発掘調査中だった中津居館については、文化財保護巡回展の感想として2年ほど前に書いている。巡回展の目玉である「一括出土銭(いっかつしゅつどせん)」については貴重な史料であり、専門家による保存処理の上公開されることで楽しみにしていたが、徴古館で「中津居館跡 発掘調査報告展」で展示された。
一括出土銭は65㌢ほどの備前焼の甕(かめ)に、推定4~5万枚と見られる大量の銭が収められたもので、備蓄していたものが何らかの理由でそのまま埋まったとみられる。甕は還元焔焼成(かんげんえんしょうせい:酸素を遮断して焼成)という備前焼で、普段目にする赤茶色ではなく、青っぽい灰色をしている。その制作時期は13世紀末~14世紀初めと見られる。
甕の中の銭は、幾つかの塊にまとめられ、最上部に見える2つの塊は約1万枚の銭にわら紐を通してまとめた「十貫文緡(じゅっかんもんざし)という当時の流通形態のまま納まっている。さらに十貫文緡が2組、ほかに8千枚をまとめた8貫文などを足すと3万8千枚は確実で、見えない部分を合わせると初めに記した枚数になるという。高額な流通銭が一カ所で発見されるのは珍しい、とある。
甕から一部取り出し銭の種類を判読したところ、中国の元の時代の1310年から鋳造された「至大通宝」があり、甕が埋められた時期は14世紀中頃(1300年代中頃の南北朝時代)と見られるという。この居館は14世紀の前半、岩国を拠点にしていた大内氏家臣の弘中氏であることから、弘中氏一族とする見方が有力とされ、その大きさは大分の大友氏など守護大名クラスの居館に匹敵する大規模なもので、どのような経緯で築かれたか謎の部分もあり、新たな発見が楽しみだ。
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