弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

第三期知的財産戦略の基本方針(2)

2009-02-23 21:09:17 | 知的財産権
前回も紹介しましたが、官邸が主導している知的財産戦略本部の下にある知的財産による競争力強化専門調査会で、特許法の改正を含む方針が議論されています。
知的財産による競争力強化専門調査会(平成20年度第6回)[第11回]議事次第の資料には、(1)政策レビュー及び第3期知的財産戦略の基本方針の在り方について(案)と(2)別冊3第3期(平成21年度~25年度)に講ずべき主な施策(案)があります。そうのち、(2) の資料から興味のある所をピックアップしてみました。
「  」で囲んだ部分が資料の記載事項、その後の(コ)で始まる文章が私のコメントです。

1.知的財産の創造
2.知的財産の保護
(1)知的財産の適切な保護
③ 知的財産の安定性・予見性の向上
「○無効判断の要因分析
特許権侵害訴訟において特許が無効とされる事案を調査して、特許権が無効になる原因を分析し、その結果を踏まえ、必要な措置を講ずる。」

(コ)「侵害訴訟で無効とされる事案を調査する」とあります。どのような規模で、どのような人たちが調査を行うのでしょうか。興味のある所です。


「○特許の有効性判断に係る紛争処理スキームの見直し
特許の有効性が無効審判と特許侵害訴訟における無効抗弁の両方において争うことができるといういわゆる「ダブルトラック」の問題への対応策について検討を行い、結論を得る。
○特許権の安定性確保に向けた方策の検討
出願公開前に審査が行われ、第三者による情報提供の機会のないまま特許権が付与される案件が増加している現状を踏まえ、特許権の安定性を確保するため、異議申立制度の導入等による外部知見の活用も含めた方策について検討を行い、必要な措置を講ずる。」

(コ)侵害訴訟での無効抗弁と特許庁での無効審判でのダブルトラック」が議論されています。また、異議申立制度の導入が提議されています。これらの方向については、このブログの日経記事「特許の侵害訴訟の件数が減っている」 で話題になりましたが、やはり知的財産戦略本部の専門調査会で議論されていたのですね。

特許異議申立制度は、特許庁主導で廃止された制度ですが、今度は官邸主導で復活する動きが出始めたということになります。


「○特許審査基準の点検・見直しを通じた判断の調和
司法関係者、弁理士、法学者、産業界等から構成される「審査基準専門委員会」による定期的かつ透明性の高い審査基準の点検メカニズムを早期に定着させ、審査、審判、裁判における判断の調和に資するべく、このメカニズムを活用し、審査基準及び制度運用について不断に点検し、必要な見直しを行う。特に、産業から関心の高い進歩性の判断基準から、早期に点検を行う。」


3.知的財産の活用
(1)知的財産の戦略的活用
② 知財を活用した事業活動のための環境整備
「○共有特許制度の在り方の検討
オープン・イノベーションが進展し、従来想定していた共有者間で競争関係にある場合のみならず、共有者間で競争関係にない場合(例えば、産学連携による共同開発や素材メーカー・最終製品メーカーの共同開発等)が増加する中、特許法73条等の共有の規定が特許流通・技術移転の阻害要因となりうるかどうか等の現状について調査・分析を行い、73条のデフォルト・ルールを維持すべきかどうかの結論を得るとともに、大学・TLOや企業に対して、調査・分析結果の情報提供を行う。」

(コ)特許法73条(共有特許権の権利関係)が俎上に上がっています。どのような方向に改正されるのでしょうか。


「○実施許諾の意思の登録制度の導入の検討
特許権者が第三者へ当該発明の実施許諾の意思がある旨を特許原簿等に登録した場合に特許料を減免するライセンス・オブ・ライト(License of Right)制度の導入について検討を行い、必要な措置を講ずる。」

(コ)2月20日の日経夕刊に掲載された記事で、前回話題にした制度改正の方向です。


「○権利行使の在り方の検討
正当な知財権の権利行使を尊重することを前提としつつ、産業の活性化や公共の利益の観点も踏まえ、民法上の権利濫用に該当する権利行使の態様の明確化を図るとともに、差止請求の要件、損害賠償請求制度の在り方等を含め、権利行使の在り方について検討を行い、結論を得る。」

(コ)特許権の権利行使(差止請求、損害賠償請求)に何らかの制約を設けようという話でしょうか。この点は目が離せないですね。


これからも、知的財産による競争力強化専門調査会の動向についてはウォッチし続けることにしましょう。
コメント
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