晩春から初夏へかけて味わえるタケノコ、その本格的な季節になった。食用になる竹は孟宗竹に淡竹などがこのあたりでは普通に見られる。雨後のタケノコという。物事が相継で出てくることのたとえだが、雨上がりの後は静かに土から顔を出す。
祖父から教わったタケノコの掘り方。のぞいた穂先をよく見ると少し傾いている。その傾いた側の土を掘り起こし、根の部分へ斜め下へ向けて鍬を打ちおろす。これで鍬傷つけることなく上手く掘れる。山が買収にあうまではこれで収穫をしていた。何年も実践から遠ざをかっているが、手ごたえだけは残っている。
タケノコは何度も盗られた。掘って路べりに置いていたのをそっくり持ち去られたこともある。声をかけてくれればいやな思いをしないで持ち帰れたのにと気の毒に思ったものだ。そんなタケノコ泥はいまもいる。竹藪の続く道沿いにその跡が幾つも残っていた。
タケノコを盗りました、と言わんばかりに穴をそのままにしている。山の持ち主なら、掘った跡の穴をきれいに埋めて来年へ備える。盗るという急ぎの仕業では穴をふさぐ余裕は無いのだろう。何としてもタケノコが欲しかった、でも盗ってはいけない。