知人からの情報で1枚の絵を観にいった。1枚といいながらもその絵は横560㌢、縦115㌢、A3用紙53枚に描かれたものをつなぎ合わせた鉛筆画、タイトルは「アリの戦争~アーリーをさがせ~」で未完。蜂やアブ、ダンゴ虫などの外敵と武器を持って戦いながら、巣での生活が描いてある。作者の架空の世界が緻密に描かれており驚いた。
描かれた蟻の姿は様々。外敵と戦う、その負傷蟻の救護、巣作りや破損個所の修理、食料調達を担うなど、それぞれの蟻たちが約5500匹描かれているとある。その中に特徴のある蟻「アーリー」をちりばめ、その蟻を探して遊ぶ工夫がされているというが、老いた目では発見できなかった。登場する蟻は写真右の様に役目ごとに設定されていて、表情は異なる。
作者は16才の高校1年で脳腫瘍となり19才で亡くなったD君。展示の作品は中学1年の頃から時間を見つけては鉛筆を走らせたという。製作ノートには物語の展開に合わせ必要となる登場蟻、生活用具から巣作り用の重機、外敵戦に必要な武器などが載っており、精密な作成計画に基づく作品であることに感心し驚いた。
両親の説明文には、発病後にも若干の蟻を描いたとある。庭で蟻の行列は見るが絵のような発想にはならない。蟻は働く生き物の代表のひとつであるが真似ようと思ったことはない。蟻に対してそんな見方しかしていなかったが、蟻にまつわる格言がいくつもある。その一例「蟻の穴から堤も崩れる。蟻の甘きにつくが如し」。今日は「蟻の思いも天に届く(力の弱い者も一心不乱に願えば望みを達せられる)」をいただいておく。冬の間穴にこもっていた蟻が、春に地上に出てくる、これを「蟻穴を出る」という。もうすぐその季節、待ち遠しい。
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