足元


D850 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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表参道の地下街で食事を取っていた。
軽食のお店が集合したスペースがあり、中央のホールにテーブルが並んでいる。
好きな食べ物を買って、その場で食べられるようになっている。

そこでベトナム料理を食べていた。
すると、食堂内を回っている給仕の男性が、何となく慌ただしく動くのが見えた。
小走りで奥の扉に駆け込み、ほうきとボックス式のちり取りを持って出てきた。
動きが普段と違うので、気になってそちらの方を見た。

僕から少し離れたテーブルの一群の辺りで、何かが起きているようだ。
数人のお客が椅子から立ち上がっている。
給仕が近付くと、ほうきを机の下に入れた。
もう一人の給仕が手伝い、ちり取りを持って横で構える。

最初は食品を床にこぼしたのかと思った。
皆の目が足元の床に注がれている。
しかし二人の給仕の動きから、何か動くものを追いかけていることがわかった。

見ると一匹のネズミが、彼らの足元を走り回っていた。
それほど大きくは無く、ピョンピョンとカンガルーのように跳んで走るネズミだ。
椅子に座るお客たちの足元を、右へ左へと逃げ回っている。

給仕たちは慣れているのか、上手い連係プレイで、案外簡単にネズミを捕らえた。
もっと手間取るかと思ったが、一発でちり取りに追い込んだ。
そして「失礼しました」と頭を下げ、ネズミの入ったちり取りを持って、さっと奥に引っ込んでしまった。
その辺もよく心得ている(笑)

その場にはお客だけが残った。
奥のテーブルの数人の女性たちは、ネズミの出現に驚いて立ち上がり、そのままの状態であった。
しかし騒ぐでもなく、苦笑いしながら顔を見合わせている。
手前に座っている男性は、まったく動じる様子は無く、平然と食事を続けている。
程なく奥の女性たちも、座って食事を再開した。

案外皆平気な顔をしている。
ネズミが足元を走り回っても、騒ぎ立てるものは誰もいなかった。
ディズニーの漫画などで、ネズミはかわいいものとでも思っているのか・・・

驚きはしたのだろうが、恐らくその場の雰囲気から、騒ぐべきではないと判断したのだろう。
人間というものは、驚いて声をあげるにしても、一瞬状況を考慮するものらしい。
数秒後には、いつもと同じ平穏なひと時に戻っていた。
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