数多く残されている。

それらのひとつを利用した京風ゆば懐石『若宮』に行って見ろとすすめてくれた人があり、ちょうど昼飯時に到着したので駅前からタクシーに乗って出掛けてみた。



6月5日、群馬県桐生市東、京風ゆば懐石『若宮』店内にて。



囲炉裏のある店内であぐらをかいて昼のおまかせランチを食べたが、水の美味しさも感じる豆腐料理づくしで感心した。料金も質と量を天秤に掛けたらとても安いと思う。



清流中学と『若宮』。



「ああ美味しかった、ごちそうさま」
と言って外に出たら、隣にある中学校は桐生市立清流中学だった。東中学校・菱中学校・北中学校の3校が統合されて、昨年この名前になったという。


 
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▼両毛線の車窓より

 


子どもの頃、列車の旅をして車窓から眺める風景で、広大な田園地帯や連なる山々の斜面に設置された、巨大広告看板を見るのが好きだった。

好きだといっても広告看板自体が好きだったのではなく、金を稼ぐためなら自然の景観の中に不細工な看板を設置してしまう人間の愚かさと、あんな場所にまで誰かが設置のため整備のために通っていることの信じられなさが、薄気味悪い見せ物小屋を覗くように感じて子ども心をときめかせたということだ。



田植えを終え雲を映す水田。両毛線富田駅あたり。



青空と雲が映える水田風景の美しさを眺めていたら進行方向から山塊が現れ、頂上付近に「大小」という文字が大書されていてびっくりした。
そういう場所に設置した布団綿などの看板は見たことがあるけれど、山の地肌に文字だけの看板は初めて見たのでびっくりした。



山腹の「大小」。両毛線富田駅あたり。



「大小」二文字が何を意味しているのかが不思議で、あれこれ考えてもわからないので帰京後調べたら、安蘇山塊に属する標高313.6mの大小山(だいしょうやま)であることを表したものだという。

 
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▼両毛線田園風景

 

6月5日、群馬県桐生市にある大川美術館へ企画展 茂田井武「ton paris」展を見に行った。
池袋から湘南新宿ライン宇都宮行きに乗り、大宮を通過しすると列車は東北本線快速宇都宮行きとなる。



刈り入れ時の麦畑。小山駅 から 富田駅の間あたり。



小山駅で両毛線に乗り換える。全国有数の麦生産量を誇る県だけに、車窓は秋と見まがうような黄金色の穂並みが揺れ、田園地帯はまさに麦秋を迎えている。



田植え時の水田。小山駅 から 富田駅の間あたり。



稲作用の区画では水田が水をたたえ、青空の雲を映して美しく、この地域は麦刈りと田植えの時期が重なるのでお百姓はたいへんだなと思う。とはいえ、こういうのが関東を代表する田園風景なのかもしれないなと思う。

 
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▼雲の見え方

 

このところ街を歩いていると、建物によって一部を切り取られた、雲の見え方がおもしろくて気になる。



2010年6月4日、中央区銀座一丁目にて。



眼やカメラのレンズがここから先は無限大と見限った先にビルも雲もあり、どちらも無限遠に属しながらも、じつは距離的にひどく隔たっていることを面白く感じる。



2010年6月4日、中央区銀座一丁目にて。



こんな見え方をしている雲もあれば、こんな見え方をしていた雲もあったと、撮った写真を並べて眺めているととても楽しい。



2010年6月4日、中央区銀座一丁目にて。
 
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▼赤い車とかえる食堂

 

池袋の編集事務所で打ち合わせがあったので、手みやげに缶ビールを買い、夏のような日射しが降り注ぐ表通りに出たら、向かいの路地から小さな赤い自動車が出てきた。



2010年6月2日、豊島区池袋にて。



小さな赤い自動車に引きつけられるようにその路地に入ったら小さなレストランがあり、名前をかえる食堂という。カウンター7席だけの小さな店だけれどカレーがなかなか美味しいという。



かえる食堂
東京都豊島区池袋3-6-1
TEL:03-5950-6077
営業時間:11:30~17:00
定休日:日曜・月曜・祝日
 
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▼現実の肉離れ

 


六義園染井門前脇にあるビルの向こうに、ポツンと浮かんだ白い雲が半分くらいのぞいており、安手の合成技法のように見えることで感覚が一瞬だけ現実離れする。



2010年6月1日、文京区本駒込にて。



不意に感じられる上位の現実としてのシュルレアリスム、その代表的な画家であるルネ・マグリットを思い出すような風景にときどき出会うことがあるけれど、絵画より写真の方が恣意的でないせいか、個人的な体験としてのシュルレエル(surréel)に近い気がする。

 
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▼絵画と空の下

 

画集の小さな図版で見ていた絵画、それらの実物を見て感動した1994年の冬、体調が優れないのでパリの真ん中にあった友人の部屋で横になって空を眺めていたら、たくさんの画家たちが暮らした街に自分がごろりと横になっていることを思ってもっと感動した。それは写真など撮るよりも、手元に画材があったら絵を描いてみたいと思う衝動に通じるものだった。



2010年6月2日、JR駒込駅にて。



JR駒込駅ホームに『オルセー美術館展2010』の大型ポスターが掲示されていた。
絵画は画集の小さな図版で見るよりは美術館で実物を見る方がよいけれど、原寸より拡大された図版を見ることにはまた別の感動がある。ゴッホもルソーもゴーギャンも、絵の具がカンバスと接した瞬間の緊張と均衡の細部が見え、いまそこに描き手の息づかいが封じ込められているように面白く、大枚はたいて本物を借り出さなくとも、巨大拡大図版を壁や天井いっぱいに掲示して、ごろりと横になって眺められる展覧会があってもいいのに、と思う。それはきっと、手元に画材があったら絵を描いてみたいという衝動を、子どもたちに喚起する体験になると思う。

 
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▼京急品川

 


大学時代の同級生に依頼した本の表紙に使う作品を受け取るため、待ち合わせ場所の品川駅前に出た。去年も一昨年も同じ時期に同じ場所で受け渡しをしており、
「一年経つのが早いね、お互いどんどん年をとるわけだ」
などと笑い会っている。



2010年6月1日、品川駅にて。



「お江戸日本橋 七つ立ち」で旅に出た江戸町人は、まず品川で初日の旅装を解く人が多かったと聞いたことがある。
海岸線が遠ざかり高層ビル群が建ち並ぶ品川だけれど、京急品川切符売り場前に立つと、海辺の町にやってきたなと言う旅愁があるのが不思議だ。



2010年6月1日、品川駅にて。



海辺の町で生まれたのだから海辺の町に住みたくないかと聞くので
「まあ…」
と答えたら
「だったら京急沿線に越してきなよ」
などと言う。

 
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▼こんな夢を見たよ

 


「こんな夢を見たよ」
と言葉にすると、夢に実体などないのにどんどん実体から遠ざかってしまい、そもそも嘘に等しいのに嘘をついているようで、なんとも虚しい気分になる。



夢に出てきた怪しい研究所。



「こんな夢を見たよ」
と絵に描くと、
「なんだかわかる気がする」
と自分自身に共鳴している自分がいる。いい加減な絵は、いい加減な言葉より、いい加減なものを表現するのに適しているのだろう。

 
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