日々のことを徒然に

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夏の花

2016年09月21日 | エッセイサロン
2016年09月21日 中国新聞セレクト「ひといき」掲載 

 「来年もこの朝顔を咲かせたい」 
 体調を崩した妻の夏の一日は、起きがけにカーテンを開け、朝顔に話し掛けて始まった。早朝のすがすがしい空気と一緒に花から元気をもらうようだった。
 花が終わると、種を取り春にまく。苗を育てプランターに移植する。ネットを張って咲くのを待つ。これを繰り返して10年近くになる。
 今年の夏は、これまでにない、いやに大きな一輪がついた。不思議に思い、咲き具合を観察した。なんと、円すいでラッパ状に咲くはずの花が、らせん状に咲いた。もしや途中でちぎれたかと調べるが、自然にらせん状になっていた。花の周りに特に変わった様子は見当たらなかった。
 思えば、この春、種をまきながら妻と話したことがある。
 「そろそろ新しい品種と入れ替えるか」
 その会話を聞いた1粒が、驚いて変異したのかもしれない。いじらしくて、今年も採種を約束した。
 朝顔は夏の風物として古くから栽培されている。つるは細くても暑さに負けず、懸命に伸び続ける。そんな姿に人を癒やす力が備わっているのだろう。
 花は夜明けに咲き、日差しには逆らえず、夕方には花の形を保てていない。花びらを巻き込むようにして短い半日の生涯を終える。
 それでも、代え難い和みをくれる朝顔だ。私がしてやれるのは、今年も朝夕の水やりしかなかった。
 夏を過ぎて夏を思う。
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