<795> 大和寸景 「籾殻焼き」
籾殻を焼きゐる煙棚引いて明日香の里は秋深かみゆく
このブログ<55>で、「すくも」と題し明日香村の籾殻焼きを採りあげたが、今回も同じ場所での籾殻焼き(すくも焼き)であるが、今回は農家の人がいたので、話を聞くことが出来た。この間から雨が続き、籾殻が濡れて十分に焼けないため、籾殻を掻き混ぜているということだった。
私の郷里の岡山では籾殻のことを「すくも」と呼ぶことはブログ<55>で述べたが、飛鳥の里では籾殻を「すりぬか」(磨り糠)と言い、これは大阪でもこのように言うようで、焼いて炭化させたものを燻炭(くんたん)と呼ぶ。このように庶民の生活に密着していたものについては各地方によってそれぞれ呼び方がいろいろとある。植物などにも言えるが、これは身近に親しまれて来たことが大きく関わっている。言わば、方言と同じである。
山積みにされた籾殻の「すりぬか」は一週間ほどで焼き上がるという。これを種蒔きのときなどに用いるのはどこも同じようである。昔は割れものや傷みやすい果物などを箱詰めにして送るとき、この籾殻を用いた。今は発泡スチロールなどになっているが、籾殻が重宝された時代があった。
米の生産に与からない欧州では、このような場合、昔はクローバーを用いたようで、江戸時代、オランダから幕府に献上の品が送られて来たとき、中身が傷まないように、この草花が詰めてあった。このため、欧州原産のこの牧草は和名をシロツメクサ(白詰草)と言い、今もこの名で呼ばれている。赤い花の方は、アカツメクサ(ムラサキツメクサ)である。「所変われば品変わる」で、これはお国の違いである。 写真は晩秋の風物詩であるすりぬか焼きの籾殻焼き(明日香村飛鳥で)。