話には聞いていたが目にしたのは初めてだった。観賞魚などの水槽でよく目にする布袋葵(ほていあおい)、我家も水質浄化作用の力があると信じ、メダカの鉢に浮かしている。この布袋葵が大量に枯れ死していた。
涼しい感じの花は、1日で開花し翌日には茎の基部から倒れ花は水中に没する。短い花の命と思っていたら、倒れて水没したのちに子孫を残す働きを続けていると知ったのは最近のことだった。
夏から秋までのあのみずみずしい植物は、冬が深まるにつれ枯れていく姿はメダカの鉢で見てきた。その時季には新しく求めて置き換えてきた。
布袋葵は池や川、田んぼなどでは株が1週間で倍に増えていくので「やっかいな害草」というそうだ。近くの町で川幅一杯のそれを見たときは緑の絨毯に似ていると思った。
その枯れ死した布袋葵が何メートルも浮いている。葉は黒っぽい茶色、白くなっているものも見受けられる。触れば姿を消しそうなほどふやけた葉も多い。どこから流れ漂って来たのだろう。
今は枯れ漂うその根本から、育ちつつある新しい命が春には芽吹き、やがて「布袋様」となって姿を見せてくれるだろう。近くの枯れた葦の中の小鳥の声が、枯れた布袋葵へエール送っているように聞こえる、と思いながら立ち去った。
(写真:枯れて漂う布袋葵)