2012年04月20日 中国新聞「広場」掲載
誘ってくれた知人の車に同乗し、島根県吉賀町にある「カタクリの里」を初めて訪ねた。手入れされた山の斜面いっぱいに、背丈は低いが淡い赤紫色の愛らしい花が群生している。
「3月下旬から4月上旬に開花し、5月には地上から姿を消す」という案内があった。
春だけという短い生涯を精いっばい生き、咲いている。小さな花に潜む、そんな強い気構えに感動した。
カタクリは、近年の急速な自然破壊や盗掘で、めっきり減っているという。そうした中、吉賀町の大群生地は、西日本で貴重な存在になっている。
住民の手入れによって保たれていることを知り、頭の下がる思いだ。花がそれに応えているように思えた。
周辺の稲田では田植えの準備が始まり、そこの水面にこいのぼりも映っている。よい風景は、そこに住んでいる皆さんの地域ヘの思いやりから生まれる。撮った写真を整理しながらそんなことを思っている。