酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

井筒高雄&レイチェル・クラーク~リアルと想像力の彼方に

2018-08-06 23:51:04 | 社会、政治
 6日は広島、9日は長崎と慰霊の日が続き、15日は敗戦の日と、日本人はこの時期、戦争と平和に思いを馳せる。広島平和記念式典で安倍首相は、ノーベル平和賞を受賞した核廃絶キャンペーン(ICAN)に言及しなかった。

 先日(2日)、「リアルな戦場~平和への道のり」(高円寺グレイン)に足を運んだ。井筒高雄氏(元陸上自衛隊レンジャー隊員)とレイチェル・クラークさん(通訳者)によるトークイベントで、サブタイトルは<想像力を磨け>だ。想像力の源になる詳細なデータがスライドで提示された。

 新潟出身で米国人と結婚したレイチェルさんは、元軍人が平和を目指して結成したベテランズ・フォー・ピース(VFP)の終身会員だ。オリバー・ストーンやオノ・ヨーコも会員である。井筒氏は日本支部(VFPJ)代表を務めている。

 3カ月前に開催された井筒氏の講演会は、<改憲と自衛隊>がテーマだった。イスラエルによるパレスチナ人虐殺を例に挙げ、自民党憲法案に記された<緊急事態条項>と<国民の義務>について、「日本においても(反体制派に向け)同様の事態が起き得る」と警鐘を鳴らしていたが、今回は歪な日米関係を軸に語っていた。

 両者はとにかく冗舌で、〝言葉の身体性〟に満ちた刺激的な内容だった。認識を共有する手練れのジャムセッション風にトークは進行する。内容は多岐にわたったが、印象的だった部分を紹介したい。

 イージス・アショアは2基で2500億円(当初の1・7倍)の購入額が話題になっているが、日本がアメリカから武器を購入する際、3倍に跳ね上がる〝3倍ルール〟が常識になっている。報じられていないのは、環境と健康に及ぼす影響だ。

 イージス・アショアは強力な電磁波を全方位に放射するため、ルーマニアでは<10㌔規制>が制定されている。日本で配備される陸自新屋演習場(秋田)と同むつみ演習場(山口)の周辺には、学校など公共施設も多く、住民たちに深甚な健康被害が及ぶ可能性は大きい。しかも、購入の前提になっている北朝鮮の脅威のリアリティーは薄れている。

 安倍首相は昨年9月、国連で「北朝鮮との対話は必要ではない」と演説した。メディア、沖縄自治体関係者、NGOなどに依頼され国連で活動しているレイチェルさんは、安倍首相の真実をキャッチしていた。演説を聞いていたのは、北朝鮮外交官、スマホを触っている女性を含め3人だけ。首相と対照的に、ICANとともに核廃絶を訴えている日系人女性が演壇に立つ時は、満員の会場に拍手が涌き起こるという。

 両者は戦争に繋がる経済構造を明らかにする。アメリカの国防予算は77兆円に達するが、年金その他を扱う財務省、退役軍人省を含めればさらに巨額になる。<政府-国防総省-軍需産業-シンクタンク>の共同体が形成され、金だけでなく人間も環流する仕組みだ。負担する国民には事実が知らされず、ロッキードやグラマンなどの株は上昇の一途を辿る。

 レイチェルさんは後半、核問題に比重を移した。<被曝≒被爆>、<原発≒原爆>と規定し、核実験で被曝したマーシャル諸島の人々を取り上げる。福島原発事故の際、県のアドバイザーを務めた山下俊一氏は、国内で「放射能は大丈夫」と不気味な笑みを浮かべて話しながら、福島で得たデータをアメリカに渡しているという。福島の被曝者をモルモットにした悪魔に3・11直後、がん大賞を授与したのが朝日新聞だ。

 井筒氏は日米安保と地位協定の問題点を力説した上で、原発についても言及する。<地震大国日本に戦争は不可能で、原発54基が攻撃対象になる。食糧自給率が低いから、輸出入なしに経済は成立しない>と戦争できない理由を力説する。リアルに分析し、想像力を働かせれば必然的に到達する結論だが、〝本籍アメリカ〟の安倍首相には気付かないふりをする。

 ちなみに、国内に蓄積されたプルトニウムは世界3位で、日本は実質的な核保有国だ。政府が原発稼働にこだわる意図を疑ってしまう。安倍政権打倒と拳を振り上げても、首相自体が操り人形だったとしたら……。熱いトークに心が躍りながら、聳え立つ巨大な敵の存在に、無力感を覚えてしまった。
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