散歩で無作為にあちらこちらを歩く。途中でいろいろなことに出会う。先日は1㍍くらい嵩上げした宅地のコンクリート塀、遠くから見ると何かが描かれているように見えた。近寄ってみるとそれは塀一面に自然に生えた苔だった。高空から南米の森林を撮ったような見事な自然美術に見えた。これは庭園では見られない姿と思った。
苔、身近には幹や岩、水中の石などにはいつばって広がっていて緑系の色をした植物。日本庭園や寺院ではよく見かける目にも鮮やかなもので、植栽された樹木や石などを根元から引き立てている。近所の庭師から「夏だからと苔に水をやりすぎると蒸らして育ちを悪くする」と聞いたことがある。思いと違うことで驚いた。
ある状態が長く続くとことを苔むすという。その代表的なのは君が代の「苔のむすまで」で繁栄を願う表し方だろうと思う。日本の歴史や伝統を感じさせることを表している。転石苔むさず、これは腰を落ち着けて長く続けないと成果は出ない意味という。苔の姿、生きざまと同じだろう。
塀は屋敷の北面で苔の生える条件が備わっていたのだろう。住んでいる人は家の裏側なので、この芸術作品に気づかれていないかもしれない、勿体ない気がする。そんな苔の芸術面にミノムシがいる。小枝などで揺れるそれは見たことがあるが、くっついているのは初見、二つの珍しい出会をくれた裏通りに感謝しかない。
(今日の575) 塀面の苔のアートに虫引かれ