【小文字の他者】

【小文字の他者】

欲しいと思い続けた「もの」をようやく手に入れた途端、その「もの」からなにかが抜け落ちて「もの」の輝きが失われてしまう。人はそういう体験を繰り返しながら新たに何かを欲望して生きていく。

それをフロイトは「失われた欲求の対象(一生探しても見つからないもの=満たされない漸近的な欲望)」と言った。抜け落ちたものとは「欲しいと思い続けた欲望」である。失われた途端「欲しいと思い続けた自分」はもう他者のように遠い。ラカンが「欲望は他者の欲望である」と言ったのはそういうことなのだと僕は思う。フロイトの「小文字の他者(「 a 」)」とは人生に足りない何かであり続ける、逃げ水のような欲望のことなのだろう。

小文字の他者「 a 」は、あらかじめ失われたものとして未来からやってくる。振り返ってみるのではなく、未来からやってくる逆向きの小文字の他者「 a 」を、ワープロではなくグラフィックソフトなら表示できるんだろうかとやってみたらラカンの鏡像段階論的に表示できた。ことばは未来に尾を引いて到来する。

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