オーソペディック


D850 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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なぜニューヨークにモディファイド・ラストのオールデンを扱うお店があるかわかった。
米国内でもニューヨークはさすが世界一の都市だけあり、相当の靴マニアがいるそうで、本来矯正靴用であるモディファイド・ラストの履き心地の良さを知る人が結構いるのだそうだ。
つまり健常者向けにもモディファイド・ラストの靴の需要があるわけだ。
そのお店もお客の半数は医師の診断書を持った足に疾患を持つ人たちだが、残りは靴が好きな愛好家たちだという。

以前も書いたが(2016年5月23日の日記)オールデンには一般向けのニューイングランド・ラインと足に疾患を持つ人向けのフットバランス・ラインの2系統の製品がある。
モディファイド・ラストは本来フットバランス系として開発されたラストである。
アーチ部分をぐっと持ち上げながら踵を確実にホールドし、指先は自由に解放する・・という独特の作りになっている。
その履き心地が素晴らしく、デザイン的にも優れていると気付いたバイヤーが、フランスや日本で一般向けの靴として展開してきたわけだが、本国にも少なからずファンがいるということだ。

しかしオーソペディック系の革靴という分野自体は、どんどん衰退しているのが実情だという。
オールデンでも、オーソペディックのラインは大幅に種類を減らしており、力を入れているとはとても言えないようだ。
矯正靴で検索してみるとわかるが、基本的にはスニーカーに準ずる作りのものが多い。
スニーカーという足への負担の少ない靴があるのに、無理に革靴で矯正靴を作る理由はないのだ。
人々の生活習慣が変わり、履く靴も変わったということだ。

全盛期の米国の靴メーカーは、オーソペディック・シューズの流れを汲むものが多い。
オールデンを始め、フットソーポート、E.T.ライトなど、博士が提唱する「脚にいい靴」の理論に基づいて設計されている。
ちょどその頃米国で健康ブームがあり、人々の関心が健康グッズに集まった中で、オーソペディック・シューズも発展したのだそうだ。
時代が変わり、靴の主流が革靴からスニーカーに移るとともに、革靴のオーソペディック・シューズの需要も減少していった。
しかしオールデンのモディファイド・ラストに関しては、その履き心地に惚れ込んだ靴好きたちに支えられて、例外的に生き残っているのである。
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